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悪虐王子と王命婚することになりまして〜“関わるな”と言われた翌日に溺愛が始まりました〜  作者: 星月りあ


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とある男の子との記憶

私、やっぱりイヴにお会いしたことがあるのかしら?


クライヴと過ごしていると、いつかの男の子をよく思い出しそうになるのだ。といっても思い出しそうになるだけで、それ以上は何も分からない。しかし、大切な友達だった。その気持ちだけが確かに心の中に残っていた。


確かめたいという気持ちが強くなったリリアーナはクライヴの元へと向かった。




クライヴは図書室で調べ物をしている最中だった。話しかけては悪いかと思い、じっと様子を見ながら待つことにした。


しばらくして、調べ物が終わったのか、本を閉じると、リリアーナの方に身体を向けた。


「リ、リリー!? いつからそこに!!」

クライヴはリリアーナの存在に気がつくと、ビクッと一瞬肩を震わせ、目を見開いた。


「声を掛けてくれて良かったんだが」

「お忙しそうでしたので」

「そんなこと気にしなくていい。これは、その……後でも大丈夫だから」

クライヴは言葉を迷うように視線を彷徨わせた。


「そうなのですか? あまりにも集中していらっしゃるご様子でしたので」

「そ、そうだ」

それは、いつになく強気な言葉だった。


「ふふっ、そうですか」

その態度が、嘘を隠そうとしているように思えて、思わず笑みが零れた。


「ああ。リリーは何か話しでもあったんじゃないのか?」

「あっ、はい。少しお聞きしたいことがありまして」

「なんだ?」

「私とイヴは以前お会いしたことがあるのでしょうか?」

「な、なぜ、そう思うんだ?」

クライヴの表情が強張ったように感じた。


「少し、昔のことを思い出したんです。イヴに似た方と子供の頃、お会いしたことがあるって」

その言葉に彼の瞳が揺れるのが分かった。


「イヴ?」

「あっ……い、いや、俺は会っていない」

クライヴは言葉を詰まらせ、ぎこちなく答えた。


「……そう、でしたか」

目を彷徨わせるクライヴを見て、リリアーナは内心嘘だと確信していた。


“会っていない”などと言われてはこれ以上確かめようもなかった。なぜ嘘をつかれたのか、その理由が分からず、彼女の中に疑問が残った。


「……変なことをお聞きしてしまって申し訳ありません」

「いや、気にしなくていい。俺は部屋に戻る」

「はい」

リリアーナは去って行くクライヴの背中をじっと見つめていた。




**********


『私と殿下は以前お会いしたことがあるのでしょうか?』


あの質問……まさか記憶が戻りかけているのか?


部屋に戻ったクライヴは先程の出来事を思い返していた。


つい会っていないと答えてしまった……。リリーには嘘だとバレていないよな? もしバレていたら、まるでリリーとの思い出を俺が忘れたいみたいじゃないかっ!! そう誤解されるのは絶対に嫌だ……がバレているのか、なんてとてもじゃないが聞けない。




考えても分からないことをひたすら考え続け、数時間が経過した。


だがなぜ今になって。俺と再会してしまったからか? だとしたらこれ以上会ったら確実に……。はぁ、何を考えているんだか。俺はリリーに忘れてほしいのか? そんなわけがない。あのとき、リリーと過ごした思い出はかけがえのないものなのに。リリーにも覚えていてほしい。思い出してほしい。




……俺が記憶を封じたのに。


「ははっ……最低だな、本当に」

クライヴは渇いた笑いを漏らした。

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