第6話
姿見を部屋にセットする。
暗いところで見ていた時は気付かなかったが、姿見の裏には『寄贈:○○○○』と書かれている。
誰が寄贈したのかまでは、かすれていて読めない。
つまり医者はこの姿見を誰かにもらったのだ。
医者にこの姿見をあげた人はこの姿見が異世界へつながっている事に気付いていたのだろうか?。
姿見は鏡としても利用可能だ。
ただその鏡面は中に入れて、異世界に繋がっている・・・というだけで。
今、そんな事を推測してもしょうがない。
これからどうすごそうか?。
日本での生活を一旦捨ててしまう・・・という選択肢もある。
医者はその道を選んだのだろう。
親には申し訳ないが、本気で異世界最強を目指すなら中途半端は良くない。
大学を休学して、異世界でレベルアップに勤しんでも良い。
日本で最強を目指すには年齢的に遅すぎる。
体作りは遅くても中学くらいから始めなくてはいけない。
確か、柔道の小川直也氏が大学に入ってから柔道を始めたらしい。
肉体的にも身体的にも素質があれば、俺の歳から格闘技を始めても大成するかも知れない。
確か、ボクシング世界チャンピオンになった輪島功一氏もスタートは遅かったらしい。
しかし自分にそんな素質がないのはわかっている。
半分諦めていた時に『異世界では筋トレはない。ひたすらレベルアップを目指す』と聞いた。
俺はふと思った。
ゲームなんかで年齢が結構行ってから転職する事がある。
結構な年齢にもかかわらず『レベル:1』になるのだ。
そこから敵の強いところに行って、鬼のレベルアップをする訳だが、年齢がいってから『レベル:1』になっても別にパラメーターは低くならない。
ここで一つ仮説が立つ。
『レベルアップに年齢は関係ない』
この仮説が正しければ、俺が今から最強を目指しても遅くはないはずだ。
俺は『その他大勢』の中の一人だ。
世界最強を目指すのは俺だけではないだろう。
異世界で世界最強になるのは難しいだろう。
しかし、異世界でレベルアップして日本で世界最強になれるのではないか?
俺に医者のような目的も大志もない。
だが、大志はなくとも最強を夢見ても問題はないはずだ。
大学一年生のうちは一般教養の授業が中心で、出なきゃいけない授業も少ない。
取り敢えず明日は土曜日だ。
火曜日まで大学の授業は受けなくても良い。
つまり明日の朝から火曜日の夜まで異世界で過ごしても問題はない。
その後の事は取り敢えず、いっぺん戻って来て考えれば良い。
そうと決まれば、異世界で何をしなくちゃいけないか考えよう。
そのためにも医者の書いた日記を読まなくては。
俺はPCを立ち上げ、スキャナーのスイッチを入れた。
日記を元の場所に戻すとしても、大事な部分はスキャンして残しておかなくては。