第5話
取り敢えず俺は姿見が置いてある小屋から出る。
日本は夜中だ。
当たり前だ、真っ昼間に肝試しをする訳がない。
日本と異世界であまり時差はないのだろうか?
いや、その決め付けは早計だ。
異世界が1日二十四時間ではないかも知れない。
今はたまたま夜中が重なっているが、だんだんズレてくるかも知れない。
小屋の外は真っ暗だ。
電灯はない。
そうか、電灯はまだない世界なのだ。
異世界にとって夜は闇の世界なのだ。
肝試しのために準備した携帯用の懐中電灯で暗闇を照らす。
とにかく、今の時間から行動を起こすのは愚策だろう。
ハッキリ言って不審者丸出しだと思う。
そんな不審者が暗闇を動き回っていたとしたら、警察組織・・・この異世界にはいないかも知れないが・・・につかまった時、言い訳出来ない。
俺は一旦、日本に戻る事にした。
俺は医者の書いていた日記を持ち、姿見の中に入った。
辿り着いた先は廃病院。
俺が突然姿を眩ましたのに、誰もそこで俺を探していない。
合コンの終わりに「肝試しをしよう」という話になった。
友達甲斐のない連中だ。
上手くいったヤツらは今頃、合コンした女子大の娘とホテルにしけこんでいるだろう。
上手くいかなかったヤツらは今頃、男だけで集まってやけ酒を煽っているのだろう。
誰一人として俺を探してはいない。
・・・というか、きっと俺は『アイツ、女にはあんまり興味ないような顔して今頃、ホテルに女の子を連れ込んでやがる』とか思われてるに違いない。
まあいいや。
男子大学生なんて、女の事考えてばっかりいるヤツなんて珍しくもない。
「帰るか」
俺の下宿先はこの廃病院から歩いて10分くらいだ。
歩ける距離で助かった。
姿見を持って公共交通機関を利用しなきゃいけなかったら最悪だった。
俺は埃をかぶったベッドシーツで姿見をくるんで小脇に抱えた。
ベッドシーツは廃病院のリネン室にあったものだ。
運良くお巡りさんに職務質問されずに姿見を抱えて、下宿先に帰ってくる事が出来た。




