第10話
「わかった。
じゃあ俺は『格闘家』になりたい」と俺。
イケメンの受付は少し意外だ、というような顔をした。
「じゃあ、この書類にサインしてもらわなくちゃならないけど、アンタ文字書けるかい?」とイケメン。
「全く文字『書けない、読めない』って訳じゃないが、遠くから来たからここで使われてる文字が書けないし読めない。
悪いが代筆してもらえるか?」と俺。
「わかった。
じゃあ、名前を教えてもらえるかい?」とイケメン。
考えてなかった。
よく「自分の誕生日を車のナンバープレートにしてる人は詐欺師のカモだ。
何せ個人情報を車の前に貼り付けて、そこらじゅうに行ってるんだから。
『自分はバカです』って言ってるみたいなモンだ。」とか言うけど、こういう場合、本名名乗って良いもんだろうか?。
ネットリテラシーみたいに個人情報は守るべきなんだろうか?。
「え~っと・・・俺の名前は『アムロ=レイ』」咄嗟に偽名を名乗ってしまった。
「『アムロ=レイ』?。
そこに住んでた医者と同じ名前?。」とイケメン。
おい、医者『アムロ』って名乗ってたのかよ。
「アムロは身内だ。
俺は『テム=レイ』という。」と俺。
「アンタ『自分はアムロだ』って言わなかったか?。」とイケメン。
「聞き間違いだろう。
俺はテム=レイだ。」俺はあくまでしらばっくれた。
しかし俺が『V作戦』の統括責任者の名前を名乗るとは。
「怪しさがないわけじゃないが、あの『アムロ』の身内だと言うのなら・・・。
アイツの医術で多くの人が助けられてるし、その助けられた人の中に俺の妹も含まれてる。
今回は『テム=レイ』で冒険者登録するよ。」良かった。
怪しまれはしたけど、取り敢えず冒険者登録は出来るみたいだ。
俺はイケメンが書いた書類の最後に血判を押した。
「これで格闘家に・・・冒険者になれたって訳だ!。
よろしくな!テム!」イケメンがフレンドリーに誰かに語りかけている。
この受付の前には俺と貴様しかいないだろうが!。
気でも狂ったのか!?。
あ、テムって俺か。
しかし酷いな、脇役丸出しの名前だ。
最初にちょっと出てくるけど、次に出てくる時は酸素不足で宇宙病になってて、アパート住まいで頭がちょっとおかしくなってるヤツって感じの名前だ。
「どうかしたのか?。」イケメンが言う。
別にどうもしねーよ。
テムって言うのが俺の偽名だって忘れてただけだ。
・・・なんて言える訳もなく「俺はお前を何て呼べば良いのか、少し考えてただけだ。」と咄嗟に嘘をついた。
「そうか、俺はギルバートと呼んでくれ」とイケメン。
「わかったよ、デリカット」と俺。
「ところでウィルソン。
冒険者になれた俺は、取り敢えず何をすれば良いんだ?。」と俺。
「取り敢えず俺の名前を正しく覚えろ。
話はそれからだ。」イケメンは苛立たしげに呟いた。




