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022 壱章 其の弐拾弐 ムサシの試合

 ムサシは新しい木刀を試し振りしながら大声で聞いた。


「この娘の名前は何と言いでござるか?」

「あぁっ?」


 ムサシの問いかけに三姉妹の1人が反応した瞬間、目の前にムサシが現れ一撃を喰らわされる。

 その一撃で木刀は粉々になり娘も気絶した。


「お、おぉ……」


 観客達は異次元のムサシの強さに若干引き気味だ。


「たよねー!だよねー!引くよねーっ!!」


 マルボは引き気味の観客を見て笑っていた。


 ムサシはまた木刀の場所に戻り木刀を選ぼうと見せかけたその時、木刀の破片をギムレットに投げつけた。

 咄嗟にギムレットは対処したが、その瞬間最後の三姉妹が倒れた。

 いつの間にか背後に周り木刀で殴っていた。

 ギムレット側に注意を引いて三姉妹最後の1人の隙を作ったのであった。

 もちろん木刀は粉々になっている。


 三姉妹は何もしないどころか、名前を紹介される前にあっさり倒されてしまった。

 先に仕掛けたのは三姉妹だから仕方ないのだが。


「お、おい、マジかよ。こんな一瞬で終わるってあんまりだろ……」


 誰かがそんな声を発し会場中の観客達はドン引きしている。


 だが、それもすぐに違う言葉で静寂は消えた。


 これから始まるムサシとギムレットの攻防に期待し、またザワつきはじめたのだ。

 試合開始の合図などもう必要は無い。

 既に始まっていて、会場の観客は皆ギムレットを知っているのだから紹介も要らないと判断する。


 ムサシは木刀を新たに取り両手で握り構えてギムレットとの距離を詰めていく。

 今度は試し振りをしない。

 試し振りはあえて隙を見せる作戦だったのだが、この相手に小細工は不要と感じ取ったのだ。


「棒術か……すこし厄介でござるな……」


 ムサシは呟いた。


 ラークは解説席で少し前のめりになる。

 ムサシは前世宮本武蔵の時に棒術の武闘家に負けた事がある。


 引き分けという説もあるし、真剣勝負ではない試合とも言われてはいるが。

 その事を小声で言うとマルボも知っていたようである。


 AAランクでこのリゾットの街最強の一角が棒術使いである。

 ムサシの本気が観れるかもしれないのだからマルボも集中して観ている。


「この小僧相当強いウガね。でも剣で棒術には勝てないウガよ」


 見た目と似合わない変な喋り方のギムレットにラークは「ウガって何だよ!」と突っ込みを入れそうになったが我慢した。


 感知スキルのおかげでギムレットの呟きが聞こえるのだが、聞こえているのは自分だけなのだから突っ込んだら変な目で見られると不安になったからだ。

 意外とシャイなラークはまだまだ突っ込みの伸び代があると言える。


◆◆◆◆


 ギムレットの棒は2メートル程の木の棒であり、長尺棒と呼ばれる。

 材質はムサシの木の棒と同じ物を使っているようだ。

 ギムレットは頭上で長尺棒を両手でクルクル力強く回しはじめた。


「む?」


 ムサシは回転を見つめながら間合いをはかる。


「思ってた棒術と違うな……」

「この世界、力こそパワーだったね……」


 現代日本において洗練された棒術は、突けば槍、薙げば薙刀、打てば棒と言われるように臨機応変に対応出来るよう訓練されている。


 さらに剣道三倍段という言葉がある。

 一般に知られている「剣道三倍段」は、武器を持っている剣道に対して、無手の空手や柔道などの武道をしているものが相対する時は三倍の技量が必要というものだ。

 実は、本来の意味は武器術において槍術や薙刀を相手にするために剣術の使い手は三倍の技量が必要であると言う意味である。

 同じくらいの技量の場合、棒術に剣術が勝つというのは難しいであろう。


 しかし、この世界の棒術は力任せに長尺棒を振り回すだけのようである。

 駆け引きも無く勢いに任せて振り回しているだけなのだ。


 ムサシは間合いをジリジリと詰めていくと突如消えた。


 ドーンッ!


 と大きな音とともにギムレットが壁に突き飛ばされていた。


 ムサシの木刀は粉々になっている。


「すいません。見えませんでした。」


 ケントが知覚拡大能力を使っているラークとマルボに解説を頼んだ。


「いや、僕の探知魔法は何と無くしか分からないから、ここは感知のラーク先生にお願いしましょう」


 マルボはラークに受け流す。


「あのギムレットって奴中々いい反射神経してるな。 ムサシは距離を詰めて間合いに入った瞬間飛び込んで喉元に突きを繰り出したんだ。 咄嗟にギムレットは上体を屈ませ致命症を喰らわない為と威力を軽減させる為に額で突きを受けたんだが…… 予想以上の威力に壁まで突き飛ばされてしまったってとこだ」


 隣に座っている司会がちゃっかりと今の内容を観客に説明した為、観客は大いに盛り上がっていた。


「ぐむーっ、このままでは勝てないウガ」


 ギムレットは長尺棒を杖代わりに立ち上がる。


 いつものムサシならこの隙を見逃さないのだが、木刀が粉々なので新しい木刀を取りに行っていた。


 ギムレットは長尺棒を片手に持ち杖代わりに体を支えながら体を震えさせはじめた。

 力をためているようにも見える。

 その姿を見て観客がまたも大いに沸いた。


「おい!ギムレットも本気だぞ!」

「俺初めて見るぞ!」


 震えるギムレットの体がぼんやりと光を帯びてくる。


「あれって……」


 マルボはその様子を見ながら口を開いた。


「あぁ、AAに納得だ。精神支配されなかった魔人だな」


 ラークの説明に司会がまた反応する。


 半分くらいの観客だろうか、ギムレットの変身を知らない者達がザワついている。


 ギムレットの体が二回りも多きくなり、筋肉ははち切れんばかりに膨張し、着ていた服を破り捨て、顔は獣のように鋭く牙が生え始めた。

 瞳は赤く変色し、全身から体毛が吹き出した。

 虎のような魔物の血で魔人化したのだろう。

 あっという間にギムレットは虎を人型にしたような魔人へと変身したのだ。


「ウガァァァァーッ!!」


 両手を広げて咆哮するギムレット。


「わーっ凄ーい!虎さんになったよー!」


 ラークは目を輝かせて驚くキャメルに、お前一昨日もっと凄えの見てるだろ。と突っ込みたかったがやめた。

 キャメルの隣で凄いねーと相槌を打っているワカバにも、いや、お前も結構大物だなっ!と突っ込みたかたったが、一々突っ込んでいるともたないので我慢した。


 ギムレットは長尺棒を頭上で振り回す。

 その回転力から生まれた衝撃波は闘技場の反対側のムサシまで風となって届き短髪の黒髪が揺れる。


「拙者は前世から引き継いだ力を、この世界で得た力を、世の為仲間の為に使うと決めたでござる。拙者は誰にも負けないでござる」


 ムサシの言葉に会場からは割れんばかりの歓声が上がった。


 ムサシは木刀を3本取り出した。


「ん?」


 ラークは嫌な予感を察し、横目でマルボを見るとマルボは目を輝かせている。


「例え海賊団の剣士相手でも負ける訳にはいかないのでござるよ!」


 そういうと1本の木刀を口に加え2本の木刀を両手に持って構えた。


「おお!言葉の意味はよくわからんがとにかく凄い自信だ!」


 司会がどこかで聞いたようなセリフを言う。


 ラークは司会への突っ込みよりもマルボに対して我慢の限界に達してマルボの胸ぐらを掴み「お前は何を教えたーっ!」と突っ込みを入れる。


 マルボは喜びながら「ほらほら凄いのが見れそうだよ」とムサシを指さす。


 ムサシはギムレットとの間合いを詰めて右上段に二刀を構え


「ひへんへんめーひゅー(二天円明流)」


 口に木刀を構えているのでうまく喋れないようだ。


「やめろーっ!ここまでのカッコよさが台無しだーーっ!」


 とラークは身を乗り出し右手を伸ばして叫ぶのだが、今度はマルボに口を両手で抑えられてモゴモゴとしか言えていない。


「はんひょーひゃーほうひ(三刀流奥義)!ひょひゃひゃひ(虎駆り)」


 と言い終わるとムサシの姿が消えた。


 パンパン、パーンと破裂音のような音が闘技場に響き渡りギムレットが崩れ落ちる。


 ムサシは両手二刀を振り下ろしギムレットの長尺棒を強打した。


 二刀の木刀と長尺棒は砕け散り口に加えた木刀をすかさず右手で持ち片手上段面打ちを炸裂させたのだ。


 ワーッと歓声がなるところだが、場内はシーンとしている。


 大都市リゾットの最強の一角と言われたギムレットまで一瞬で倒された事に観客達はドン引きである。


 司会すら言葉を失っている。


「ほら、ラークが思ってた技とちょっと違ったみたいだよ」


 マルボはラークに耳打ちするように小声で喋った。


 繰り出した技はともかくとして、ラークとケントとマルボはもうこの程度は驚かない。


 キャメルは「やったーっ!」とバンザイしている。


 ワカバは相変わらず「凄いねー」とキャメルに相槌を打っている。


 ワカバはムサシの実力をはじめて垣間見るはずなので、「いや、お前大物かよ!」と突っ込みを入れかけた。


 よく見ると目がマジだったのでラークは胸を撫で下ろした。

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