30 ここまで三人がたどった道筋
「それで、何があったんだ?」
会社に戻って三人を中に案内する。
そこで彼らから事情を聞いていく。
相手の考えや気持ちを読む能力はヒロキにはない。
声に出してくれなければ何も分からない。
三人は正直に何があったのかを伝えていった。
隠さなければならない事など何もなかったからだ。
怪物があらわれた時、彼らは右往左往しながら逃げる事になった。
武器を手にしてるわけでもなく、対抗策があるわけでもない。
ユウマとコウシロウは逃げるしかなかった。
ヒサトモが合流したのは、そんな騒動が起こった直後だった。
最初にユウマが出会った。
混乱してるユウマに、あれこれと助言をしていった。
壁を通してどこに何がいるのか伝えて。
未来を見通して、今後の展開を教えて。
最初は半信半疑だったユウマも信じるしかなくなった。
言った通りの事が起こるのだから。
それに、自身も『錬気・操気』が使えるようになったのだ。
その力で火炎や冷気も出せるようになった。
超能力が実際にあると知ったのだ。
ヒサトモの持ってる能力も信じるしかない。
それからコウシロウに合流。
こちらはもう少し簡単に話を聞いてくれた。
ヒサトモとユウマが襲っていた怪物を倒していたからだ。
あぶない所を助けられて、二人に信頼感をおぼえていた。
それに単独行動は危険だった。
コウシロウも一人になって身の危険を感じていた。
出来れば誰かと行動を共にしたいと求めていた。
そこに二人があらわれたのだ。
怪物を倒せるだけの強さも持ってるし、出来ればついていきたかった。
ヒサトモもそうした方がいいと口にした。
コウシロウの考えや内面を見て問題がないと判断出来たから。
なにより、予知などでコウシロウがいた方が良いと分かっていたから。
コウシロウもその後に超能力が使えるようになったのも大きい。
ユウマと同じで自分が力を使えるようになれば、信じないわけにはいかない。
ヒサトモの持ってる能力を。
周りと先々を見通す力を。
「それで、ここまで来た」
あとはヒサトモの指示に従った。
彼の能力ならば安全な所を見つける事が出来る。
それに、未来を見通す能力は最善の結果に導いてくれる。
ヒサトモ自身も自分の能力を使って合流していった。
仲間になってくれそうな者。
生き抜く能力のある者。
それらを求めて動いていた。
「それで次はここに来ればあなたがいると分かったので」
それでやって来たという。
「なるほど」
話を聞いたヒロキは、なるほどと思った。
確かに予知能力があるなら、先の事も分かる。
最善の選択もしやすいだろう。
ただ、少しだけ気になる事もあった。
「じゃあ、つまりだ」
「はい、そうですよ」
質問をし終える前にヒサトモは答える。
「もともと持ってました、超能力は。
怪物が出てくるようになる前から」
聞きたかった答えを聞いて、ヒロキはため息を吐いた。
それを聞いたユウマとコウシロウは、「あ!」という顔をした。
言われてみれば確かに、という事だ。
ユウマとコウシロウが能力を使えるようになったのは、怪物が出て来たあと。
怪物を倒してレベルを上げてからだ。
しかし、ヒサトモは違う。
出会った時には既に能力を使えていた。
生き残る事に必死で、それに気付いてなかった。
「なるほど」
ヒロキは苦笑するしかない。
そんな二人と、そして尋ねる前に答えるヒサトモを見て。
「これなら次の質問も分かるのかな?」
「そうですね」
続く言葉にもヒサトモは頷く。
「なんで超能力を持ってるのかとか。
そういう事もまとめて話します。
丁度良い機会だから」
そう言ってヒサトモは語り始める。
それは説明というべきものだった。




