第七話〜服屋さんの暴走〜
今日は、服を買いに来た。
昨日は、あの後、部屋に戻るとすぐ寝てしまって、朝起きても少し疲れが残っていた。しかし、リディは昨日あんなことしたのにとても元気であった。
精霊は生物と違い、スタミナの概念がなく、全身が魔力で構成された生命体で、魔素濃度の濃ゆい場所で生まれない。言語を理解したり、話すことが可能なのは、原理はよく分からないけれど生物は魔力を体内で作り出しているのだが、体内の許容量を超える魔力は魔素として、体外へと放出される。その時、放出される魔素にはの生物の持つ知識の一部が混じるので、その魔素を吸収することによって、精霊は知力を得て、言語などを理解することが可能だと、神様に貰った本に書いてあった。
カランカラン
「いらっしゃい……ま!せ!」
お店の扉を開けると、物凄く派手な服装をした女性がおり、途中まで普通に言っていたのに、最後の部分だけ反射的に耳を塞いでしまう程大声で言った。
「な〜んて可愛い子なの〜!すぐに服を見繕ってあげる!」
「あっ、待っ……」
待ってくださいと言おうとしたが、服屋の店員らしき女性は言い切る前に服の選別を行っていた。あーでもない、こーでもない。と、迫力が凄まじくて話しかけづらい。リディも店員さんの姿に呆気に取られてるのか、困惑の感情が流れてくる。
「これだわ!」
店員さんは求めている服が見つかったらしく、こちらに戻ってるくと、私の腕が掴まれた。
「こっちへ!」
「え?」
「ハルちゃん!?」
そのまま私は店の奥にある個室連れ込まれた。
(この人、力強い!)
「さ、着替えましょう」
そう言って、私の服を脱がそうとする。
「あっ、だめっ」
「服が傷むから抵抗しないでちょうだい!」
(下に何も着けてないから!あと目が、目が怖い!)
力の強い店員さんには私の必死の抵抗もむなしく、私の1枚だけの服は脱がされる。
私が裸となった所で、カーテンが開けられて、慌ててリディが個室に入ってくる。
「大人しくして……」
店員さんは裸の私を見ると固まったように動きが止まった。しかし、顔は先程以上に笑顔になっていく。
(嫌な予感が……)
本能的に私は危機を感じた。
私の予感は的中し、店員さんに突如抱きしめられて押し倒される。
「あー!可愛い!食べちゃいたい!」
「ひっ……襲われる!?」
私はこの店員さんに恐怖を感じた。昨日、お風呂でリディに対して感じたものと似ている気がするが、そこに少なくとも恐怖は無かった。
ドンッ!!!
突然店員さんの髪を何かが掠り、壁に穴を開けた。私は流れ込む多大な怒りに気づき、顔をリディに向ける。そこには盗賊を倒した時のように水球を周りに浮かべている。
「早く離れなさい…」
「はぁはぁ……」
リディの底冷えする声で言うが、店員さんはそれに気づいていないかのうように、声を荒らげながら、私の背中に回されている手を下へと伸ばされ、お尻に触れられる。
私はこの店員さんに恐怖を感じているからか、今は同性でも、とても拒絶感を感じる。
「や、やめて……」
軽く涙目になりながら私は懇願する。
すると、私を抱いていた手が緩み、店員さんが起き上がったかと思ったら、後ろへと倒れこんだ。
私はビックリしたが、リディがやったのだとすぐに思い当たる。
「大丈夫?ハルちゃん」
リディが両手を差し出してくる。
「うん、おかげで助かった」
私は手を取って起き上がり、私を襲った店員さんを見る。そこで彼女が肩口に複数の穴が開き、血を流していることに気づく。
「大丈夫ですか?!」
声をかけるが気絶しているようで、返事はない。この人が私を襲ってきたのが原因とはいえ、怪我させたのはリディなので、このまま放置することはできない。それに、下着をまだ買ってない。
「えっと……そうだ!」
神技:【アロマキュア】が私にはあった。
貰った時は何故か何も気にしていなかったが、これには私の体液をかける必要がある。
体液でまず私が思い浮かんだのは汗だった。しかし、今は特に汗をかいていない。あと思いついたのは唾液だった。
(唾液……うーん)
少し悩んだが、私は覚悟を決めて、店員さんに覆い被さるように跨る。
ただ、店員さんの顔見ると、先程のことが蘇り、手足が震える。姿勢を崩しそうで、このまま倒れると店員さんに触れてしまう。接触には拒絶感あって、なんとか姿勢を保とうと踏ん張る。
「何するの?」
リディが尋ねてくるが、今は答えられそうにない。
私は店員さんの顔を見ないように、肩口へ顔を近づけて、口から唾液を垂らす。粘り気のある液体がゆっくりと落ちていく。
店員さんの肌に着くと、染み込み様に消えて、傷口が塞がれいく。
もう片方も塞がっており、それを確認して、飛び跳ねるように私は離れる。
「何かされたの?ハルちゃん。それに、さっき震えていたけれど……」
「何もされてないよ。ただ、まだ怖かったから……」
「私がやりすぎてしまったせいで、ごめんね」
リディが落ち込んで俯く。
「ううん、リディは私を助けるためにやったわけだし、気にしないで。でも、人をあまり傷つけないようにはして欲しい、かな。リディのことを嫌いになりたくないから」
助けてくれるの嬉しいけれど、人が血を流す姿を見るのが辛かった。
リディを安心させるように、最後の言葉は付け足したけど、自分で言ってて少し恥ずかしい。
「ありがとう、ハルちゃん。大好きよ」
そう言って、リディが私を抱き締めてくる。
そこで、私は服を脱がされて裸だったことに思い出す。リディには契約した時や一緒にお風呂に入った時に見られているが、まだ恥ずかしい。
リディに離れてもらい、寝息を立てている店員さんを避けて、放り投げられた服を回収する。
「うーん……この人、どうしようか?」
傷は治したけれど、店員さんは神技の副作用もあってしばらく起きないだろう。
「そこに置いておいていいんじゃないかしら?」
リディはそう言う。運んだ方がいいかと思ったけれども、よくよく考えたらこの店の内装をよく知らないので、何処に運んだらいいか分からなかったので、ここで寝てて貰う事にする。
「店員さんが起きるまで暇だし、服でも見とこうか?」
「ハルちゃんなら何でも似合う気がするわ〜」
よし、まずは下着から見よう。
なんとか2月中に間に合った。[ピー][バキューン]なのを書いてたり、コラボイベントが忙しかったりしました!
前話、入れるタイミングおかしくないですかね?
あと、一応名前変えました
【変更点】
固有スキルを【経験値倍増化】→【可愛がられ体質】に変更しました。
【可愛がられ体質】
愛でる対象として愛されやすい体質