朝食にしましょう。
第15回だね!
今後も頑張って参ります~!
今後とも、どうぞ良しなに。
終わった。
それはそれは、長い道のりだった。
これまでの人生の中でこんなにも時が長く感じたことがあっただろうか。いや、なかっただろう。
そう、幼い頃に受けた拷問でさえ、今の衝撃に比べれば鼻で笑ってしまえる。
それほどまでに今までの道のりは驚愕と、苦痛と、羞恥、災難に満ち溢れ、長く、永く、永遠のように感じさせた。
「やっと、朝食の時間です。けだ、いや、白兎……も見た目とかけ離れていて何か違います。
もういいです。面倒ですから、白で。ほら、白。ご飯にしますよ」
「ブーーッ!?」
「私は、疲れているのです。静かになさい。
そもそも、あなたの見た目と本来の種族が紛らわしいのが、もう、面倒な要素なんです。
毛玉でないだけマシと思いなさい」
「……ブッ」
「……のの字を書ける兎なんて、いたら気持ち悪いでしょうが……」
悪夢のようなメール地獄から、社長の意味深発言、同僚の痴話喧嘩、後輩からのカミングアウト。
やっとの思いで、気を持ち直し、何とか家族や親戚類を止めるべく。
末端の親戚、誰ですかというような小さな子、テレビに映ってましたねという有名人、そして現況の爺様含む家族たち。
彼らの連絡先を片っ端からハッキングし、携帯の電話番号、固定電話の番号を調べ、連絡して、を繰り返すこと5時間半……。
「そうっ! やっと休めるのですよ! もう、嫌です……、こんな家族……」
「プ、プ~?」
とりあえず忘れたい。
「さて、朝食ですよ。
私はお弁当を食べますから、あなたはこのたんぽぽもどきでも食べていなさい」
(というか、これ、本当にたんぽぽなのでしょうか。
日本では存在しえない青色の自生植物ですけど)
私は、奥に置いてあったカバンを開け、白に向かって一握りほどのたんぽぽもどき(青)を差し出した。
もちろん、毒が無いかはAOBアプリにて調査済みだ。このアプリの信ぴょう性については触れないでおこう。
「プッ? ……ブーー」
「おや? 好き嫌いですか? 可笑しいですね。兎はたんぽぽが好物なはずですのに。こちらでは違うのでしょうか?
たんぽぽは、食用になるんですよ?」
「ブーー!」
どこかの野草家なんて、そこらへんに生えている草を平気で口にするのだ。
野生動物が食べないでどうするのか。
「ふむ。では、このカバンの中にある野草やきのこはどうでしょう」
昨日収集した野草類を足元に出す。
わかりやすいよう種類ごとに仕分けもしてある。
「ブッ、ブッ、ブッーー!」
どれも食べないようだ。
「まさかあなた……、そんな見た目をしておきながら、肉食なんですか……?」
「ブーーーーーー!?」
違うようだ。
「おほん。では、気を取り直して。
白。あなたは、何を主食にしているのですか?」
「プッ、プッ!」
白は嬉々として鳴いた後、カバンを漁り始めた。
そしてどうやってくわえているのか不明ではあるが、口の大きさに見合わない500mlのペットボトルを取り出してきた。
「?
これは、食というより飲料ですよ? しかも、気です。
ここの地で採集した気ですが、これがあなたの食べるものなんですか?」
「プッ!」
(種族に関わる特性でしょうか? 他の生物をまだ見ていないので比較できません)
謎は深まるばかりである。
「そういえば、なぜあなたはここにいるのです? あなた以外がこの地にいないことも自然です。
新種、というからには同族がいないのはわかりますが、エントかシームルグの群れと暮らさないのですか?」
「ブーー……」
親の話になったとたん、先ほどまでの元気はどこへ行ったのか、急にしおらしくなってしまった。
(まさか野生動物にも親を思う気持ちがあったなんて……!)
変なところで、驚愕してしまった。
この調子では、見ているこっちが申し訳なくなる。せっかくの(何回食べても再生する)妻のお弁当が美味しく頂けないではないか。
兎を見ていて思う気持ちは、アレだが、とりあえず慰めておくことにした。
「え~。まぁ、なんですか。
あなたも不運でこんな所に来てしまったクチですか?
いやぁ、私と同じですね! まさに運命の出会い!
私は、早いうちにこの地から抜け出して元いた京都へ帰るつもりですよ。
幸い、このカバンがあるおかげで住さえ整えればどこへでも行けますし。
あなたも希望は捨てずに生きていけば、自ずと道は開けるのではないでしょうか(多分)」
「プッ? プッ~!」
(なんとか慰められたようで何よりです)
これで、美味しくご飯が食べられる。
「さっ、朝食の時間ですよ~」
「プ~!」
ブー、ブー。
「おや、通知ですね。
まぁ、マナーモードでしっかりバイブ状態ですから、なんてことのないただのメールでしょう。
ご飯食べますよ、白」
「プップ~」
私はこのとき、知らなかった。
後にこの対応が、異世界のみならず現世へも影響を与えてしまうことになるなんて。何も……。
――レプスの好感度が上がりました。ファーストキー【孤独】を解除しました。――
「時として、白。
あなたは、その兎姿からエントやシームルグになることは可能なのですか?
私の世界では、エントは森の賢人で妖精であったり巨人であったり。
シームルグは、鷲の姿と犬の頭、孔雀の尾、ライオンの爪を持つとされていますが、諸説あります。
と、まず、日本の生物名で伝わりますか?」
「プッ?」
「あぁ、でしょうね。
ちょっと、待っていてください」
私は携帯電話から”エント シームルグ 画像”と検索する。
「ほら、これを見てください。
こちらがエント、そしてこちらがシームルグです。
どちらも神話やファンタジー上の生物です」
「プーッ! プッ! プッ!」
「おや。当たりのようですね。
では、変化できるのですか?」
「プ~……、プッ!」
白は自身の体を使って、器用に×印を宙に描いた。
「それは、あなたが”レプス”という新種だからですか?」
「ブー」
今度は見えない首を熱心にふっている。
「ふむ。では、そもそもその姿以外にはなれないのでしょうか?」
「ブッ、ブーー!」
「違うと。つまり、変化はできるが今はできず、原因は新種故ではないと。
では一体なぜ――」
こちらを伺っていた白が、急に接近し腕の裾を噛んだ。と思いきや、小さな体に見合わない力で引っ張りだした。
「ちょ! なんですか!? いきなり!?」
「ヌーーッ(プーーッ)」
「鳴いたって伝わってませんよ!? どこ行くんですか!
とりあえず、腕の裾じゃなく足の裾にしてくれませんかーっ!?」
私は、白に引っ張られるままに第1拠点を出た。
普段であれば何としても脱出するはずなのに、今はなぜかそんな考えはこれっぽっちも浮かばなかった。
やっと、ファンタジーだよー!? 長かった~!




