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才人の才人による凡人のための処世術  作者: 西モコナ
第1回、異世界到達。それは森の中だった。
15/21

私のあずかり知らぬところで第2(?)次戦争が勃発していました。

 お待たせいたしました~!

 第14回目ですよ~!

 未だメールデータは増え続けているが、中には私の陰鬱な気持ちを多少和らげてくれるものもあった。


「ははっ、さすが、としか言いようがありません」


 つい笑みがこぼれるほどだ。



『件名:"(-""-)"お前な……!

 本文:物集! おま、報告書に書く時間あるんだったらなんとかしろよ!?

    こちとら、狸じじいとの化かし合いで疲れてるってぇのに! <(`^´)>

    なんでお前ん家のラスボスじじいまで相手にせにゃならんのだ! まったく!

    もし、オルディーちゃんが匿ってくれてなきゃ、今度こそあの世の婆ちゃんに会っちまってたよ!

    お前が帰ってきたら、このツケ、きっちり体で払ってもらうからな。覚悟しとけよ? (。-`ω-)』



 何はともあれ無事のようだ。社長の悪運は相当らしい。

 

(社会人にもなって、メールに顔文字。はぁ。いつになっても治らないんですから、まったく。

 しかも最後の言い回しがなおさら、社長らしいといいますか)


 やたら意味深な発言をするのが彼らしい。


「おや? こちらは」



『件名:物集ちゃんへ(ハート)

 本文:大丈夫? 異世界でもご飯はしっかり食べてるかしら?

 あぁっ! 心配だわ! 私も物集ちゃんのところに行きたい~! こんな男のボディーガードに囲まれる生活ッ、もう嫌よ!


 ねぇ~、物集ちゃんが帰ってきてくれればこの地獄生活も終わるんでしょ? 頼むから、早く戻ってきてぇ~!

 戻ってきてくれたら、代わりにおいしいご飯作ってあげるわよん(ハート)

 あのチャラオ気取りの金髪バカ野郎を止められるのはあなただけよっ! ヨロシク!(ハート)


 銀治より』



 同僚からのメールだ。こちらも心配はなさそうだ。突っ込みどころは満載だが。

 あと、2通ある。そちらも読んでみよう。



『件名:はいはーいっ! みんなのアイドル、天音くんこと、あっくんだよー!

 本文:物集くんさ、今、異世界行ってるんだって~?

 いいな、いいな~! 俺も行きたかったな~! きっと、異世界にはもっと可愛い子ちゃんがいるんだろうね~!?

 写メ待ってるから! あと、もし女の子に会えたら俺の写メ、その子に見せてあげていいからね~。

 むしろ、女の子と会ったら連絡してきてよ!


 てか、メールで会話って、今時ないよね~。見た目は赤メッシュ入れた今時女子なのに! (笑)

 まぁ、あの女男の名前通りふるく』



 最後の文が途切れている。我が同僚にも落ち着きは皆無のようだ。

 

(篝火君も金森君もいつも通りで安心しました。

 さて、次で最後のメールですね。発信元は……)



『件名:おはようございます。難波です。

 本文:おはようございます。朝早くからご連絡してしまい、申し訳ございません。難波 雨龍です。

 自分がご連絡することは、本来であれば先輩の現状をお聞きする質問なのですが……。

 他3名がこちらの現状を伝えきれていないだろうと思われるので、不肖ながら自分がご連絡させていただきます。』



(……あぁ、彼でしたか。

 いつ見ても、あの社長が引っ張て来たとは思えない謙虚さです。

 主に私だけ(・・)に)


 メールには、彼らが今どのようにしているのかが事細かく記されていた。





『自分たちは、先輩の奥様のご実家に匿っていただいている状態です。

 というのも、これを説明するには昨日まで(さかのぼ)らなければなりません。

 あらかじめ、長文になりますことをお詫び申し上げます。


 では、改めまして。

 社長から先輩が異世界に行ってしまった、という話を自分も含めて篝火先輩と金森先輩のみに伝えられました。

 それからというもの、社長から振り分けられた先輩の山のような業務をこなしていました。改めて、先輩の凄さが身に染みた1日でした。


 業務を振り分け終えた社長は、大会議室へと向かわれ、会議をなさいました。

 その後、先輩の奥様に連絡を入れるとおっしゃい、部屋を出て行かれました。以降、社長の姿は終礼時になっても見えませんでした。

 もしかすると、その時から対策を練っておられたのかもしれません。

 いいえ。これは推測の推測でしかありませんが、社長は始業前に先輩が来られていないときから難しい顔をされていたので、何か手を打っていた可能性も……。これは、自分の憶測でしかありませんので捨ておきましょう。話を戻します。


 自分や他社員は、終業後、何事もなく家に帰っていったと思います。そして、普段と変わりなく過ごしたはず。

 丁度、PM8:00になった時、携帯に社員全員へ一斉メールが届きました。社長からです。

 メールには、”O”とだけイニシャルが記載されていました』



(”O”……?)


 初耳だ。何かの暗号だろうか?

 それにしては、私が知らないのは可笑しい。



『先輩はご存じないはずです。なぜなら、このイニシャルが必要になるときは先輩が不在のときのみですから。

 このイニシャル暗号は、他にもありますが全て先輩には隠されています。

 きっと、先輩には不要な情報だから、と社長がお伝えしないように言われたのではないでしょうか?

 なぜ、先輩に伝えないのか。本当のところは誰も知りません。


 以前、篝火先輩にお伺いしたときは「会社の窮地に必要になるのよ!」とお聞きしました。

 金森先輩には「前に物集くんがいなくて、大変だったんだよ~。でも、物集くんのせいじゃないから彼にはないしょね?」と。

 確かに、先輩がいないと業務が滞ってしまって窮地になりそうですね!』



(絶対っ! 違うでしょうっ!)


 理解した。

 理解したと同時に、心臓が一気に冷えた気がした。

 自分の顔色は見えないが、感覚で青白くなっていることがわかる。


(私だけが知らない暗号……。私がいないと、会社の窮地になるようなことが起こる?

 それは今と同じではありませんか!)



『先輩の奥様がずば抜けた観察力の持ち主であることは、社長だけでなく全社員が知っています。

 これは、自分が入社する前に起こったことがきっかけらしいのですが――』



 その後もつらつらと語られる、知らなかったアレコレ。

 ずっと、隠されていた第1次戦争が今になって表面化した。


「ははっ……、は……」

「プッ?」


(ここでは、明け方でも息が白くならないのですね)

「プ~?」

 早う、家族ネタ終わりたもれ……。

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