↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
20/30

二十話 無事に帰れれば

 勢い込んで言ったはいいものの、あれから二時間が経過しても、オレ達はまだ他の三人と合流出来ていなかった。


「なんか悪い……」


「いや、はーちゃんのせいではない。私もどうにもできていないからな」


 ヒノはなんてことのないように言っているが、かなり疲労がたまっているはずだ。魔法少女は、あまり長時間の戦闘に向いていない。短期間に膨大な威力を発揮するのが得意であり、そもそも長期戦を想定していないのだから。


 モンスターは散発的に襲って来ており、そのほとんどは撃退している。オレ達の進行方向から来るモンスターが多いためで、そうでなければ簡単に逃げられるというのに。そのせいで、余計に疲れるのだ。


「出口の方角は、こっちで合っているはずなんだがな」


「確かに、コンパスの表示とも一致してるんだよなぁ……」


 ヒノが持っていたコンパスはこの世界でも使えるようで、正しく南を示している。前に実験したことがあるので、間違いない。この世界では指す方角が逆なだけで、ちゃんと使えるのだ。まあ、ここがめっちゃ磁気強い可能性は否定できないんだけど。


「三人とも、どこをどう進んで行ったのだろうな? あの中で行く先を選択できそうな者に、心当たりがないんだが」


「同感。一番あり得そうなのは、さおりん先輩かなぁ……」


 最年長だし、いざという時には頼りになる。唯一の男であるギンを頼りにしてるってことはないだろうし。


「一番さおりん先輩がしそうな選択は、なんだと思う?」


「んー、やっぱり出口目指すしかないと思うんだよなぁ。入口に行ったところで、通れねえんだし」


「はーちゃんもそう思うか。ここまで来て誰にも遭遇しないと言うことは、もしや三人とも脱出に成功しているのかもしれんな。私達と離れていた時間を考慮すれば、もっとも確率の高い可能性だと思う」


「だといいんだけどな」


 オレ達も、あといくらもしないうちに出口にたどり着くはずだ。そうすれば、三人がどうなったのかもわかるだろう。

誰か一人くらい、目印を残しておこうとしてくれるといいんだけど……ギンは期待できないし、ミーアもムリだろう。さおりん先輩が冷静だったら、あるいは……


 どんどん心配になって来る。よく考えてみれば、オレ達って全員いるからどうにかやって行けてるけど、ソロでこの世界放り込まれていたらヤバかったよな。もしそうなら、初日で死んでたかも。特にギンとミーア。


「もし一人で召喚されてたら、たぶんヒノが一番生き残ってそうだよな」


「そんなことはないぞ。私の場合、考えなくてもいい可能性を考え過ぎた結果、何もできずに死んでいたかもしれん」


「あー……」


 ないとは言えない。ヒノってば短絡的に見えて、変なところばっかり考えてるからなぁ。常人とは思考回路が違うっていうか。


 そんなことを話しながら時折襲いかかって来るモンスターを倒し、更に三十分。とっくに出口が見えていいはずなのに、影も形も見当たらない。


「また何かギミック解かないといけない系か?」


「それらしきものは見当たらない。池の底も覗いてみたし、その辺の岩も慎重に調べてみたが、成果はなしだ」


「ってことは、純粋に迷路ってこと?」


「そうなるのだろうが……」


 最後の最後で、一番面倒でシンプルな仕掛け持って来やがって……

それにしても、ヒノの煮え切らない態度が気になる。普通に迷路だったら、もっとスッパリ言いそうなもんだが。


「ヒノ、これまで同じ道通ったりしたか?」


「いや、この階に来てから一度も同じ道は通っていない。だからこそ、迷路なのか判断し難くてな」


 なるほど。さっきの態度の原因はそれか。


 ヒノが同じ道を通っていないと言うのであれば、そうなのだろう。ヒノの記憶力ならば、一度通った道を忘れるわけがない。同じところをグルグル回っているわけでもないのに、目的地にたどり着かない。これはマズいかもしれない。


「もしかして、道が勝手に書き換わるタイプのダンジョンかここ」


「かもしれないな。それならば、地図と実際の道が違った理由もうなずける。もしかすると私達が知らぬだけで、地図も連動して変わる仕掛けもあったのかもしれん」


「その地図は?」


「穴から落ちた時、うっかり手を離してしまったらしくてな。気がついた時には、すでに持っていなかった」


 ってことは、自力でこの迷路をクリアしなくてはいけないわけか……


「こういう時は左手法か?」


「途中で道が変わってしまえば、意味はないな」


「道しるべ的なもんもねえしな……」


 こういう時、何か役に立つもん持ってなかったっけ?


 そう思った瞬間だった。目の前にいたヒノが、驚いた顔でこちらを見つめていることに。


「ヒノ?」


「はーちゃん、背中背中」


「背中?」


 言われて首を後ろに向けると、かすかに光っているのが見えた。その理由に察しがついたオレは、大慌てでリュックの中身を漁る。そして見つけたのは、光るキーホルダーとギルドカード。


「って、なんでカエルのキーホルダーが光ってんだ?」


 お守りなどではなく、カエルのキーホルダーが光っている理由がよくわからない。確かこれは、ヒノが家族旅行の土産に買って来た……


 不思議に思いながらもギルドカードの裏面を読んで。オレの疑問は氷解した。


『無事カエル:持ち主を無事に家まで帰してくれる』


「なーる。これはこれでお守りなのか」


 言いながらキーホルダーを掲げるや否や、キーホルダーの放つ光が一直線に右の道を差すではないか。


「これってあれか、この光辿って行けば帰れるっていう」


「だろうな。これでようやく帰れるな」


 そしてオレ達はキーホルダーの案内通りに歩いて行くこと十分で、あっさりとダンジョンを抜け出すことに成功したのだった。


 その時にはすでに他の三人はダンジョンを抜け出していて、すぐ近くでキャンプをしていた。

出るのと同時に青い顔をしたさおりん先輩に平謝りされたのが、とても印象的だ。あそこまで気にしているとは、思ってなかった。半分事故みたいなもんだったし。


 その後先輩に、どうやってあの迷路を踏破したのか訊いてみると、返って来たのはリアクションに困る答えだった。


「二人が落っこちちゃったあと、ヒーちゃんが持ってた地図をギンが拾ってさ。それ見てたら地図ごと近くの池にハマったん。で、魔法で乾かそうぜみたいな話になって、適当に魔法を使ってみたら正しい道が表示されたってわけ」


 ギンってば役に立つんだか立たないんだか……地図に向かって魔法を使うことが条件だったのかもしれないな。


 ともかく、今回オレ達のダンジョン攻略は成功したと言えなくもなかった。レベル上げという目的は、一応達成したし。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。