十八話 ダンジョンにはつきもの
現在、ヒノと二人きりでダンジョンのどこかにいる。ヒノと二人きりと言うのは、かなりマズい状況だ。ヒノが魔法少女で、オレが奇術師。このパーティには治癒師がいないので、ケガをした時点で動けなくなるのだ。
「参ったな……まさかギルドで配られている地図が、ちゃんとしていないとは」
「それについてはしゃーないかもだけど、やっぱ急ぎ過ぎたんだって」
「そうは言ってもな……」
魔王を倒さなければ元の世界に帰るのが難しいと思われる以上、たしかに早いとこ魔王を倒さなくてはならない。だからと言って、それまでに死んでしまえば元も子もないのだ。
ヒノもそれがわかったのか、わかりやすくシュンとしていた。
「やはり私はリーダーとかは向いていないな。人をまとめたりするのは苦手だ。というわけではーちゃん、これからははーちゃんがまとめてくれ」
「けっこうな無茶ぶりを……」
「でも、一番向いていると思うぞ? 私は回りが見えなくなることが多いからな。合理的な判断とかは苦手なのだ」
大真面目な顔で言われ、なんと答えればいいものか悩む。ヒノに任せておけないと思わなくもないが、だからと言ってオレがその役目ができるかと言えば別問題なのだ。
「ま、とにかくその辺の話は、ここから無事に脱出できたらだな」
とりあえず答えるのは後回しにして、オレはその場から立ち上がった。辺りを見回すと、奥の方に小さな穴があるのが見える。ありがたいことにこのダンジョン、洞窟の石自体が光っているので、光源がなくなることはまずないのだ。
「あっちに進めそうな道があるから、行ってみようぜ。つーか、あそこ以外出入口ないっぽいし、他に道ねえんだけど」
「ああ、はーちゃんに任せる」
というわけで、オレ達二人は出口か他の三人を探すために動き出したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「うりゃあっ!!」
ヒノが魔法で具現化させたハンマーを振り下ろすと、コウモリ型のモンスターは粉々に砕け散った。
「うむ、モンスターが大して強くないことだけが救いだな」
ハンマーを消したヒノが、疲れた様子もなくつぶやく。その姿はまるで、歴戦の戦士のようだ。
「いやお前が強いんだと思うぞ……」
魔法少女は本来、魔法を使う職業のはず。が、ヒノは魔法で武器を出して攻撃することが多い。別にそれはそれでいいんだけど、魔法少女の意味がないような……まあオールラウンダーってことでそれはそれで便利なんだけど。
「にしても、全く出口にたどり着く気配はないな」
「それな」
オレ達は元々いた場所から落ちて、ここにいる。ならばどこかに昇り階段があるはずなのだが、それが全く見当たらない。と言うか、どう考えても上より地下のここの方が広いのだ。
「ふうむ、左手法を使ってもよいのだが、さすがに効率が悪いな。これまで歩いて来た道ならば、全て覚えているのだが」
「お前記憶力とかはすげーいいよな。成績も超よかったし」
「こんなところで勉強ができたところで、なんの役にも立たん。どうも私は人生経験に乏しいところがあるからな。応用があまり得意ではないのだ」
「んなことねえと思うけど……」
でもまあ、ヒノはたいていのことを勘でどうにかしてしまう傾向がある。それはすごいことなのだが、同時に困ったことでもあるのだ。勘が当たらなかったり、勘ではどうしようもない事態が起こった時になにもできないと言うことなのだから。
「とにかく、今はまずここから出る方法を考えねばな」
「……思ったんだけどさ、お前空飛べたりしない? 魔法少女だろ?」
「うーむ……できなくはない。だが、私一人しか飛べないうえに、どこまで飛べるかわからん。燃費が悪いからな」
「そっか、常に魔法使い続けられるわけではねえんだっけ、その職業」
魔法少女は魔法を使うのに、精神力をけっこう使う。仮に精神力が完全に枯渇したとしても、使えないことはない。ただし、威力が著しく下がるのだ。
ホント、問題が山積みだ。
それからしばらく、オレ達は二人でモンスターを狩り続けた。だが一時間以上が経過しても、出口が見つかる気配はない。
「……ここまで見つからないというと、もしかすると何か仕掛けがあるのかもしれんな」
「ああ、ダンジョンギミック的な」
それはあるかもしれない。というか、その可能性が高い。だがどれだけ周りを見ても、あるのは岩と水だけ。なにをどうすればギミックが発動するのか、パッとは思いつかない。
「可能性が高いとすれば……さお先輩がやったように、手近な岩を蹴飛ばしてみる、とかだろうか」
「でもそれ、今の二の舞になるってこともあり得るよな?」
「むしろ、その方があり得るな」
となると、しっかり考えてから動かなくてはならない。なにか、カギになりそうなもの……岩と水、か。ん、水?
「なあヒノ、この水どっから来てるんだろうな?」
「そう言えばそうだな。よく見ればこの水、ここに溜まっているだけにしてはやけにキレイだ。と言うことは、どこからか流れ込んでいるものだろう」
オレは辺りにモンスターの影がないことを確かめてから、慎重に近くの池を覗き込む。
「……底になにか書いてあるぞ?」
「なんだと?」
ヒノはヒノで、別の池を覗き込む。
「こっちもだ。ええと……私から見て、上向きに矢印だな。恐らく、ボタンに書かれていると思うぞ」
「オレの方は右向きの矢印だな。……もしかして、どっからか矢印の通りにボタン押すと、昇り階段が現れる的なやつか!?」
「充分あり得るな。よし、全部見て回るぞ!!」
それからモンスターを倒しつつ、オレ達はところどころにある池を、順番に見て回った。
「よっしゃあっこれで全部っ!!」
三十分以上かけてギミックを解き明かしたオレ達は、どうにかこうにか上に続く階段を見つけることに成功したのだった。




