仕方がないじゃないか
婚約を解消された。
俺が誠実に婚約者としての務めを果たしていなかったと、責められた。
真面目でお堅い婚約者。俺の筋肉に惚れているようだったから、油断しすぎたか。
やりたい盛りの若い男が、可愛い女によろめくのは仕方ないだろう。
跡取り娘だというのに、器の小さい女だった。
まあ、次はもう少し物わかりのいい跡取り娘を探すさ。
そんなふうに考えていたが、教室で腫れ物に触るように距離を取られた。
「おいおい、婚約が解消されたって、俺はそんなに落ち込んでいないんだ。
気を遣わないでくれ」
そう言ったら、変な顔をされた。
「お前、そういう認識なのか」
「反省して……ないみたいだな。これからの付き合いは、遠慮させてもらう」
え?
どういうことだ?
「俺の元婚約者の家から圧力でもかけられたのか?」
縁を切るだけでは満足できず、俺に嫌がらせをするつもりなのか。
心配して尋ねたら、呆れたような表情を返された。
「天然だと思っていたが、単なる馬鹿だったんだな」
「お前を婿にほしいと思うご令嬢なんか、もう現れないぞ」
友達とは思えない言葉を残して、立ち去っていった。
次の婿入り先など、簡単に見つかるはずだ。元婚約者だって、競技会でいい成績を収めた後にあちらから申し込んできたんだ。
俺はそんなに頭が良くないけれど、女領主の補佐なのだから許されるだろう。出しゃばらない、いい婿になるつもりだ。
騎士科では、戦略を立てるグループ研究がある。班を決めるときに、いつものメンバーに近づいていったら、断られた。
「君とは一緒にやりたくない」
とはっきり言われた。
「突然、どうしたんだ? 俺が何かやってしまったのなら、教えてくれ」
俺はちゃんと反省するからな。
「私は家族を故意に傷つけるような人物を、許すことはできない。
以前の課題の時に、我が家で作業したことを後悔しているよ」
ああ、例の病弱な妹がいる男か!
婚約者とのデートを断る口実に、「病弱な幼なじみに呼ばれて」と名前を借りたんだよな。
「いや、悪かった。ほんの出来心で……」
「君は淑女の名誉を軽んじているのだね」
軽蔑するような眼差しだ。
ちゃんと謝ったじゃないか。
それなのに、他の奴らも俺を庇おうとしない。
他のグループに入れてもらったが、なんとなく距離を置かれている気がする。
ある日、食堂でこう言われた。
「君、貴族に向いていないよ」
見慣れない、騎士科ではない生徒だ。なぜ関係ない者に、そんなことを言われなければならない?
腹が立ったので殴ったら、自宅謹慎になった。
あいつが弱すぎるんだ。騎士科の学生に喧嘩を売って、防御もせずに殴られる奴がアホすぎる。
父上が怒って、俺をこのまま自主退学させると言い出した。
あれ、俺、もしかして崖っぷち……?




