第10話 寄生生物な女の子二人と喫茶店にて
……とある日の午後、ヴァイスはティートとルーフィと一緒に街の中心部にある喫茶店へと来ていた。この店はティートお気に入りの店で、ヴァイスが二人を尾行していたときに寄っていた店だった。
「私はフルーツパフェ一つ~♪」
「……私も同じものを」
席に着くと、さっそく二人がやってきたウェイトレスに向かってそう注文をする。
「……俺はコーヒーブラックで」
ヴァイスが控えめにそう注文すると、ルーフィが呆れた顔をして言った。
「……マスター、好きなものを頼んでいいんですよ? ここのケーキやパフェは本当に美味しいんです。頼むなら今が絶好のチャンスです」
「そうだそうだ~。それにコーヒーブラックだけとか、なんかかっこつけっぽくてマスターには似合わないと思う~」
ティートはそう言ってヴァイスにダメ出しをした。ヴァイスは特にかっこをつけているわけではなかったが、どうしたらいいかわからず「じゃ、じゃあミルク入りで頼むから」と言い出した。ウェイトレスはヴァイスたちの注文を聞くと、後にフルールパフェを二つとミルク入りのコーヒーを一つ、ヴァイスたちのテーブルへと持ってきた。ティートとルーフィは目をキラキラさせて運ばれてきたパフェへと口をつけた。ヴァイスはそんな二人を見ながらコーヒーを飲む。
「マスター、これすごく美味しいです。マスターも……どうですか?」
ルーフィはそう言って少し顔を紅潮させながら、パフェが盛られたスプーンをヴァイスへと差し出してくる。
「あ、ルーフィったらずるーい! 私も私も! はいマスター、あーん♪」
そう言ってティートが負けじとパフェを乗せたスプーンをヴァイスに差し出してきた。ヴァイスはそんな二人の態度に困惑を隠せず、おもむろに席を立った。
「ちょ、ちょっとトイレ……」
ヴァイスは二人を残してトイレに向かうと、「はぁ……」とため息をついた。ヴァイスは正直なところ二人とどう接すればいいのかあまりわからなかった。確かに二人を寄生生物に変えたのは他ならぬヴァイス自身ではあったが、このように普通の女の子のように接してこられるのは予想外であった。
(悪い気はしないが、なんというかむず痒い感じがする……。特にあのルーフィがここまで積極的だとは……)
ルーフィは普段は真面目だったが、時々急にヴァイスに積極的になるときがあり、ヴァイスはそのギャップに対処しきれないでいた。
(くっ、これも寄生生物マスターになるための一種の試練ということか。ならばひたすら慣れるのみ……!)
ヴァイスはそう心に決めると、二人が待っている席へと戻った。相変わらず二人はきゃっきゃと仲良く話しており、ヴァイスが戻るとまた「はい、あーん♪」攻撃を始めるのだった……。
「――それではマスターはこれからエスティ姉の攻略に向かうのですね?」
「ああ、そうだ。二人はここに残ってできるだけ教会内部に『仲間』を増やしてくれ」
ヴァイスはそう言った。ヴァイスはイザリアは最後に攻略しようと考えていたため、次のターゲットは必然的にエスティナになった。王国や王女であるオヴィリアを先に掌握するという手もあったが、ヴァイスとしては隣国にいるというエスティナの動向がより気になっていた。戦力的にはティートとルーフィを連れていきたいところだったが、ルーフィに聖女という役割がある以上、二人を連れて行くわけにはいかなかった。
「了解しました。……エスティ姉は少し頭が足りないところがありますが、ああ見えてかなり強いです。マスターが遅れを取るとは思わないですが、どうか油断だけはなさらないでください」
「わかった。何かオススメの作戦とかあるか?」
「そうですね……やはり何らかの『罠』を仕掛けて誘い出すのがよいかと。頭が悪いので簡単に罠に嵌ってくれると思いますよ?」
ルーフィはそう言って紅茶に口を付けた。ヴァイスはルーフィって結構毒舌だよなと思った。
「エスティナ様って結構武闘派なところあるもんね~。たまに勘も鋭いところがあるし、正面から行くのは得策じゃないかも?」
ティートが言った。
「味方だと微妙に頼りないけど、敵だと厄介になる典型例って感じね。でもエスティ姉がこちら側にいるだけで、イザリア姉様は相当攻略しやすくなると思う。そういう意味ではエスティ姉を先に攻略するのはとても大事」
「イザリア様ってそんなに強いの?」
「強い。大聖女の名は伊達ではないわ。寄生生物になった私とエスティ姉でも相手になるかどうか……。聖女としての力は私たち姉妹の中で最も強く、強力な神聖魔法を使い、近接戦闘にも慣れている。頭もすごく良くて策略も得意。マスターを異端者として吊るし上げる計画ももともとはイザリア姉様が教皇様に提案したもの。イザリア姉様だけには絶対に寄生生物の存在を知られてはならない」
ヴァイスはそれを聞いて自分が追放された1年前のことを思い出した。やはり全ての元凶はイザリアだったか……。だがそれでこそ、篭絡のしがいがあるというもの。ヴァイスはイザリアが自身に屈服する姿を想像して、胸が高鳴るのを感じた。




