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【第50話:は?帰るわけないじゃん!全員まとめて一生アゲてくよ!】

ついに最終回、第50話です!

現代への光を蹴り飛ばし、江戸に永住することを決めたギャル女将。

仲間たちとの最高のハッピーエンドと、彼女が全うする伝説の生涯を、

どうぞ最後まで見届けてください!

眩しく激しく波打つ謎の光の塊が、旅籠の裏庭の竹林の青葉を妖しく、そして神秘的に照らし出していた。さらさらと揺れる竹の葉が、

光を浴びて不気味な影を畳の上に落としている。


 私の頭の中に、今なお濁流のように直接流れ込んでくる、

あの懐かしい令和の東京のノイズ。


スマートフォンのリズミカルな電子音、絶え間なく行き交う車のクラクション、

そして渋谷のスクランブル交差点を渡る何千人もの人々の喧騒が、

私を元の世界へと激しく、激しく誘い続けている。


今この光の中に一歩足を踏み出せば、

瞬時にあの便利で安全な現代へと戻れるのだ。


 しかし、私の目の前では、料理人のきよが地面に崩れ落ちて大粒の涙を流し、

チーフのボスをはじめとする元博徒の用心棒たちが、

子供のように顔を真っ赤にして大号泣していた。


そして、白髪のおじいちゃん主人が、

今にも私の袖を掴みそうなほどに震える手を伸ばしながら、

悲しげに、しかし私の幸せを祈るように虚空を彷徨わせていた。


 誰もが、私がこのままあの光の彼方へと消えてしまうのだと絶望し、

下を向いて肩を震わせている。

その圧倒的な静寂と悲しみの空気が裏庭を満たした、まさにその時だった。


「ふふっ……あははは! 

ちょっとみんな、ガチで何そのお通夜みたいな顔! 超ウケるんだけど!」


 静寂を木っ端微塵に切り裂くように、私はフッといつも通りのサバサバした、

突き抜けるように明るい笑顔を浮かべた。


 そして、驚きに勢いよく顔を上げたみんなの視線の目の前で、

激しく明滅し、この世のものとは思えない音を立てて空間を歪めている

眩しく輝く異界の光の渦へと、迷いのない足取りでツカツカと歩み寄ると――。


「えいっ!! こんなダサい光、ウチの現場(ここ)にいらないから!」


 私は思い切り、いつも履いている厚底の木履で、

その光の渦の真ん中をバシーンと豪快に蹴り飛ばしたのだ。


キィィィン……と、厚いガラスが木っ端微塵に砕け散るような、

あるいは未知の光が悲鳴を上げたような奇妙な高音が夜の裏庭に響き渡った。


次の瞬間、激しかった空間の歪みは、

まるで朝霧が風に吹かれて消え去るかのように一瞬にして綺麗に霧散し、


裏庭には、いつも通りの静かで心地よい江戸の夜の闇と、

さらさらと静かに鳴る竹林の静寂だけが、何事もなかったかのように

戻ってきたのだった。


「お、お咲ちゃん……っ⁉」


「あ、姉御ォォォ⁉ 

いま、お国へ戻る神聖なお光を、厚底で思いっきり蹴っ飛ばしやしたか……っ⁉」


 あまりの衝撃的すぎる光景に、さっきまで涙を流して慟哭していた全員が、

文字通り鳩が豆鉄砲を食ったようなマぬけな顔をして

、顎を外さんばかりに驚愕している。


私は腰に両手を当てると、

そんな彼らの表情をガハガハと盛大に笑い飛ばしてみせた。


「は? 現代に帰るわけないじゃん! 

ウチが、せっかくここまでガッツリ愛してバイブス高めてアゲてきたみんなを置いて、

一人で令和に帰るわけないっしょ! ウチを誰だと思ってんの?」


「お、お咲ちゃん……! 

しかし、あの光の向こうには、お前のいた便利で何でも揃う

楽しい世界があったのじゃろう……? 

ここに残れば、不便なことも多いというのに……」


「スマホがなくたってさ、ウチの最高の現場(居場所)はここなんだから! 

令和の東京より、ウチはこの丸米屋が、

この宿場町のみんながマジで世界一ハッピーで大好きなの! 

だからさ、これからも全員まとめて、私のバイブスで一生アゲてくよ!」


 お咲のその突き抜けるように明るい、

そして何よりも深く温かい愛に満ちた宣言が、夜の裏庭の隅々まで響き渡った。

その言葉の本当の意味が全員の脳に届いた瞬間、


従業員たちも、元博徒の用心棒たちも、おじいちゃん主人も、

全員が「うおおおおおおん!」と地鳴りのような歓喜の声を上げて、

私に向かって一斉に弾丸のように飛び込んできたのだ。


「姉御ォォォ! 

やっぱり俺たち、一生、いや来世まで姉御ついていきやすゥゥゥ!」


「お咲ちゃん、ありがとう、本当にありがとう……っ! 

丸米屋の女将は、アンタしかいないわ!」


「拙者も、この命がお咲殿のためにあることを、

今改めて確信いたしましたぞ!」


 チーフのボスは鼻水をボロボロと垂らしながら

私の小袖の袖にがっちりとすがりつき、


きよと佐助は私の両手を骨が軋むほどの力で固く握りしめて涙を流し、

おじいちゃん主人もまた、シワだらけの顔をくしゃくしゃにして笑いながら、

大粒の嬉し涙を次々と零していた。


漆黒だった丸米屋の裏庭は、いま、これまでにない温かい嬉し涙と、

満開の最高の笑顔で満たされていた。


私はみんなの頭を「よしよし、泣き虫ばっかりじゃん!」と

笑顔でポンポンと優しく、かつ力強く叩くと、

腰のタスキの紐をキュッと不敵に、そして力強く締め直した。


「よし! いつまでも泣いてる暇ないよ、みんな! 

大広間では、お上のお侍さんたちもお客さんたちも、

ウチらのおかわりを首を長くして待ってんだから! 

天下第一の旅籠の玄関へ、バイブス最高潮でアゲアゲで行くよ!」


「へいっ!! 合点だ!!」


 私の大号令に、宿場町のみんなが腹の底からの力強い声で応える。

私は大切な、かけがえのない『家族』引き連れて、

まばゆい色彩和行灯の灯りが待つ賑やかな表舞台へと、

意気揚々と、誇らしげに歩みを進めるのだった。


 ――それから、数十年という長い、長い月日が流れた。


 おじいちゃんの残した旅籠『丸米屋』は、

あの激動の夜を境にさらに爆発的な繁栄を続け、お咲の築き上げた宿場町は、

お上の厳格な法度すらも書き換えた日本一の「至福の宿場町」として、

東海道の歴史にその名を永遠に残すこととなった。


身分の壁もなく、誰もが笑顔で調和する奇跡の街として。

 かつての瑞々しかった長い髪には、今や美しい白髪が

綺麗に混じるようになっている。


それでも、目が覚めるように鮮やかな色彩の派手な小袖を粋に着こなし、

誰よりも元気で豪快に笑う「伝説の大女将」となった私の姿が、

丸米屋の麗しい縁側にあった。


「おばあちゃん! 今日も美味しい御膳をたくさん作ったよ! 味見して!」


「大女将、全国の爆速ルートから、

今朝一番の最高の白味噌と大坂の鯛が届きやしたぜ! 

今日も仕入れは爆速でさぁ!」


 私の周りには、すっかり老いて白髪頭になりながらも

元気に十手を磨いているチーフのボスや、腰の曲がった佐助、きよの面々。


そして、奥の床の間で優しく微笑むおじいちゃん主人の立派な遺影。

さらには、私を慕って集まった、たくさんの可愛い孫やひ孫たちが、

縁側の周りに賑やかに群がっている。


身分も、時代も、世界の壁すらもすべてを底抜けに明るい気風で

ひっくり返してきた私の人生。


夕暮れ時の優しいオレンジ色の光が宿場町を温かく包み込むなか、

私は縁敷きの上で、集まった大好きな家族たちに囲まれながら、

ふぅ、と深く、大満足の息を吐き出した。


そして、昔と全く変わらない無敵のギャルスマイルを咲かせると、

皺の刻まれた右手の親指を、グッと高く、天に向けて力強く立ててみせたのだ。


「ヤバっ! 

マジでウチの人生、最初から最後まで最高にアガりっぱなしで超楽しかったわ!」


 満足げにそうポツリと呟くと、私は穏やかに、そして深く、

幸せな眠りにつくようにそっと目を閉じた。


大往生を遂げた伝説のギャル女将。

しかし、彼女の残した、誰もが笑顔で調和する「至福の心意気」は、

丸米屋の暖簾に、そしてこの江戸の未来の国境へと、

永遠に、受け継がれていくのだった。

全50話、完結いたしました!

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

皆様の応援のおかげで、ギャル女将は最高の伝説を残せました!

また次の作品でお会いしましょう!

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