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第十三話 信用

「……アルト・フェルナー…?」

王都正門前、書状を神聖騎士に見せる。

その反応に尋問官だった俺が反応する。

「…瞳孔が開いた。」

「当たりだな。」

騎士は慌てて態度を取り繕い、上官を呼びに行く。

軍師だった俺が、尋問官に続く。

「泳がせろ。」

「末端を詰めても効果がない。」

「誰へ報告するかを見ろ。」

やがて現れたのが、神聖騎士団副団長レイヴァン。

礼儀正しく、穏健派そうにみえる男だ。

「アルト・フェルナー殿ですね。」

「お待ちしておりました。」

基本から寸分違わぬ角度で頭を下げる。

そして、握手のために差し出された手をアルトは取る。

しかし、その瞬間に尋問官でもないアルトでも気づく。

「目線が…揺れた?」

頭の俺たちが一気に話し出す。

「脈が上がったな。」

「呼吸をよく見ろ、一瞬止まっただろ。」

「まだ甘い。」

アルトは確信する。

レイヴァン…温和そうに見えるが、俺が死んだと思っていた側だ。

「こいつの前は歩くな、背中から刺されるぞ。」

「こういうのは、大体怪しい。」

「もしかしたら、人質を取られている可能性もある。」

頭の中でもレイヴァンを信用するか、意見が割れていた。


ーーーーーーーーーー


正門を通る前に、離れた所で待っていた商隊のオヤジに挨拶をしようと歩み寄る。

商隊のオヤジさんが少し悲しそうな顔をする。

「お前、あいつは副団長のレイヴァンだ。」

「あと、あと書状の印、王政が正式に発行したのものだ。」

「なぁ…なんでホントのことをいわなかった?」

その言葉に、俺は思わず俯く。

「俺が危険だと知ったら、オヤジさん…どうしてましたか?」

腕を組み、目を閉じ、少し考えるオヤジさん。

「お前を置いてはいけねえ。」

「俺を助けるために、商隊全員を危険に晒したかもしれない。」

「苦渋の決断をさせたくなかったんです。」

「それに、無関係なオヤジさんたちを極力巻き込みたくなかった…から…それで…。」

天を仰ぎ、オヤジは深く息を吐いた。

オヤジの真剣な眼差しが俺を捉える。

「なるほど、お前の考えはわかった。」

「だがな、誰を乗せるか決めるのは、商隊を預かる俺の仕事だ。」

「俺は、お前を乗せた。」

「その時に何者であっても、王都まで届けると思った。」

「どうして…?」

「俺が、商人だからだ。」

「商人は信用が第一、途中で放り出さない。」

「だから、お前を観察し、値踏み、信じて乗せた。」

「お前は、俺を信じてなかったのか…?」

俺は返す言葉を失い、目を伏せる。

「お前はまだ子ども、勝手に俺の責任まで背負うんじゃねえ。」

「検問の時もお前、一人で戦ったな。」

俯く俺の頭の上に大きな手が乗り、乱雑に髪をグシャグシャにする。

「商人に隠し事は通じねぇ。」

「俺は知ってる。」

「お前が、襲った相手を殺さなかったのも。」

「お前の優しさも。」

「お前は…強くなる。」

顔をあげて商隊のオヤジさんを見る。

子どもの成長を楽しみにするような、親の眼差し。

そして、懐を探り、小さな木札を俺へ差し出す。

そこには、商会の紋章が彫られている。

「俺たちの商会の印だ。」

「王都で困ったら、その札を見せるといい。」

「どいつも、話くらいは聞いてくれる。」

目下、俺は狙われる立場にある。

オヤジさんにこれ以上迷惑はかけられない…

口を開こうとしたその時。

「断るな。」

先を読んだオヤジに先制される。

「お前は、俺を巻き込みたくない。」

「だが、俺はお前を放っておきたくない。」

オヤジさんがニッと笑った。

「なら間を取って、困った時だけ頼れ。」

「この木札は貸すんじゃねえ。」

「勇敢に戦った、お前への信用だ。」

「こんどこそ、信じろよ。」

渡された木札を、拳で深く握り込んだ。

ーーーーーーーーーー

オヤジと別れ、正門へ戻る。

「お待ちしておりました。」

レイヴァンは相変わらず穏やかに笑っている。

だが、道化師だった俺が笑った。

「いい笑顔をしている。」

「死人を見た直後とは思えないねぇ。」

「では、行きましょう。」

レイヴァンが俺の少し前を歩き出した。

商人からもらった信用を懐に。

誰を信じていいか分からない街へ踏み込んでいく。

神聖騎士団副団長のレイヴァン。

こいつは敵か、それとも…。

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