断章 6
「誇っていい。お前は、すごい奴だ。そして、お前は、俺を救ってくれた。
心から礼を言う。
ありがとう。
お前に敬意を表する。」
祝杯のエール。たったの3杯で無防備につぶれている、シュレッター。あるいはMark127を見ながら、ひそかに忍ばせていた1916製のウィスキーのボトル。その一部を切り取ってきた錫製のスキットル。その封、切る。
滑らかに中蓋が外れると、その時を待っていたかのように、濃厚な酒精の匂いが、部屋に充満した。
ゆっくりと、杯を傾けた。オーク樹の残り香が、酒精の匂いを上書きしていく。ショットグラスに注がれるそれを見る。琥珀の色は、黄金にも負けずに輝いている。
思えば、俺たちの最初の印象は最悪だったと思う。
だが、そうなのだ。最初にである兵士たちの印象。そのすべてが、最悪なのだ。
良い出会いなど望むことなどない。
それは、敵であれ。
それは、味方であれ。
等しくある。
それの通りに、お前との出会いは、最悪だった。
嗤えるほどに。そう、哂ってもいいほどに。
最悪だった。
朝霧の。そう、少し機嫌よく起きられた朝に現れた。
しょぼくれて。
自信を失い。
こんなはずではにと自己欺瞞を行う。
M16の構成員。
それがお前だ。
お前なのだ。気持ちのいい朝に、爽快な空ではなく、まだ霧の漂う方を向きながら粋がる。
滑稽で無様なことな。そう、お前だ。
お前は、紳士としても工作員としても……MI6としても、不合格。それが、俺の下した最初の判定だった。
だが、前回MI6試験の最優秀能力者。期待はしているという、あの石頭の円卓。その代表のストーカー兼副代表代表が話しそうもない言葉を聞いて、その意外性に驚いた。
そして、実際に、2か月も過ごしてみれば。
おれは、お前が、過去の俺を思い出すに相応の人物だと感じた。あの頃の、純粋な思いと。最低な戦場で、お互いを信用するな。疑えば撃てと言われながらも、肩を寄せ合い、最期まで撃つに撃てなかった2人。
似ていなくても、よく似ていた。
あいつの元で、俺は成長できて……おれに成れた。
ならば。こいつは、おれの元で成長させないといけない。
お前は――あるべき姿に戻るのだ。
その姿を見極めることが、おれの最後の希望になる。
幾多の困難と、難問。それが、立ちふさがった。
「お前は。お前になるのだ。そう、お前のあるべき姿へと戻れ。」
ゆっくりと強い酒精が喉を通った。
灼けるような咆哮が鼻腔を伝い、得も知れぬ夜を作り出す。
そう、この瞬間におれは、確かに得た。
ならば、騎士は……死よりも深き、醒めぬ夢の中に微睡むとしよう。
スキレットを友のように抱きしめると、ブランケットをマントのように包み込んだ。
あの塹壕の中では味わうことのなかった皆の声が聞こえる。暖炉の残り火の暖かさと胸の前で、ゆっくりと体温で温まっていくスキレットが教えてくれる。
お前は、そして、おれは間違えてなどいない。
そうだろ?
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