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赤眼の吸血鬼  作者: カエルオオカミ
人ならざる者
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冒険者組合への訪問者

セリオン王国ーー冒険者組合(ギルド)、執務室にて...




「何?吸血鬼(ヴァンパイア)が出た?」


「はい...先ほどピロー大森林から帰ってきた銅級冒険者の方々がそう言っていました。」


それを聞くと、ギルドマスターのリオルは深いため息をつく...。


「どうせ大きな情報をギルドに流して、それで点数を稼ごうとでも思っている奴らだろう。最近はそういう奴らが増えて困ったもんだ...。」


というのも、冒険者は依頼をこなす他にも、各地の探索により有用な情報をギルドに仕入れた場合も冒険者としての評価につながるのだ。

そのため、それを利用し嘘の情報で評価をもらおうとする輩もいるのだ。


しかし...嘘ならもっとうまくついたらどうなんだ。

ピロー大森林に吸血鬼(ヴァンパイア)など...そんなことは過去一度もない。

吸血鬼(ヴァンパイア)にとって生命線でもある人間の血を、森では得ることが出来ないのだ。

もし、森に住み着くもの好きがいるのであれば、是非見たいものだ...。


「それで?

一体どこの馬鹿だ?そんな誰でもわかるような嘘を吐く奴は?」


それを聞いたギルド職員は、言いにくい様子でしばらく黙っている。

そして、しばらくの間の後...。


「.....トムさんです。」


「....何!?」


トム...その名前を聞いて思いつくのは一人しかいない。


トム・ニコラス。

ちょうど一年前に冒険者になり、一つのパーティーのリーダーをやっている男だ。

冒険者が数いる中で、なぜこの男がすぐ思い浮かんだのか...。

それにはいくつか理由がある。


一つに、彼の率いるパーティーは一年前に冒険者になったばかりというのにもかかわらず、次々と依頼をこなし、ベテランの冒険者にも引けをとらない、この冒険者組合(ギルド)においてのちょっとした有名人であるためである。

しかし、新人でありながら頭角を現している冒険者は他にもたくさんいる。

ゆえに、この男にもう一つの点において、リオルの注目をおいているのだ。


それは、彼の情報網の広さである。

どこから仕入れてくるか分からないその情報は、ギルド内でも職員の一部にしか知られていないものもある。

その証拠に、ちょうどいまギルド内で話題になっているピロー大森林における魔力風の到来。

その情報もすでに彼は仕入れていたようだ。

そのためいち早く森へ向かったことを聞いていたが...。


「随分と帰りが早いな...。」


そうリオルが言うと。


「やはり今回の魔力風の影響か、依頼内容の魔草がすぐに集まったようです。」


そういうことか...。


それにしても、先ほどの話...。

とても、情報通のトムが嘘をつくなどとは思えない。

そんなことをしなくても彼は有用な情報をいつも手に入れているからだ。


とはいえ、流石に吸血鬼(ヴァンパイア)が出たという話は信じられない。

だが、別の可能性はある。

今回の魔力風は、今までのものとは明らかに程度が違う。

魔力風により、今までも何度か魔草が大量発生したことはあったが、それでも見つけることは難しく、銀級冒険者でも数日はかかる。

それを銅級のトム達がこんなにも早くとってきたことを考えると...。


「やはり...森の調査をしたほうがよさそうだな。」


冒険者組合(ギルド)全体に、ピロー大森林に魔力風が来たという情報は伝わっている。

すでに多くの冒険者たちが森へ向かっているのだ。


何か強力な魔物が別の地からやってきた可能性もある。

そう考えれば、トム達はそれを吸血鬼(ヴァンパイア)と間違えたともとれる。

吸血鬼(ヴァンパイア)と他の魔物を見間違えることなどそうそうないのだが...。


とにかく調査をしてみればわかることだ。

まだ知られていない魔物だってかなり多く存在しているのだ。


問題は、誰に調査に行かせるか...。

ただでさえ危険なあの森に今は魔力風がある。おまけにそれはかなり強力なものだと思われる。

並みの冒険者ではあまりに危険すぎる。銀級冒険者であってもかなりの危険が伴うだろう。

となれば、それ以上の冒険者が必要となるわけだが...。


幸い、その点については解決している。

そうして、冒険者組合(ギルド)の扉が勢いよく開けられる音がした...。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





「やっぱり誰も信じてくれないね...。」


そう話すのは、トム、ディーンとともに、ピロー大森林から戻ってきたところであるレナ・ソフィアである。

レナはため息交じりでそう話すと...


「当然といえば当然だな....。

 吸血鬼(ヴァンパイア)が出たなど...あまりにおかしな話だ...。」


「でも!

 実際に私たちが見たのは確かだよ!?」


そうレナが言うと、少し苛立ちながらトムがやってくる。


「全く話の分からない奴らだ!このトム様の話を信じないなんて...。」


「まあ落ち着けよ...。仕方ないことだ。」


「これが落ち着いていられるかよ!みんな俺の話に大笑いだ!

 いつも俺の情報を頼ってくるくせにだぞ?」


トムはそういいながら、壁を蹴り飛ばす。


「仕方ないよ。私たちはまだ銅級なんだから...。銅級冒険者の言うことなんてそんなに重要視されないんじゃないかな?」


「これはこの国の存続にもかかわる問題だぞ!?ギルドマスターに話を通すように言ってくる!」


「おい!待てよトム!一回落ち着けって!」


再び受付窓口(ギルドカウンター)へ向かうトムをディーンは急いで止めようとする。

その時、冒険者組合(ギルド)の扉が勢いよく開けられる。




「よう。随分と暴れてるじゃないか?トム。」


そうして開かれた扉の前に立っていたのは、金属の鎧に身を包んだ茶髪の大男である。

その顔には、たくましいあごひげが生えており、背中には巨大な大剣を背負っている。

いかにも戦士といった風貌である。

そして、その脇からさらにもう一人、小柄な男が現れる。


「全く...。そうやって勢いに任せた行動は慎むべきですね。魔物との戦いにおいて、それはチームワークを崩す原因となる。この馬鹿のようにね。」


その男は、どちらかというと青年、といった大男とは対照的な風貌である。

全身を暗い緑のローブに身を包み、大きな杖を手にしている。

そしてその顔には、大きめの黒縁メガネをつけている。


「おい!まさかその馬鹿ってのは俺のことじゃないだろうな!」


「そのまさかですよ。ウィルディアが一緒でなければあなたとパーティーを組むなど考えませんでしたからね。」


そしてこの二人は冒険者組合(ギルド)の扉の前で言い合いを始めた。

それを呆然とレナは見つめている。


「一体なんなんだ?あの二人は?」


ディーンが呆れたように言うと。


「もしかして...ジオンさんか!?」


トムが驚いたようにそう叫ぶ。

その声に気づいた大男は、トムの方を振り返ると。


「おう、やっぱりトムだな。お前は相変わらずだな。」


そういうと、言い争っていた小柄な男を無視して体をトムの方を向ける。


「トム?知り合いなのか...?」


ディーンはそうトムに尋ねる。


「あぁ、言ってなかったか?あの人は、俺に冒険者の基礎を教えてくれたジオンさんだ。

 ちなみに今は...金級冒険者だったか?」


「き....金級!?」


呆然と様子を見ていたレナが驚きの声を上げる。


「金級冒険者というと、国全体で見てもかなり大きな戦力だ。

 各地に散らばっていると聞いたが...。」


そう。

ここは確かに多くの冒険者が集まるセリオン王国の冒険者組合(ギルド)

とはいえ、数ある冒険者組合(ギルド)の中の一つに過ぎない。セリオン王国はその冒険者の規模ゆえに、冒険者組合(ギルド)も各町にひとつづつ...という単位で存在しているのだ。

それに冒険者組合(ギルド)があるのはセリオン王国だけではない。


そのため、そんな冒険者組合(ギルド)の一つに金級冒険者がわざわざやってくることは少ない。

多くは王都の冒険者組合(ギルド)に集まっているか、高難度の依頼のために危険な地に行っているなどだ。


「ああ、その話か...。」


そうジオンは言うと続ける。


「まあ俺たちもちょうど長期の依頼の最中だったんだが、ここのギルドマスターに呼び出されてな。俺はここ出身の冒険者だし、トムが冒険者になったって話も聞いてたからな。一度来てみることにしたんだ。」


「全くです。依頼を放り出してわざわざこんな田舎の冒険者組合(ギルド)に来るなど...。」


「お前はちょっと神経質すぎるぞクレイブ。少しは俺みたいにだな...。」


「あなたのようになるなど...。私は猿に堕ちる気は毛頭ありません。」


「誰が猿だ!!」


そして再びジオンとクレイブの二人は言い争いを始める。


「なんだか...にぎやかな人達だね...。」


「あぁ...この人にトムが教えられたと思うと...なんだか分かる気がするな...。」


レナとディーンは二人とトムを交互に見ながらそう話す。


そんな二人の様子をまるで気にしないようににぎやかな様子の冒険者組合(ギルド)内。

常に冒険者たちの景気のいい話...ギルドへと不満など、様々な感情の渦巻くこの場所では、この二人の言い争いなど背景の一つに過ぎないのだ。


そんな中、受付窓口(ギルドカウンター)から一人の男が現れる。

めったに執務室から出てくることのないギルドマスター、リオルである。

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