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赤眼の吸血鬼  作者: カエルオオカミ
人ならざる者
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竜との激突

そこにいたのは、他の竜とは一回り大きく見える緑色の竜である。


他の数百いる竜たちは、皆、青みがかかった体の色をしているのだが...この竜はどす黒い緑色である。

ちょうど、この竜は邪悪さの権化のような見た目である。

そしてその瞳は赤く、明らかに穏やかではない。


この竜のほかに、青い竜以外の種類の竜がいないところを見ると、この竜も私と同じように外からやってきたのかもしれない。

とすれば、私とこの竜はかなり奇跡的な運命の巡りあわせである。

ここにきて、再び私の運の悪さが露呈し始めてきている...。


この竜は、他の竜に比べると魔力が倍以上ある。

それでも私には及ばないのだが、ちょうど私は大規模魔法を使ったばかりであり、魔力が半分程度しか残っていない。

そしてこの竜の敵意丸出しの様子を見る限り、戦わざる負えないだろう。

しかし、できれば戦いたくないところだ。


私は何とか逃げる方法はないか考える...。

私がここに来るまでに歩いてきた穴の出口はすぐ近くにあるのだが、あいにくその前に立ちはだかるようにこの竜がいるのだ。

どうにかして、この竜の注意を逸らせれば...。


「!?」


竜の尻尾が私のすぐ横まで迫ってきていた。


咄嗟に、私は体を反らせてそれをかわす。

私のすぐ目の前を竜の強靭な尻尾が横切る...。

あと少し反応が遅れていれば直撃していただろう。


今までの魔物との戦いでは、こんなことにはならなかった。

別に油断していたわけではない。

この竜の動きがとてつもなく早いのだ。

先ほどの尻尾の攻撃も、肉眼でとらえるのがやっとだった。


私は仕方なく右目の能力を使うことにした。

これが吸血鬼(ヴァンパイア)特有のものなのかは分からないが、私の右目は簡単に言うと...よく見える。

このように肉眼でとらえられない動きも、能力を発動している間は見えるようになる。

他にも魔力の流れが、視覚的によく見えるようになったりする。


私がこの能力を常時発動していないのは、見えすぎるので疲れる...というのもあるのだが、どうやらこれを発動している間はかなりの魔力を消費する。

今の私は半分程度の魔力しか残っていないのであまり使いたくはないが、竜の攻撃に直撃してバラバラにでもなったら冗談ではない。

そう思うほど、先ほどの攻撃は重く見えた。


そして再び竜が動き出す。

今度は私に向かって突っ込んでくる。すさまじいスピードで、おそらく肉眼で見ていたら、突然消えたように見えたかもしれない。


しかし、今の私はその動きが見える。

竜は翼と一緒になっている前足を振り上げると、こちらに向かって勢いよく振り下ろしてくる。

私はそれをギリギリでかわす。

かなりのスピードの攻撃なので、大きく避けるとなるとかなりの力が必要なのである。

なるべく力を消耗したくなかったので、ギリギリで避けたのだが...それが間違いだった。


振り下ろされた前足は地面にめり込み大地を揺るがす。

私の足元の地面にもひびが入り、私はバランスを崩す。

それを狙っていたかのように、竜はもう片方の足で攻撃の構えに入る。

私は素早く魔法を発動する。


喰溶波(メルト・ウェーブ)!!」


私の周囲に複数展開した魔法陣から赤黒い液体が大量に流れ出すと、まるで生きているかのように竜の顔面に直撃する。

この魔法は喰溶(モス・メルト)を、攻撃用に改良したものではあるのだが...作ったはよいものの使う機会がほとんどなかったのである。

というのも、一般的な森の魔物であれば喰溶(モス・メルト)で跡形もなく溶けてしまうので、わざわざ魔力を多く消費する喰溶波(メルト・ウェーブ)を使う必要はなかったのだ。

しかしこの竜は、喰溶波(メルト・ウェーブ)が直撃したにもかかわらず外鱗はほとんど溶けている様子がない。


だが、これは想定済みである。

竜の外鱗の防御力の高さはある程度想像していた。

だからこそ、私は竜の顔面目掛けて攻撃を仕掛けたのだ。

狙い通り、竜は目に強力な溶解液が入ったらしくもだえ苦しんでいる。


今のうちに...!!


私は勢いよく地面を蹴って、穴に向かって飛び出す。

かなりの勢いのために私の体は地面にかなり近い位置を低空飛行する形になる。

そして、もう一度地面を蹴ろうと足を踏みこもうとしたとき...



ある違和感を感じた...。



地面に足がつかない...。


そう...

私の踏み込もうとした方の足は、足の付け根から何もなくなっていたのだ。

今の私は翼が使えない...。

そのため、宙に浮いたしばらくの間、私の体はまっすぐ飛んでいくだけになる。

その間に、竜の放った攻撃が私の足に直撃したのだろう。


踏み込む足を失った私は地面に倒れこむ。

足とともに、ドレスの半分もなくなっていた。

もげた足の付け根から鮮血が流れ出す。

しかし、痛みは一切感じない。

これに関しては、今までも何度か経験があることだ。

そして、私の体はすぐに再生する...はずだった。


考えれば、こんな状況にも関わらず、私が冷静でいたのはそれがあったからなのかもしれない。


足の再生が遅い...。

この感覚は、日の光により翼が焼けこげたときにも感じたものである。

しかし、今の私の翼はローブにより守られている。

だとすれば....ほかの理由はすぐに考え付いた。


魔力である。


大規模魔法の使用に始まり、竜との戦いの中でも魔法を使い、さらに私は常時右目の能力を使っていた。

かなり魔力は消費しているはずである。


魔力は、生命の源...。

その魔力が少ない状態だと、再生が遅くなるということが起きてもおかしくはない。

心なしか、先ほどから体がだるい...。

竜は先ほどの攻撃による痛みも引いたらしく、再びこちらへ向かってくる。



ヤバい...。

本格的に不味い...。

目覚めてより初めて身近に感じる死という感覚。

痛みはなくとも、それ以上に心に余裕がない。


あと少し...。


穴まではあと少しなのだ。

あの竜の大きさであれば簡単には穴には入っては来れないだろう。

何とか私は地面を這い、穴へと向かっていく。

しかし肉眼でとらえられないほどのスピードを持つ竜からそれで逃げ切るなど無理な話である。


別に何も打つ手がないというわけではない。

ただし、私がただで済まない可能性が高い。


それは、もう一度大規模魔法を使うというものである。

もちろん、魔力をかなり消費した状態なので先ほどの威力で...というわけにはいかない。

とはいえ、私が逃げる隙を作るには十分だろう。


問題は、魔力を残らず...

すべて使い尽くしてしまうということである。

すでに魔力を半分以上消費しているのだが、今の状態でもかなりつらい。

魔力をすべて失ったらどうなるか、など見当もつかない。


ただ考えている余裕は今はないのだ。

すでに竜は攻撃態勢に入っている。

口を開いて、息を吸い込む....

その口にはかなりの魔力が集中している。

ブレスである...。


私はすぐさま魔法の発動準備に入るため、残りの魔力をすべて放出する。

そして、全身に魔力を纏い、魔法陣を展開しようとしたとき...。



ふと、竜の動きが止まる...。


そして、集中していた魔力は拡散し、苦し気にあとずさりをする。

私の目に入ったのは、赤い線。

それは、私の周囲を網目状に包むように広がっている。

いくつにも枝分かれをしており、そのうちの数本が竜の喉に突き刺さっている。

その赤い線には、なんと私の魔力が流れているのである。


何かと思い、私のもげた方の足を見ると...。

そこに広がっていた血だまりはなくなっており、代わりにいくつもの赤い線が伸びている。


そう...

これは全て、私の血なのである。

私の魔力が流れているためか、自由に動かすことが出来る。

おそらくは、全身に魔力を纏った際に流れてしまったのかもしれない。

結果的にそれはよい方向に転んだわけだが、まさかこんなことまでできるとは思わなかった。


竜はまだ苦しんでいる。

竜に刺さっている血は、細い針のようになって突き刺さっている。

あの硬い竜の外鱗に刺さるということは、かなりの硬度があるということだ。

どう考えても血とは思えないのだが....。


ともかくこのチャンスは逃すわけにはいかない。

日中ではあるが、そんなことは言っていられない。

私は、残り少ない魔力を自分の翼に流し込む。小さく折りたたんでいた翼が勢いよく広がったため、ローブがはだけ、私の翼は日にさらされる。


再び感じる焼けるような感覚...

と同時に、私はすさまじい勢いで穴へ向かって飛んでいく。

後ろから竜も血の針に苦しみながらも追いかけてくる。

しかし、全速力で飛ぶ私には一歩及ばない。


それにしても、何度か経験済みではあるがすさまじいスピードである。

少ない魔力にもかかわらず、あれだけ速く感じていた竜のスピードよりも速い。

ただし制御が効かない...。

すでに魔力が残り少ない私は、もう右目の能力を使っていない。

竜のスピードも肉眼ではとらえられなかったのだ。

それより速い今のスピードが見えるわけがない。


何度か壁にぶつかり、ジグザグと穴の中を進みながらも、何とか私は元の穴の入り口まで戻ってくることに成功したのだった。

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