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赤眼の吸血鬼  作者: カエルオオカミ
人ならざる者
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竜の楽園

私は集落の中心の一番大きな家で、サビ様と話していた。


「一体ヴェルドはどういうつもりなのやら...。わざわざあの吸血鬼(ヴァンパイア)と人間の国に行くなど...。」


というのも、ウバラ様が亡くなられてより後...あの吸血鬼(ヴァンパイア)が、今度は人間の国に行くということを言い出したのだ。

人間についてウバラ様に尋ねていたことからも察しがついていたが。いざ実際にそうなると、今後どうなってしまうのやら...。


吸血鬼(ヴァンパイア)は人間にとって、まさに天敵のような存在なのだ。

人間よりも圧倒的に多い魔力を持ち、おまけに食糧として人間の血しか飲むことができない。

あの吸血鬼(ヴァンパイア)が人間の全く訪れない森にいたことを考えると、人間の血しか飲むことができない...というのは間違っているのかもしれないのだが、それでも人間の血を好んで飲むのは間違いないだろう。


そうしてヴェルドがその吸血鬼(ヴァンパイア)についていくとまで言い出す...。

そうする義理はもちろんないはずである。何しろ、ヴェルドは自分から行くと言い出したとも言っていた。

おかしな話である。

わざわざ自分の身を危険にさらすようなことをするなど...。

そういったことも考えて言った言葉だったのだが、サビ様はそれを聞いて答える。


「あなたは心配症すぎます。あの吸血鬼(ヴァンパイア)なら、むやみにヴェルドを危険にさらすようなことはしないでしょう。」


「そんなことを言う根拠はどこにあるのですか?どうであれ吸血鬼(ヴァンパイア)吸血鬼(ヴァンパイア)なのですよ!」


そう私は苛立ちを隠せずに言う。

すると、サビ様は落ち着いた顔で...。


「ウバラ様があの吸血鬼(ヴァンパイア)を信じました。私はそれに従うだけです。」


そう、

確かにウバラ様はあの吸血鬼(ヴァンパイア)を妙に信用していた。

私はその気持ちが理解できないのだ。


「おそらくヴェルドは、自分のために起きたことに自分でケリをつけたいのでしょう...。

ヴェルドはそういうところがあります。」


「....。」


私はしばらく黙り込む。


「血はどうするのですか...。人間の国ですよ!?」


「あの方が人間を襲うことはないでしょう。それではあの方にとっても良いことは何もありません。」


確かにサビ様が言う通り、それではあの吸血鬼(ヴァンパイア)吸血鬼(ヴァンパイア)について情報を集めるという目的にも影響することになる。

しかし....。


「どうであれ、吸血鬼(ヴァンパイア)には血を飲まなくてはならないという本能があります。それは我々狼人(ウェアウルフ)にもあるもの....。

サビ様もよくわかっているはずです!」


どの生き物にも存在する本能....。

サビ様も十分それは理解しているはずだ。


サビ様はしばらく何かを考えて、そして言う。


「信じましょう。ウバラ様が信じたあの方を...。」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




私は凍った湖を歩いていく。


湖はかなり深いところまで凍っているようなので、もはや氷の大地といったところだ。

周囲の景色は一面雪世界であり、こうしてみると、先ほどまで緑が広がっていたとは到底思えない。

やはり魔法の威力が強すぎたのだろう。

何はともあれ、こうして湖を渡ることが出来ているのだから良しとしよう。



この崖の近くの土地は、これだけ魔力があるというのに一切魔物の気配がしない。

集落から出たすぐのところには、弱い魔物がちらほらいたのだが、崖が見え始めたところからその気配は一切しない。

やはりこの場所はおかしいのだ。


しばらく湖の上を歩いて、向こう側の陸地が見え始める。

歩いても歩いても、全く近づく気配のなかった崖もようやく届く範囲に見えてきた。

近くであらためて見ると、岩肌には光る草が生えており、ちらほら半透明の鉱石が見える。

洞窟で見たクリスタルの下位互換的なものだ。

あれが魔鉱石とかいう奴か...。

ウバラから聞いた話によると、あれは人間や亜人の間ではかなり貴重なものらしい。

要は高く売れるということだ。


後でいくつか取っておくか...人間の国に行ったときに何かの役に立つかもしれないし...。


さて、崖壁はすでに手の届く範囲にある。

ここまで来たからには、この魔力の出どころを知りたいところではある...。

しかし、何の手がかりもないわけなので探りようがない。


仕方がないので、とりあえず日が落ちるまで休憩をはさむことにした。

崖沿いの日陰になっているところを探し、座り込む。


日を通さないローブを着ているため、日中でも行動できるとはいえ完全に全身を覆っているわけではない。

顔や手は出しているので、そこに日が当たるとピリピリ痛む...。

人間の国に出発する前に、何か顔や手も覆うものを準備しておきたいところだ。


そして体を休めようと、ふと崖の壁に寄りかかると...


「!?」


突然体が沈み込む。


壁がどんどん崩れているのだ。


生き埋めにでもなったら笑い事では済まないので、急いで壁から離れる。


「何...これ..?」


先ほど私が寄りかかった壁はすっかり崩れ去っており、巨大な穴ができていた。

その穴は、一本道になっておりどこかに通じている様子であった。

そして、その奥から魔力が流れ込んできているのが分かる。


魔力が流れ込んできているのはこの場所からだけでないことを考えると、そこら中の壁にこのような隠された穴があるのだろう。そうして魔力の通り道が隠されているために、どこからともなく魔力が流れ込んでくる不思議な環境が生まれているのだ。


自然にできたにはどうもよくできすぎている気もするが、こんな場所には人間はもちろん亜人もやってはこないだろう。

結局、自然にできたものと考えるのが妥当だろう。



何はともあれ、私はその通り道を進んで行く。

そんなに大した理由ではない。

ここにきてから、私を動かしているのはただの好奇心である。


そして、この不思議な環境を作り出している正体が見え始める...。





暗い一本道の奥にふと光が見える。出口である。

外に出てまず感じたのは、その場所の異様さである。

周囲を高い崖で囲まれたその空間は、ちょうど巨大な盆地といったところである。

この場所の特徴として挙げるとすれば、何と言ってもその異常な広さであろう。


数百メートル...そんなレベルでは表せない。

そんな何キロもあろうかというその空間は、かろうじて向こう側の壁が見える程度である。

ちなみに私が立っている場所は、この空間の中ではかなり高い位置にあり、崖から下を見下ろすとそこには緑が広がっており、川や湖といったものも見える。

心なしか、崖の外の景色よりも綺麗に思える。



ここは隠された楽園といったところか...。

無論、楽園には生き物が存在している。


その生き物とは...。




竜である..。



先ほどから数百もの飛影が見える。

何とそれらは全て同じ種類であろう竜なのだ。


私が洞窟で出会ったドラゴンと比べると、かなり小さく魔力も小さい。

とはいえ、流石は竜といったところだろう。

森の魔物に比べればかなり魔力は大きい。


そんなものが数百の単位でいるのだ。この周辺に魔物が一切いない理由も頷ける。

つまりは、この竜を恐れていたのだ。

そう、ここは竜の楽園なのだ。




さて、そんな場所にうっかりやって来てしまったわけだが...。

もしここにいる数百の竜が一斉に私に襲い掛かってきた場合...おそらくだがやられることはないだろう。

そもそも私は、痛みも感じず、どこかもげたりしてもすぐに再生する、という便利な体なのである。


とはいえ、本当にそれでダメージを受けていないのか...というと分からない。

もしかしたら、痛みを感じていないだけで、体はダメージを受けているのかもしれない。

もしそうだとすると、かなり危険なのだが...。



だが、そんな心配もする必要はなさそうである。

この竜たちは、私には見向きもしないのである。


飛び回っている者...


水を飲んでいる者...


日の下で休んでいるもの...


どの竜も好きなことをしている...といった様子である。

確かにこんな場所で暮らしている竜は、必然的に穏やかな性格になるのだろう。


そんな幸せそうな光景を見ていると、もう少しここに居たい気持ちが高まる。

しかし、これだけ隔離されているような場所に住んでいる竜である。

もしも縄張り意識とかが強く、まだこちらに気づいていないだけだとすると、面倒なことになりかねない。


私は仕方なく元の穴へと引き返そうと、振り返る...。



そこには、他の竜たちとは、明らかに異なる緑色の竜が立ちふさがっていた...。

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