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実父と対面

 

 冷や汗を垂らし、手が震えている。それでも、覚悟を決めた表情に胸も腹部も疼いた。

 レイドはリュシオンやメランコリーも越え、一歩前に出る。二人も、レイドの表情から察して止めない。

 前に出た事で、アンドロスの視線も圧も全て集中する中、レイドはその場で深く頭を下げた。


「は、発言の許可を、頂けますでしょうか」

「許可しよう」

「ありがとうございます。ドクマール魔帝国、皇帝陛下。お……自分はモンポット王国、レイド・シェーダンと申します」

「シェーダン? 聞いたことがないのう」

「辛うじて、貴族位を維持している程度の男爵家になります。此度は……御息女であるルルーミネ・ドクマール皇女様と共に、登城させていただきました」

何故(なにゆえ)? 皇女の娘と男爵子息に、何の接点もなかろう?」


 言葉を選びながら慎重に話すレイドに対し、アンドロスは畳み掛ける。

 レイドに加勢したいが、父の圧がそれを許さない。どうやら、レイドを見極めているようだ。

 何の基準で判断するかは知らないが、ルルーミネが惚れた相手だ。易々と超えるだろう。


 尤も、駄目だった所で諦める選択肢はない。臣籍降下でも駆け落ちでも、いくらでも手はある。


 色々と考えることは後に回し、レイドの勇姿を注視することに専念した。


「じ、自分は……ルルーミネ様をお慕いしております。身分の違いから、叶うとは思っておりませんでした。遠くから、凛としたお姿を見られるだけで、幸せでした……それが、先の建国記念パーティーにて、状況は一変しました。それからは……皇帝陛下が()()()()()()()()()()()

「ん? 余が見ていたとは?」

「ルルーミネ様とメランコリー様の会話で、遠見水晶というお言葉が出てきていました。それと、リュシオン様達が来られたタイミングを考えると、何かしらの理由で建国記念パーティーをご覧いただいており、ルルーミネ様への暴挙から保護しに来たと思っております」

「ふむ、ふむ」

「…………不躾ながら申しますが、皇帝陛下は全てを知った上で、わざと無知を装われておりますよね? 恐らくは……自分を、試す為、でしょうか……?」


 恐る恐る答えた内容は正解で、アンドロスの口角がゆっくりと上がる。

 流石レイド、鋭い。聡い所がかっこいい。


「ほう? 試す? 余が与えるこの圧が分からぬか?」

「いえ……十二分に把握しています……このまま、地に倒れたら、起き上がれないでしょう。ですが……この圧からは、()()を感じません」

「悪意、だと?」

「はい。自分は……父が勝手に貴族籍に入れた所為で、義母や義姉妹、他の貴族から疎まれました……その人達からは、強い悪意を感じました。ですが、皇帝陛下の圧はそれ以上に強いものでしたが、自分を疎んだり痛めつけたりという、そういう悪い感覚が一切感じられないのです」


 話し始めと違い、しっかりとアンドロスと視線を合わせてレイドは答える。なんて頼もしい姿だろうか。

 満足のいく答えだったか、アンドロスは急に笑い始めた。同時に圧が消える。

 アンドロスの高笑いが響く中、ルルーミネの目にはレイドしか見えていない。脱力したらしく、倒れそうなレイドを後ろから抱き抱える。


「レイド様、大丈夫ですか?」

「あ、ルミ様…………ごめんなさい、力が抜けてしまって…………」

「むしろ、お父様のあの圧の中、理路整然と話せだけでも素晴らしいですわ。私、改めて感動しましたの。胸もお腹も甘く締め付けられて、今すぐにでもレイド様が欲しいですわ」

「え、ちょ、ルル様っ、それは早すぎます!」

「うーむ。スノーの血は、初心な少年に刺激が強すぎるのではなかろうか」


 終わった途端に他人事のアンドロス。久しぶりの実父ということも忘れ、ルルーミネは不愉快さを前面に出して睨む。

 目を吊り上げるだけなのに、やはり動いた気がしない。


「お久しぶりですねお父様、レイド様を試すなんて酷いお父様は嫌いよ」

「まぁ待て。ルルとそこのレイド少年が結ばれるに、必要な事でのう」

「私とレイド様の気持ちがあるのだから、それ以上はいらなくてよ?」

「ルル、皇族の結婚なんだ。周りを黙らせる材料がないと困るんだよ」


 成り行きを見守っていたリュシオンが口を挟む。目線で説明を求めれば、呆れたように肩を竦めた。


「ドクマール魔帝国と婚姻で縁を繋ぎたい奴は、沢山いるって事だよ」


 それだけで、言いたいことは伝わった。



 要は、モンポット王国と同じ考えの国が、こちら側にも多いという事だ。



 ルルーミネも大まかにしか聞いていないが、聖女であるメランコリーとの婚姻も難色を示していた貴族や国があるという。

 自分の娘を嫁がせようと思っていたらしい。しかし、メランコリーを離そうとした際のリュシオンの暴走を聞き、その声は次第に無くなったようだ。

 諦めきれない者、息子しかいない者。そこへ、婚約がなくなったルルーミネの帰国。狙わないわけが無い。

 レイドとの未来ばかり想像していた為、その可能性など微塵も思い描かなかった。


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[良い点] レイドくんかっこいい
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