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交錯する思惑

今回は短め!


一段落です

▼ ▼





「おいおい、マジかよ、、、」


周りに隠しながらも吐血を拭うアールを見て、冷や汗を滴しながら呟いたのは、兄弟のもう一方、ジークだ。


「おい!救護班を呼んでくれ!」


ジークの命令に、我に返った兵士達がいそいそと動き始める。


慣れた様子で指示を出すジークは、内心とても焦っていた。

生徒達が血を見ることで戦闘に対する恐怖を持つこともそうだが、何よりもあの(・・)アールが傷を負ったことが問題だ。


独特のステップと素手での格闘を用いて生徒達を翻弄し、文字通り創也を吹き飛ばしたアールは、世界屈指の《魔術師(・・・)》である。




▼ ▼





気を失った創也が運ばれ、微妙な空気となった訓練場では、生徒達が思い思いの行動をしていた。


「天原の奴、二刀流とか厨二かよ」


「ホントにウザかったし、いい気味だわ」


三坂が創也を嗤い、他の生徒達もそれに便乗する中、俯いて唇を噛み締める者が1人。


その鬼のような形相は、普段の表情からはかけ離れており、両の拳は血が滴る程に強く握られていた。


彼には、生まれつき才能があった。

やることなすこと全てが良い方向へ転がった。

人に負けたことはあったが、悔しさは感じなかった。

なぜなら、その人は自分よりも努力していたし、総合的に自分よりも劣っていたからだ。

顔も、運動も、頭脳も、信頼も、彼は誰よりも上にいるつもりだった。


なら、この感情はなんだ?ーーそう自分に問いかける。


彼にとって、劣等感とは初めての感情だった。

それ故に、彼は劣等感とのつきあい方を知らなかった。


「おい龍次、もう移動だぞ?」


三坂が声をかけると、その醜い表情は一瞬にして消え去り、彼ーー龍次の顔には、人当たりの良さそうな爽やかな笑みが浮かぶ。


「あぁ、もう行こうか」


そう応えて離れた訓練場の土の上には、数滴の血が染み込んでいた。





▼ ▼





「どうしましょうか、、、」


羽ペンを回しながら輝く金髪を弄り、思考に耽る女性が呟く。

流れるような髪が羽ペンに巻かれてはほどけ、時おり光を反射している。


彼女の瞳は薄く緑煎ろを帯び、悩める姿さえ、究極の美を体現したかのようである。


口の端に薄く笑みを浮かべた彼女は、目を細めて何かを見た後、決心したかのように立ち上がる。


「まあ、経過観察ってところですかね」


彼女ーー聖女セイラが立ち去ったあとの机には、「転移人育成計画」と書かれた資料が残されていた。


次回の更新は明日の21:00です。

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