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世界樹と生きる  作者: 池田瑛
第1部 Δάφνη
28/73

27. 16歳 天然野苺狩り

 どうも不思議な風が吹く日だった。遠くの山の頂には黒い雲がかかり、そして時折、その雲が光っている。


 遠雷だ。


 春嵐が来る。


 私が見張り台として使わしてもらっている木に巣穴を作っているリスの家族。どうやら今日は外出をしないらしい。巣穴からカリカリという音が聞こえる。ドングリを囓って今日一日を過ごすつもりなのだろう。


 それに、いつもは高枝で歌っている鳥たちも、今日はやけに低い枝にいる。


 これから産卵期に入る鳥たちなんかは、最近は毎日のように囀り合って、空中で追いかけあったり、(くちばし)と嘴を突きあったり、踊り合ったりと、リア充しているのに、今日はその姿がまったく見えない。

 

 嵐が来る。それをみんな知っているのだろう。


「今日は早めに見回りをして、早く家に帰ろう」と私は空を見ながら独りごとを言う。

 強い風と強い雨のなか、移動するって、枝も滑りやすくなるし大変だしね……と、そんなふうに思っていた時が私にもありました。


 まさか、野イチゴの群生地を見つけてしまうなんて! こんな場所があったとは!


 森と言うのは、実は地面まで光が届くことは稀であったりする。木に茂っている葉が光を遮り、地面にまで届かない。だから、森の中は昼なのに薄暗かったりするのだ。森林浴とかにはあまり向かない森なんだよね……。獣道しかないし……。


 まあ、そういうわけで森の中に野イチゴが群生するというのは稀だ。森の中に野イチゴが群生する。それは、地面を覆っている木が何かの拍子で倒れたときだ。木が倒れ、その木の葉っぱが遮っていた光が地面に届くようになる。そうなると、草なども育ち始める。


 森の中にぽっかりと空いた空間。光が差し込む空間。


 おそらく、私がこの辺りの警備の担当になる前、前任者が年老いた木々を切り倒したのだろう。精霊術でスパッと。そこに偶然、鳥たちが野イチゴの種を落としていったのか。


 それにしても、程良い甘酸っぱさだ。食べごろだ。

 

 お昼にはお母さんが作ってくれた弁当を食べたし、美味しかったのだけど、甘いモノって別腹だよね!


 他の動物たちもいないし。赤く染まった野イチゴは、全部……私が食べても良いのかな?


 ・


 ・


 って……いつの間にか空を厚い雲が覆っていた。食べるのに夢中になりすぎた。

 それに、雨が降り始めていた。上空の風の足が速かったようだ。いきなり土砂降りの雨が降り始めるとは思わなかった。


どうしよう……まだたくさん野イチゴ残っているけど、明日だと、嵐で野イチゴがなぎ倒されて、食べれなくなっちゃいそうだよ。


お土産にする分もまだ採ってなかったのに……。って、雷まで鳴ってきた。これだけ雨が降ったら落雷が起こったとしても、森が火事にはなったりはしないだろう。


 う〜ん、どうしよう。世界樹の近くまで急いで移動するか、それとも雨宿りをするか。


 世界樹の周りは風が静かになるから急いで帰るかなぁ。でも世界樹へと上がる滑車はいま、混雑しているかもしれない。一斉にエルフが帰宅したら、滑車が帰宅ラッシュだ。森から世界樹の枝へと帰る場合、トクソさんが岩を世界樹まで引き上げなきゃならない。


 もちろん、滑車は一個所しかないというわけではなのだけど、混雑するときは混雑する。

 今日は雨宿りするかな。お腹がいっぱいで、あまり動きたくないし。川の水嵩も高くなっているだろうし、ジャンプして失敗したら嫌だしなぁ。

 

 雨宿りをするにしても、雨を避けるならば、幹に背中を預けて入れば良い。だが、風となると木の枝よりも地上の方が良い。森全体が防風林のような形となって、森の中を風が吹き抜けるということはない。


 確か、この近くに岩場があったはずだ。洞窟というほどではないけど、そこなら雨も風も防げるはずだ。


 早速移動を開始した私は、岩場の近くの獣道で足跡を見つける。あれ? 二足歩行? 歩幅から言うと、体格はエルフと同じくらいだろうか。


 雨が降り始めて走ったような形跡。靴を履いている。森を歩けるような固い靴。木靴かなにかだろうか? でも、私たちは木靴を履いたりはしない。基本裸足だ。木登りの邪魔にしかならないし。


 岩などが多い場所を警備するエルフの人は、ゴムの木の樹液を集めて、それでサンダルのようなものを作って履いている。


 エルフではない。ゴブリンでもない。


 足跡からして一人だ。


 だが、私の警備している辺りは、草原などと隣接していない。私の警備地域まで来るには、他のエルフの人の警備網をいつくも抜けてくる必要がある。一人で侵入したのであれば、森に入って直ぐのところで大体追い返されるはずだ。大人数なら、今日のゴブリンのように森の中まで誘い込むことはするけど、一人ならそんな面倒なことはしないはずだ。


 ゴブリン達に対処するために、警備地域を離れた隙に侵入されたのだろうか。


 何にせよ、放置はできない。それに早く追跡しないと、雨で足跡が流されてしまう。


 それに……ゴブリンの討伐のために警備を離れ、その隙に侵入されたということなら仕方がないというものだ。だけど……野いちご食べるのに夢中で、侵入者を素通りさせたって言ったら、叱られちゃうよ!!


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