第105話 勇者からの報酬
一緒に煙草を吸うウォルドは、壁に寄りかかって外を眺めている。
それから世間話のように報告してきた。
「お前さん、三週間も昏睡していたんだぜ。村の医者も目覚めるか分からないと言っていた」
「そうか」
「よく戻ってきたな。地獄は居心地が良くなかったのかい?」
「素行が悪くて追い出されたのさ」
俺が皮肉を返すと、ウォルドは愉快そうに笑った。
その時、彼の影からメニが顔を出す。
ずっと黙っていると思ったら潜んでいたらしい。
彼女は自分の顔を指し示して主張する。
「メニの力で魔王を殺せた」
「ああ、感謝している。おかげで勇者の手柄を奪ってやれた。世界最強の盗賊を名乗れそうだ」
「ジタンは強い。名乗る資格がある」
じっとこちらを見るメニは淡々と断言する。
冗談を述べた雰囲気ではなかった。
俺は苦笑気味に反応する。
「本気で言ってんのか」
「うん。ジタンは戦う勇気がある」
メニは頷きながら答えた。
戦う勇気など、俺には無縁の表現だろう。
状況的に仕方なかったり、意地になって蛮勇を発揮しただけだ。
とても高尚なものじゃない。
それでもメニにとっては一定の評価に値するものだったらしい。
あまり否定するのも違うので、彼女のからの称賛としてありがたく受け取っておく。
なぜかメニに撫でられながら俺はウォルドに訊く。
「他の連中はどうした」
「勇者パーティはとっくに旅立ってるぜ。魔王の死を報告するのと、仲間の埋葬があるらしい。あっちは三人になっちまったからなぁ」
ウォルドは何かを思い出したように懐を探る。
彼は折れ曲がった一枚の羊皮紙を俺に手渡してきた。
「そうそう、勇者から手紙を預かっていたんだ。お前さんが目覚めた時に渡してくれって」
「へぇ、あいつからか」
俺は手紙を読み始める。
手本のように綺麗な字を追ううちに、自然と眉間に皺が寄っていく。
締めの言葉に達する頃には、盛大なため息と悪態を吐き出した。
俺は天井を睨みながら舌打ちする。
「あの女、やりやがった……」
「何が書いてあったんだ」
「読んでみろよ」
俺は手紙を乱暴に投げ渡す。
掴み取ったウォルドはさっそく読み進めていく。
そして、気持ちの悪い笑みを浮かべながら俺の肩を叩いてきた。
「ほうほう、お前さんに勇者の名を貸すらしい。大々的に勇者として活動することを許可するそうだ。よかったな、本物になったじゃねぇか」
ウォルドは上機嫌に手紙を振る。
俺は無言で中指を立てた。




