君は穢れてる
また短いです。
おかしいですね。プロット通りに書けない。なぜだ。
「でも、あれは浦島太郎やろ?」
「そうだろうな」
「ならここは竜宮城や」
「そーじゃね」
最初はここが竜宮城か疑っていた霜水だが、自己完結したようで、つっかえてたものがとれたかのような晴れ晴れとした表情をしている。
「蒼はここのこと知ってるんかいな」
「変わってなければな」
確かにここ、『月の都』を知っている。
しかし、ここ(地球にあったとき)から出て、数百年以上たっている。
寿命が無くならないからといって技術力が停滞するわけないし、外を見た限りそれは上がっているようなので、全部が全部蒼の知っているとおりというわけではないだろう。
ふと蒼は考えてしまった。何を根拠にしたかは本人にも分からないが。
もしかしたら彼女は…。
と、その思考を蒼は頭を振って忘れる。けがれのない月に来たのだ。寿命で死ぬことはない。
誰かの恨みを買って殺されそうだが……。彼女ならうまく避けるだろう。頭はとってもいいのだ、彼女は。策士ともいう。
頭を振ったことで乱れた髪をなおしていると、足音が聞こえた。
蒼は瞬時にそれを“見る”。
視界が変わり、それの周りをカメラ目線で見るようなかんじになる。
そしてふっ…と息をはく蒼。能力は既にきっていて、口には安堵の笑みを浮かべていた。
ス……と、開かれる障子。
「(見た目が)変わらないな永琳」
「貴女(の見た目)もね、蒼」
少し動揺しているのが蒼には分かる。
霜水の視線が二人をいったり来たりしているのを余所に、はっきりした笑みを浮かべて言い放った。
「「久しぶり(ね)」」
そして再開を祝って酒を飲む…ということはしなかった。蒼が酒を飲めない(正確には一瞬で酔いつぶれる)のを永琳は知っているし、蒼は蒼で永琳がそこまで酒が好きではないと言うことも知っている。
まあ、要するに酒を飲み始めないということだ。
永琳は二人に対面するように座る。
そして蒼に目を向けてはあ…、とため息をはく。
「なおらないかもって思ってたけど…。あなたはなんで胡座をかくのかしら」
この部屋の男性一人は胡座。女性二人は正座と胡座で座っている。
もちろん永琳が正座で蒼が胡座だ。
昔から(それはもう昔から)永琳が直すようにいっていたのだが、いっこうに直らなかったのだ。
今回の事で永琳は完全に諦めた。
「別におれの好きでいいだろ」
「そもそも口調も男臭いし」
「またぶり返すのか」
ここで、永琳が霜水に目を向ける。
ガールズ(?)トークに男は入れないのだ。霜水は一人でボーッとしていた。
「それで、あなたは」
だから霜水は少しきょどった。
「お? おう。」
そして数秒。霜水は自己紹介を求められていると理解し、自分の名前を言う。永琳も自分の名前を言った。
「ところで、あなた達はどうやってここに来たのかしら」
地球と月の距離はかなりある。更に宇宙空間には酸素がないので、呼吸ができない。一週間呼吸しないで進めないと来ることはできない。
もちろん他にも考慮すべき点はあるのだが。
ただしそれは正攻法。ここは幻想の世界。数式では表せないこともある。
永琳の疑問に蒼が答えた。
「ああ、海の中を通ってな」
「海? ああ、あそこね」
流石は天才。少しの情報で更なる情報を得る。……天才でなくとも月人なら分かることです。
「蒼はこれからどうするの? あまり歩いてほしくないんだけど」
「二、三年はおとなしくしてるよ」
「なんでや」
蒼の発言を聞いて、霜水が口を挟む。
二、三年もおとなしくするというのはどういうことか。ここはまるで未知の世界。今日からとは言わなくとも明日からは調べ尽くしたい。
霜水はそう考えていた。
「穢れてんだよ、おれ達」
「なら風呂に入れば…」
「そーゆーのじゃねえんだ」
霜水の単純明快な答えを聞いて蒼は呆れた様子で言う。
「霜水。なんで歳をとると思う」
「………細胞が劣化していくから?」
蒼の突然の質問に思考が停止するがすぐ再起動し、質問に答える。
「その劣化する原因は?」
「…………」
霜水は答えられない。
「その劣化する原因ってのが穢れだ」
「分かったけどそれがなんなん?」
「……昔、地上の民は穢れのせいで歳をとることに気づいた。歳をとりたくない。だから月に行こう。今おれらがいるのはそういう奴等が作った都市だ」
だが、それでも蒼の言いたいことが理解できない霜水である。だから? というかんじだ。
そんな霜水を見て、ため息をはく蒼。
霜水はむっとする。
「…ここの奴等は穢れに敏感なんだよ。今おれらが歩くと感づかれる」
霜水は「なるほどな」と言ってうなずく。
そのやり取りを聞いていた永琳は蒼にたずねる。
「……地上の者はそこまで進んでいるの?」
「んー?」
永琳の問いに首をかしげる蒼。霜水も永琳の言いたいことに気づかない。
「さっき『細胞』って」
「ああ、言ってたな。大丈夫だ。こいつぐらいだ」
「そう」
それだけ聞くと、永琳は「やり残したことがあるから待ってて」といって退出した。
「蒼はん」
「なんだ」
「しばらくじっとしてないと行けないことは分かった。分かったんやけど……その間何をしてればいいんや」
「……実験台?」
「誰の?」
「永琳」
ブンブンと首を振って拒絶の意を体で表す霜水。
まあそうだよな、と蒼は呟く。
二人そろって暇だなぁ…と呟く。
「…寝よう。そうしよう。ではお休み」
と、横になる。
「ちょっ、蒼はん名案思い付いたんやけど……」
しかし、返ってくる返事は「すう…すう…」という寝息。
霜水はどうしようかと悩む。
蒼を起こすようなことはしない。したら死ぬからだ。
以前に無理矢理起こしたら、いつの間にか体が上向きに横たわっていて、上に寝ぼけ眼の蒼が乗っかっていて、拳が鼻先に迫っていた……ということがあったのだ。殺意もなく敵意もなく、無意識にやっていたのだ。もしかしたら殺っていたになっていたかもしれない。
そのときのことを思い出して、霜水は震えた。
(起こさんといておこう……)
間違って起こさないように、と霜水は蒼から離れる。それだけあのときのことが恐かったのだ。
そのあとも考えていたが、特に何も思い付かず、霜水も寝た。
そして数時間後、ここを見に来た永琳は寝ている二人を見て、ため息をはいた。




