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1/22

5:16

夢って言葉が嫌いだった。


夢って目標か? 職業か? 10年後のことか? 20年後のことか?


港町のバーで働いてクタクタになった帰り道。

ほろ酔いで頭に浮かんだのがこの言葉だった。


ただ、お客と話して、飲んで、その日が楽しければそれで良い。


そんだけじゃダメなのか?


夢ってのは必要なのか?


持たなきゃダメなものなのか?


『神様、夢はなきゃダメですか?』


この街で一番高いビルの屋上にいた。


もうすぐ日が昇る。


この時間が一番好きだ。


夜と朝が混じったこの色が一番落ち着く。


君はなんでここにいるんだい?


誰もいないはずの屋上に声が響いた。


ふと後ろを振り向く。


そこには白髪混じりの男が立っていた。


君にはまだ早いよ?


それともこっちに来たいのかい?


『まだ早い? 何が?』


気づいてないんだね?


『だから、何がだよ!!』


じゃ、まだ、来ちゃダメだ


ドンッッッッッ


うん? 落ちてる、屋上から……

俺死ぬのか?

まぁ、死ぬよな。

どうせ大した人生じゃない。

まぁ、いいか……


あれ?

痛くない。

夢?

天国ってやつか?

それとも地獄?


戻ってきたね、良かった


後ろを見るとさっきの白髪の男だ。


『テメー、人を落としやがって!!』


殴り掛かろうとするが体がいうことを聞かない。


君は落ちたのかい?


『落ちただろーが!』


本当に?


あぁ、


『怪我は?』


ない、痛くもない。

ただ落ちたのは確か……

なはず……

なんだ。


ここはどこだ?


君がいた世界はどこだったんだい?


『俺がいたとこは俺がいた世界だ。』


どんなところだった?


『どんなところって普通の……』


何故か次の質問は分かった。


『普通ってなんだい?』


そして、俺にはそれに対する答えを持ってないことも……


その答えを持ってないなら、やはり、君には早かったんだね。良かった


また、どこかで会おう


唖然とする俺を横目に、その男は去っていく。


朝日の逆光でそう見えたのかはわからない。

ただ、男の背中は、俺には眩しくて半分透明になっていくような感じがした。



****



目を覚ますといつものベッドにいた。




カキンッ


シュボッ




俺はベッドサイドにあるセブンスターを手に取った。


いつものベッド、いつもの匂い、いつものタバコ。


何も変わってない。


夢だったのか?


妙にリアルな夢だったな……


昔から使っているお気に入りの手巻きの腕時計を見る。


今何時だ?


その時計は


5:16


で止まっていた。


ちっ! ついに壊れたか、もう寿命だな。

俺はお気に入りの腕時計を外して、前日彼女(まゆみ)から貰った腕時計を嵌めた。


俺がいつまでもボロい手巻きの腕時計を使ってるのが気に食わなかったのか、手巻きを忘れて待ち合わせに度々遅れるのが気に食わなかったのか、

こんな高いものよこしやがって……


(ヤベッ)


急いでジーンズを履き歯磨きをする。


今日はまゆみとデートだった。


また遅れたら不機嫌になるからな。


Tシャツを着て車の鍵を取り車庫へと向かう。


ブローーン


車のキーを回すと乱暴にエンジンが唸り声を上げる。


車の時計を見ると


12:43


(急がねーと)


まゆみのマンションに着いたのが


13:14


少し遅れたけどこれくらい遅れたうちに入らないだろ。


車をマンションの前に停めてオートロックのインターホンに向かって

516

を押す。


ピンポーン、ピンポーン!


何回か押すが反応がない。


スマホにもかけてみる。


お客様のおかけになった電話番号は現在……


(なんだ?)


(どうなってる?)


オートロックの奥の自動ドアに俺の姿がうっすらと映っている。


その姿はあの白髪混じりの男だった。


頭を振り目を擦り、もう一度ガラスに映る姿を見てみる。


そこには白髪混じりの男はいなかった。


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