330、解体依頼-2
「な、な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
「サメ?」
「り、リオ!お前、こんなにデカいなんて聞いてないぞ!」
「ん?見た中で1番大きかったって言ったじゃん?……あれ?言ってないっけ??」
「デカいとは聞いた!聞いたが……まさか、これ程とは……お前は一体何してるんだ?」と、驚くのも通り越して呆れ顔だ。
「だって襲われたんだよ?」
「サメなら陸に逃げればいいだろ?」
「陸に逃げたよ」
「なら……」
「空飛んで追いかけて来たんだもん」
「……は?」
「だから、空飛んで追いかけてきたの!」
「いや、は?空飛んで?跳ねたくらいじゃなくて……か?」
「違うよ!んーと、空を泳いでた?」
「マジか……」
「マジだよ」
「それでも、このデカさだと、逃げる一択だろ」
「逃げれるの?」
「……無理だな」
「なら、逃げても戦っても一緒じゃん?」
「だとしても、だ!こんなのと戦おうと思うやつなんていねぇだろ!」
このデカさだぞ!と、サメを指さして興奮気味だ。
「ここに!」トンと胸を拳で叩くと
「……お前くらいだわ」と、呆れた顔をされた。
「ちゃんと倒してきたでしょ?」
「まぁ……そうだが……」
「従魔達と頑張ったんだよ」
リオはエッヘンと胸を張っている。
「……デカいだけで見た目ほど強くなかったのか?」
「なかなか強かったよ?初めて苦戦したし」
「は?」
「だから、初めて苦戦したんだって」
「や、ちょっと待て!今までもかなり高ランクの魔物を狩ってきてただろ?」
「うん」
「そ、それらは苦戦してないのか?」
「うん、大丈夫だったよ?」
「お、俺が思ってたより、リオは強いのかもしれねぇな……」
「うん!なかなか強いんだよ!って前から言ってるじゃん」
「ああ、そういや聞いたな……だが、想像以上だ……」
「そう?」
「こりゃぁ、多分スカイシャークだな……?初めて見たぜ……」
「ゼバン知ってんの?この魔物?」
「噂で聞いただけだ。空を飛びまわるサメの魔物って言うとスカイシャークだけのはずだ」
「へぇ、スカイシャークって言うのか……」
「ああ、空を自在に飛び回るうえ、皮膚が固く攻撃が全く効かんと聞いたんだが……」
「そうそう!そうなんだよー!めちゃくちゃ固くて大変だったんだよ」
「いや、大変だったで済まんだろ……攻撃が通ったと聞いたことがないんだぞ……?」
「そうなの?戦った人達はどうやって倒したの?」
「倒してないぞ」
「え?」
「皮膚にかすり傷すら付けられなかったと聞いているのに倒せてるわけねぇだろ」
「……戦った人は?」
「死に物狂いで逃げたんだろ?多分……被害の程は知らんが、亡くなった人も多いだろうな……」
「それは、ご愁傷様です……」そっと両手を合わせて黙礼する。
「それを聞いたのも何年も前だ」
「そうなんだね……」
「まぁ森ん中入りゃァ魔物もいくらでもいるからな、こんなんが出る場所に行っちまったのは運が悪かったな……」
「ん……」
少ししんみりした時だった。
横で話を聞いていたオニキスが話が終わったと思ったのか、サメの魔物の方へ駆け出した。
「なぁー??!ちょ、こら!猫ー!!!」
「え?!」
駆け出したオニキスはそのままサメの魔物に飛び付き、にゃー!と声を上げてかぶりつこうとしていた。
「こ、コラ!猫!そんな雑に噛みつくんじゃねぇ!」
「にゃにゃー!」
「ぎゃぁぁ!貴重な素材がー!」
サメの皮が固くてなかなか噛み付けず苦戦しているオニキス。
そんなオニキスを引き離そうとするゼバン。
両脇を持って引き離そうとすると、オニキスは鋭い爪をサメの魔物に突き立て、さらに噛み付こうと奮起する。
滅多に手に入らない貴重な素材が傷つくと顔を青ざめながら必死にオニキスを引っ張るゼバン。
「あはは」
「ふぉっふぉっ」
「リオー!何呑気に笑ってやがる!早くこいつを止めろ!!」
「オニキス、皮が硬そうだから解体して、身を切って貰ってからにしたらー?」
「は?何を呑気な事を……」
「にゃぁ!」
オニキスはそう返事をすると、あっさりサメの魔物から離れた。
「へ?」
「てことで、ゼバン早く解体して」
「な、なんだその猫……そんなすんなり……」
「オニキスは賢いからねー」
「にやぁー!」
「……ふぅ、その猫も普通じゃねぇのはよくわかった……」
と、ゼバンはため息を漏らしながら眉間を揉んでいる。
「あはは、で、解体出来る?」
「ああ、だが大きさが大きさだからな……何日かかるぞ?」
「そうなの?どれくらい?」
「そうだな……2~3日ってとこか?」
「1匹で?」
「……は?」
「これと同じくらいのサイズのが後3匹いる」
「……はぁぁぁ???!!」
「後ね、これよりもうちょっと……いや、倍くらい大きいのが1匹」
「………………は?え?ちょ、ちょっと待て!」
「ん?なに?」
「一体じゃねぇのか?!」
「うん、頑張って」
「がん……いや、頑張るとか頑張らねぇとか、そういう問題じゃねぇ!!!!」
「でも、暑いからなぁ……」
「は?てか、俺の話聞いてたか?」
「んー、解体してる間に腐るかな?」
「あー、まだ夏だからな、外でするならその問題もあるな……」と、ゼバンは腕を組んでいる。
「私氷魔法あんまり得意じゃないんだよなぁ……」
「なに?氷魔法?それがなんなんだ?」
「得意だったら魔物の周りに氷の部屋を作ったら腐らないかなーと思って」
「……お前のそのめちゃくちゃな発想はどっから出て来るんだ?!」
「えへへー」
「いや、褒めてねぇぞ!」
「リオ、それなら私がその氷の部屋を作ってやろうかの」
「え!ゼン、いいの?」
「うむ、構わんぞ」
「へぇ、あんたも魔法が使えるのかい!」
「うむ、まぁまぁのぉ」
「ゼンは私の師匠だから凄いんだよ!!」
「……へ?」
「ふぉっふぉっ、師匠とは何度言われてもこそばゆいのぉ」
「前に言ってた師匠……か?」
「ん?言ったことあったっけ?私の師匠はゼンだけだよ」
「はぁ……マジかー、前に魔法鞄を習いに行くとか言ってただろ?」
「あー!そっか、あの時言ったのか!」
「まさかこんなに若い綺麗な姉ちゃんだとは思わなかったぜ」
「ふぉっふぉっ、若くて綺麗とは、ありがとうのぉ」
「いや、本当に……リオの姉妹かと思ってたからな、髪や目の色も同じでよく似てるからな」
「本当?ゼンと姉妹に見えるとか嬉しい!」
「ふぉっふぉっふぉっ」
話が逸れ、しばらく喋っていると、オニキスがまだか?と話に割り込んできた。
沢山食べたはずだが、目の前のサメの肉が早く食べたくて仕方ないようだ。
ドレイクがオニキスを止めようとしてくれたが間に合わず、オニキスは再びサメの魔物に飛び付いていた。
「解体作業員を連れてくるから、氷の部屋?の用意をしておいて貰えるか?」
「うむ、任せておくと良い」
「ゼンありがとう」
◇◇◇
「うむ、こんなもんかのぉ?」
「すごーい!さすがゼン!」
「これくらいはわけないのぉ」
サメを四方からと天井ですっぽり覆い隠す、氷の部屋が完成した。
さすがはゼンだ。あっという間に作り上げてしまった。
床には氷は張っていない。滑ってコケたら大変なので、地面はそのままにする事になった。
もちろん出入口も忘れず作ってくれている。
出入口はさすがに氷で扉を作る訳にもいかないので、開きっぱなしの穴が空いているだけだ。
「中、めっちゃ涼しいー!」
「ふむ、しかし氷の部屋とは、なかなか凄い発想じゃのぉ」
「あれ?そうなの?氷のお城とかないの?」
「な、なんじゃそれは?!聞いたこともないのぉ……」
「私の前いた世界……」
「あったのか?!そんなものが?!」と、前のめりに聞いてきた。
「え?いや、実際には無いけど、物語とかで出てきたよ」
「ほぉー、なんとも想像力の豊かな……」
「でも、ゼンなら作れそうだよね?」
「氷の城のぉ……試してみるかの?」
「え?」
サメの魔物を氷の壁で囲った部屋から外へ出ると、四角い氷の部屋の方へ手をかざす。
少しそのまま止まっていたかと思うと、氷の部屋を作った時と同じように、手から再び白い冷気が吹き出し始めた。
それが空高く舞い上がり、徐々に建物の形を作っていく。
そのまま数分で、屋根の尖った、シンデレラ城のような綺麗なお城のミニチュアが完成した。
ミニチュアと言っても、大きな25~30mはありそうなサメの魔物がすっぽり余裕で収まるサイズの部屋の上に作られたその城はなかなかのサイズだ。
中には入れないようだが、細部にまでこだわり作られた彫刻のように美しい。
その美しい造形を氷で作っているので、光に透き通り、光を反射し、なんとも言えない幻想的な美しさだ。
「凄っ……綺麗……」感動した様子で氷の城を眺めるリオ。
「うむ、うむ、なかなかのできじゃの、ふぉっふぉっ」
満足気に頷くゼン。
「これは……素晴らしいな……」
驚きと感動が入り交じったような表情で眺めるドレイク。
「にゃぁ……」
そんな事より、サメの肉は?とでも言いたげなセリオン。
3人と1匹で氷の部屋の上に作られた氷の城を見ていると、ゼバンが十数人の人達を引き連れて戻ってきた。
「な、なななななんじゃこりゃァァァァ!!!!????」
「すげぇ、何だこれ?」
「城……か?」
「光ってるぞ?」
「いや、それよりこの透き通ってるのは何だ?」
「何で出来てるんだ?」
ゼバンをはじめ、他の人たちも氷の城を見て驚いている。
「うむ、戻ってきたかの、氷の部屋は作っておいたからの、後は頼むのぉ」
「いやいやいや、ちょっと待て!なんだこりゃぁ!」
「氷の部屋じゃよ?2~3日は溶けぬ程度には分厚く作っておいたのでのぉ」
「ちっげぇよ!!あの上んとこだよ!!」
「ふぉっふぉっ、なかなか良い出来であろう」
「は?」
「あれはただの飾りじゃ」
「……は?」
「リオが氷の城などと興味深い事を言うのでのぉ、中には入れん、ただの飾りじゃよ」
「はぁぁぁぁぁぁあああ???!!」
「氷、2~3日溶けないなら、いなくても平気そうだね?」
「うむ、そうじゃのぉ」
「どこか行く?街は久々でしょ?案内するよ?」
「そうじゃのぉ……」
「ちょっと待てぇい!!」
「なに?」
「何かの?」
「手伝ってくれ!」
「え?」
「あの皮に刃が通らんかもしれねぇからな」
「え?」
「それから骨や筋も切れるか分からねぇ」
「もう生きてないのに?」
「おめぇな!Sランククラスの魔物は死んで魔力の保護が無くなっても硬ぇんだよ!!」
という事で、解体作業員達が氷の城を見て驚いていたのが落ち着くと早速作業に取り掛かる。
結局あちこち切れない場所があり、リオとゼン、それからドレイクもかなりの剣の腕だったようで、切れない場所がある度に呼ばれて、解体作業を手伝う羽目になるのだった。
ゼバン:はぁ……リオのやつ……常識がズレてるとは思ってたが、師匠も常識からズレた人だからそのせいだったんだな!
なんて言うか、非常識なんてレベルじゃねぇ!
突き抜けとるわ……それがリオ1人じゃなく2人に……
リオに出会って一生分驚き倒したと思ってたんだがな、まだまだ驚くことがあったとは……頭がおかしくなりそうだぜ……ハハハッ……
いつも読んでいただきありがとうございます!
最近更新遅くてすみません(><)




