320、ゼンに相談した結果
「あ!ゼンー!」
「「ただいまー!」」
「めっちゃ実家に帰ってきた気分だわ」
「それわかるー」
「ちょっとしかいなかったのにな」
「ゼン元気だったか?」
「かなり久しぶりだよな」
「うむ、皆よく来たな、息災か?」
「「うん!」」
「ところで……その身体はどうしたんじゃ?」
骸骨の顔は表情がないので分かりにくいが、サンとランとジオを見てかなり驚いているようだ。
「ゼン、コレに関して相談しに来たんだよ」と、サンちゃんに言われ、「姿が変わって戻らなくなったのかのぉ?」とさらに驚いていた。
「いやいや、違うよ!そうじゃなくて……」とサンちゃんが事の成り行きを説明すると、ゼンは興味深げに3人を順にまじまじと見ていた。
「ふむ、しかし不思議な薬を作ったものじゃの」と、顎に骨だけの手を当てて何やら考えているようだ。
「作ろうと思ってたのと全然違うものが出来ただけだよ」
失敗しちゃったんだけど何とかならないかな?とリオは笑っている。
「リオの錬金術レベルならスキルが何とかしてくれるかと思ってたんだが、宛が外れたな……」
あははと笑うリオを見て、サンは苦笑いだった。
飲んだ薬はまだあるのか聞かれ、大量に出来た薬を取り出した。
それを見て「どんだけの量を作っておるんじゃ……」と呆れた声を出されたが、これもう少し、あれもう少しと足していっていたらこんな事になったのだと説明した。
ゼンは変身薬を1つつまみ上げると光に翳してじっと見ている。
鑑定でもしているのだろうか?
そんなゼンをみんなで見ていると、ふむ……と言うと、ゼンはポーションを飲んだ。
急にポーションを飲んだのでみんな驚きだ。
「「ちょ?!」」
「「ゼン?!」」
「何してんだ?!」
驚いている間に、ポーションを1本飲みきったゼンはうぅっと呻き声を上げて膝をついた。
サン達が飲んだ時と同じような症状だ。
だが、ゼンの場合はそれだけではなかった。
身体から湯気のような白い煙が出ている。
「ちょ、煙出てるぞ?!」
「こ、これ大丈夫なの?!」
「ジオ達の時は煙は出てなかったよね?」
「ゼン?おい、大丈夫か?」
「でも、どうしようも無いんだろ?」
「さっき俺らの時もリオが色々試してくれてたもんな?」
「うん……」
一応もう一度試してみようか?と回復魔法や毒消し等をかけてみるが、みんなにかけた時と同様に全く効果は現れなかった。
仕方ないので、落ち着くまで少し待つことにした。
サンちゃん達の時は3分程で身体が熱くなり息苦しくなり、身体の力が抜けてきたのが落ち着いたと言っていた。
しかし、ゼンの場合は湯気のような白い煙まで立ち登っている。それは大丈夫なのか?とみんなで心配そうに見守っていると、ゼンも3分程で呻き声をあげていたのが収まった。
はぁ……はぁ……と、荒い息をはいてうずくまっているゼンに、リオが「ゼン、大丈夫?」と声をかけると、「何とかのぉ……」といつものゼンとは違う高い声が返ってきた。
「「え"?!」」
ゼンも性別が変わったのか?と驚いていると、パッと振り向いたゼンは骸骨では無かった。
「「え?えぇ?えぇーー!??」」
「ウソ?ぜ、ゼン?!」
「マジか?!」
「こんな事ある?」
「骨じゃなくなってるんだけど!!?」
そこに居たのは、赤い髪色で赤い瞳の女性だった。リオの髪色と同じような赤い髪色、クレイの瞳と同じような赤い瞳の色の女性の顔が、先程までは髑髏だったフードの中にあった。
「なんじゃと?!」
みんなが口々に言った言葉を聞き驚いた顔でゼンは自分の手を見て顔を触って、立ち上がり身体を見ると「か、鏡!鏡は無いか?」と焦った顔で聞いてきた。
先日ランちゃんに余分にコピーして貰っていた、宿で見つけた全身鏡を取り出すと、ビタッと鏡に張り付いて「なんと……」と、大きな目をさらにまん丸に開いて、まじまじと自分の顔を見ている。
「凄いね、骸骨じゃなくなるなんて……」
「ほんとそれな」
「俺らが飲んで変わったのが性別だったから、性別が変わるだけかと思ってたぜ」
「でもゼンは男性でしょ?なら女性になったのはある意味性別変わってるんじゃない?」
「いやいや、それだけじゃないけぇ」
「うん、肉体ができるとか凄すぎ」
「それな!」
こちらで話している間も、ゼンは鏡に張り付いたまま動かなかった。
暫く鏡を見ていたあと、ポツリと「私、可愛い……」と呟いた。
「「え?」」
「「ゼン?」」
「かなり好みじゃ……」
ゼンはそう言うと、鏡を見ながら今度は泣き顔、笑顔、怒り顔と色々な表情を作り百面相をしている。
「「……へ?」」
かなり今の顔が気に入っているようで、暫く百面相をした後こちらを向いて、「私、可愛すぎではないかのぉ?」と、ドヤ顔で言った。かなり気に入ったようだ。
確かにかなり可愛い。綺麗と可愛いが丁度いいくらいに混ざった美女だった。だが、それがゼンだと思うとかなり違和感があった。
「いや、可愛いけど……」
「俺はまだ骨じゃなくなってんのに違和感がある」
「うん……」
「ゼン、身体は大丈夫なの?」
「煙出てたんだよ?」
「そうだぜ、俺ら煙出てなくても息苦しかったのに……」
「うん……」
「うむ、今はもう問題無さそうじゃ!」
「そうなんだ?」
「それならいいけど……」
「急に変身薬飲むからびっくりしたよ」
「本当に!」
「てか、この変身薬改良して欲しくて来たんだけど……」
「む?何処を改良するのかのぉ?」
これはこれで完成品だと思うのじゃが……?と飲み終えたポーションの瓶を摘み上げて眺めている。
「性別変えたかったんじゃなくて、もう少し地味な顔に見えるように出来ないかと思って……」確かにこれはこれで面白いんだけど……と、サンは苦笑いで伝えた。
「地味な顔じゃと?元の顔は気に入らなんだかのぉ?」
「いや、気に入らない訳じゃなくて……」
サンは女性に囲まれて大変なことになり、姿を少し変えれるような薬が欲しかった事を話した。
「ふぉっふぉっ!それはそれは!」
「ゼン、笑い事じゃないんだよ……」
「すまぬな、それにしても、ふぉっふぉっふぉっ私のセンスは中々良いと言うことじゃのぉ」
困り顔のサンをよそに、モテモテだった話を聞いて、ゼンは「さすが私の渾身の作じゃ!」と満足気な顔をしていた。
思った姿に変身したり、せめて目の色や髪色を変えれるような薬は作れないのかとゼンに尋ねたが、ゼンは作った事がないから分からないと言っていた。
今回出来た失敗作も、ゼンにはとても興味深い薬のようだ。
骨の身体になってからホムンクルスの身体に魂を移行させる実験はしていたが、今の骸骨に受肉させるという発想はなかったようで、久しぶりに肌があると大喜びだった。
元々男性だが、女性の身体になった事は大した問題では無いようだ。
「顔は好みじゃし、身体も……」と着ていたローブの前をはだけると中は何も着ていない。
「ちょ、ゼンー!!」リオとノアは急いでゼンがはだけさせたローブをキュッと閉め、着れるサイズの服はなかったかと魔法腕輪の中を漁った。
服も着替えて落ち着くと、変身薬の作り方や材料もかなり詳しく尋ねられた。
本来作りたかった変身薬の材料も伝えたが、手に入らなかったムゲン草はゼンも持っていないようだった。
今回代用してこんな事になった材料も伝えてみたが、どの素材が性別が変わるのに作用しているのかは分からなかった。
代用だといって違う薬草を3種類も混ぜたせいなのは確実だと思うが……
その後、ゼンも手伝ってくれて、代用で使った薬草を1つずつ抜いたポーションも作ろうとしてみたが、姿が変わる効果が現れる物は完成しなかった。
代用品を3種類混ぜて作った、みんなの性別が変わってしまったポーション以外は、鑑定しても何の効果もない薬草の混ざった水と表示されるのみだった。
どうやら絶妙なバランスで仕上がっていた変身薬だったようだ。
「ふむ、なかなかに興味深いのぉ」
「ゼンでも出来ないことあるんだね」
「それはそうじゃよ、何でも出来るなら未だに色々研究しておらん」
「それもそうか!」
「でも、この薬、ゼンには良いんじゃね?」
「うん、変身する時ちょっと苦しそうだけど、この薬があったら人がいる所にも出かけられるね」
「うむ」
「確かにそうじゃん!」
「だな!」
「箱庭の皆にもゼンの事、紹介させてよ」
「でも女の子の姿で会ったらややこしくならないか?」
「でもまだホムンクルスの身体には移れないんでしょ?」
「う、うむ……」
「あー、なら平気か?」
「移れたら移れたで、変身薬飲んでたって言えばいいんじゃない?」
「それもそうだな!」
「そうだね!ゼン遊びにおいでよー」
「そうじゃのぉ……」
「今から行くか?」
「ポーションの効果時間、様子みてからの方がいいんじゃないか?ゼンは骨の姿見られるの嫌なんだろ?」
「そうじゃのぉ」
「それなら明日は?」
「そうだね!ちょうど明日はお花見する予定だし」
「ほう?おはなみとな?」
お花見が何かを説明すると、かなり興味津々だった。
今は女の子の顔だが、骨と違って表情が良く分かる。
ゼンは感情がかなり顔に出るようだ。
変身薬の効果がどれ程持つか等の様子を見て、人前で骸骨に戻ってしまわないように気をつけながら遊びに来てくれることになった。
「で、結局、地味目に変わる薬は無理かな?」と、サンちゃんは溜息を吐いている。
「材料が全部揃わないと無理かもね?」
「はぁ、だよな……」
「でも、さっき言ってた、目や髪色だけ変えるような薬なら出来るかも?」
「へ?リオ、マジで?!」
「なんか調べてたのに無かった?」
「あったか?そんなの?」サンは眉間に皺を寄せて腕を組んで考えている。
「なんか目薬作る材料に?副作用で色変わるらしいとか言ってるのなかったっけ?」
「あー!あった、ちょっと調べるわ!」
サンちゃんが調べ直してくれると、目薬も目の色が一時的に変わる物があった。目の色が変わるのは副作用だが、特に害があるようなものではなく、元々の薬も疲れ目を治すようなものなので、目が疲れてなくても使うのに問題はなさそうだった。
素材も足りそうなので、早速錬成空間を展開してその場で作り始めるのだった。
ゼン:変身薬とは、凄いものを作ったものじゃの。
それにしても、異世界の子達だからじゃろうか?やる事も、発想も突飛じゃのぉ…
いや、なかなかに面白いのじゃが、驚く事ばかりじゃ。
まさか私がこの歳になってこんなにも驚く事があろうとは思わなんだのぉ。
ふぉっふぉっふぉっ、これで人の姿にもなれるし、この子達のそばに居れば興味深い事もまだまだ多そうじゃ!
いつも読んで下さりありがとうございます!




