大魔盛期
「ロランさん、その大魔盛期とは?」
オズ兄様が問う。
「その名の通り、より規模の大きい魔盛期のことだよ。通常の魔盛期はだいたい10年ほどで終わるけれど、大魔盛期は長ければ50年近く続くこともあるらしいんだ。その上魔物の活発化も魔盛期より著しくなる」
え、それやばくない?
ロランさん以外の全員が呆然とする。
「既に魔物は活発化している。だから冒険者たちの活動範囲を制限しているんだ。1人でも、命を落とす者が減るようにね。だけど最近、押され気味なんだよ……」
「それは……まずいな……」
かなりまずい。
3ヶ月後にはバゴット王国がネリルランディアに向けて挙兵するのに。
…………あ。
「お父様……」
「どうした?」
「3ヶ月後に、バゴット王国がこの国に向けて挙兵するという情報が……」
ごめんなさい、まだ言っていませんでした。
案の定、お父様や叔父様、お兄様たちが頭を抱えて唸る。
「お前の情報はかなり正確だからな、きっとそれも本当の事なのだろう……。これはいよいよ、まずいどころではなくなってきたぞ……」
そもそも、魔盛期の原因って何なんだろう?
「ウロボロス、魔盛期の原因って何か分かる?」
って、生まれたばかりの魔剣に訊いてどうするんだ。
自分で自分にツッコミを入れてみる。
{主な原因は魔力の保有限界量を超えた魔力の暴走だ、我が主よ}
なんか答えてくれた!?
なんで知ってるの!?
{我が主がそのように我を生み出したからだが?}
え、そうだったっけ?
私、無限に変化する魔剣として生み出したはずなんだけど。
……え?
「なんで心読んでるの!?」
{読めなければ我が主の思う通りの働きが出来ないではないか、我が主よ}
確かに……。
ん?
「魔力の保有限界量って?」
{そのものが持てる魔力の限界量のことだ、我が主よ。この量を超えて魔力を保有することは出来ない。ただし、これは鍛えて増やすこともできるのであるがな、我が主よ}
へぇー、なるほどなぁ。
つまり、魔力を持たない人はその保有限界量がゼロ、というわけなのか。
{そして、この世界にも保有限界量がある。この世界の生き物たちは全て、世界が持つ魔力を取り込んで自らの身体に蓄え、それを消費して魔術を行使するのだ}
ふむふむ。
「待て」
どうしたのですか、お父様?
よく見れば、私以外の全員が呆然としている。
「おま、お前…………それは、今まで誰も知らなかった世界の真理ではないのか……?」
……え?
{当然だ。我は森羅万象をも司っているのだからな、我が主の父君よ}
…………え?
{続けるぞ。魔力は常に生み出されている。消費されてはいるが、生み出される量の方が多いのだ。結果、世界の保有限界量を超え、魔力が暴走する。これが魔盛期、ひいては大魔盛期だ、我が主よ}
……!
あああぁぁぁぁぁっ!
忘れてたあぁぁっ!
ウロボロスって象徴するものがやたらと多いんだった!
そうだよ、確かその中に森羅万象もあった!
私、とんでもないもの生み出しちゃった!
{……我が主、大丈夫か?}
ちょっといろんな意味で大丈夫じゃない……。
……待って?
「……ということは、ウロボロス、ある程度は魔盛期をどうにかできる?」
{ごく僅かであれば可能だ、我が主よ。何分、生まれたばかりなのでな。あまり役に立てず申し訳ない、我が主よ}
いや、すごく役に立ってくれてるよ。
お父様たちが燃え尽きそうになるくらいには。
「どれくらいの事が出来そう?」
{そうだな……溢れている魔力を取り込むくらいだろうか、我が主よ}
「少しでもいいから、お願いできる?」
{もちろんだ、我が主よ}
これでちょっとはマシになってくれるといいんだけど……。
「あ、そうだ。魔力を消費すればいいんだよね?」
{その通りだ、我が主よ}
「じゃあ、私も普段から魔術を消費するようにすれば少しは足しになるかな?」
{かなり僅かではあるが、足しになるだろう、我が主よ}
よし。
なら今からでも魔術をできるだけ使うようにしよう。
{他にも、各個の保有限界量を上げるという手もあるぞ、我が主よ}
なるほど。
〈月影〉のみんなにも頑張ってもらおう。
「これはまた……言葉にもならないよ……」
「これはさすがに、リリィだから、では終わらせられないな……。いや、リリィだから、ではあるのだが……」
ロランさんとお父様が顔を見合わせ、同時にため息をつく。
「ひとまず今日のところは戻って準備をせねばな、色々と…………色々と、な」
分かりました、分かりましたから私をジト目で見ないでください、お父様。
「まぁ、事前に分かって良かったじゃないか、テオ」
「確かにそうだが……はぁ……」
ロランさんの励ましに、もう一度ため息をつくお父様。
あ、そうだ。
「お父様、依頼完了の報告をしていません」
「あぁ、そういえばそうだったな」
「なら僕がやるよ。下に行こうか」
1階に降りて受付のカウンターへ……向かわず、とある部屋に入るロランさん。
「どうせ結果も凄いことになっているだろうから、個室で受け付けるよ」
さすがロランさん、分かっていらっしゃる。
ノベルアップ+で連載中の「常葉の枝」もよろしくお願いします。
(実は「常葉の枝」の方が個人的にお気に入りだったりする)




