オークの集落発見
「リリィ、オークは普通こんなにも大きな集団で行動することはない。調べるぞ」
「はい、お父様」
シルルが回収と解体を終えたあと、お父様はそう言って歩き出した。
私はその後をタマモに乗ったまま着いていきながら魔力感知を限界まで広げる。
途中でちらほらと感知に引っかかる魔物は、従魔たちに念話を送って討掃、回収してきてもらう。
それらの解体はもちろん、シルルのお仕事。
「リリィ、どうだ?」
「まだそれらしい影はありません」
「そうか……」
再び片っ端から従魔たちに魔物を狩ってきてもらうだけの時間が過ぎていく。
さっきの変な鳴き声の鳥のせいで警戒したのかなぁ。
感知に引っかかる魔物の数もいつもより少ない気がする。
「…………あっ」
「どうした」
「オーク、見つけました。右前方、16の群れです」
「わかった、行くぞ」
「はい」
[ぬ、少々待ってくれ、主殿。これをシルル殿に解体してもらうのだ]
ガサガサと低木を掻き分けて現れるアスラン……と、その上のドヤ顔なフワル君。
アスランの口にはワイバーンが咥えられている。
[任せるのー!]
「待てまさかそれはワイバーン」
[よいしょーなのー]
ワイバーンをアスランから受け取り、解体を始めるシルル。
……ん?
お父様、何か仰いました?
[ぺいっ!完了なのー!]
「ありがとう、シルル」
[どういたしましてなのー!]
亜空間収納に解体されたワイバーンをしまい、シルルにお礼を言う。
「お父様、オークを狩りに行きましょう」
「……あぁ」
釈然としない顔で走り出すお父様。
「お父様、今度の群れは何頭かわざと逃がしてその後を追ってみましょう。もしかしたら住処まで辿れるかもしれません」
「そうだな。ではそうするか」
「はい」
後ろを着いてきている従魔たちに念話で頼み、姿を隠してもらう。
「あと少しでオークにぶつかります」
「わかった」
亜空間収納から矢を取り出し、番える。
「見えた、あれだな」
「はい」
お父様が剣を構え、群れに突貫する。
お父様の技って、初見殺しだよね。
油断しているところに突然突っ込んでくるんだから。
「『風よ』」
番えていた矢を放つ。
亜空間収納から矢を取り出し、次々と放っていく。
「ふっ……!」
最後の3頭になった時、今まで一刀両断していたお父様が、腕を切り裂くに留め始める。
よろよろと後ずさる3頭のオーク。
トドメに1頭の眉間に矢を立ててやれば、残りの2頭はスタコラサッサと逃げていった。
シエルに念話を送り、後を追わせる。
「お父様、シエルを付けました。しばらくここで待ちましょう」
「そうだな。軽く剣の手入れでもするとしよう」
うーん、私は何をしよう。
ウロボロスは手入れ要らないんだよなぁ……。
矢でも作っておくか。
今回でけっこう使ったし。
その辺に落ちている枝を拾って魔力を流し、矢へと加工していく。
「またお前はそう型破りな事を……」
お父様が呆れているが、もう今更である。
私のことはそういうものだと諦めてもらう他ない。
もちろん、不特定多数には隠すけど。
ひたすら矢を作り続けていると、シエルから視覚が共有される。
あぁ、なるほど。
オークの集落を見つけたんだね。
…………待って。
この集落なんか大きくない?
集落というよりむしろ町だよ。
これ、さすがに私と従魔たちとお父様じゃ無理だよ。
「お父様、オークの集落を見つけたのですが……」
控えめにお父様に告げれば、お父様が眉をひそめる。
「どうした」
「かなり規模が大きいのです……」
「数は」
「少なくとも2000です」
「2000……アルと双子を合わせるとどうだ?」
「それでもかなり厳しいかと」
「やはり応援を要請すべきか……。ひとまずアルと双子と合流するぞ」
「はい」
オークの集落の位置を記憶してからシエルと従魔たちに念話を飛ばして呼び戻す。
その途中、シエルの視界でオズ兄様を見つける。
もう一度シエルに念話を飛ばし、オズ兄様を回収してもらう。
「お父様、オズ兄様はシエルが連れてきてくれるので、アル叔父様とギュス兄様を探しましょう」
「と、言われてもだな……。あいつら、どこに行ったのだ」
私も知りません。
魔力感知に意識を集中させる。
……うーん、引っかからない。
「ここは勘で行くか」
久しぶりに出たよ、王族の勘。
くるりと後ろを振り返るお父様。
「よし、右だ」
わぁ、テキトー。
「行くぞ、リリィ」
「はい」
まあ、いざとなったらシエルの視覚があるからなんとかなるよね……?
魔物をお掃除しながら進むことしばし。
「おや、兄上」
アル叔父様とばったり出くわした。
「アル、説明は後だ。ギルドに戻るぞ」
「分かりました。双子はどうするのですか?」
「オズはリリィの従魔が回収した。ギュスは今から探す」
「では少し左に行きましょう」
「そうだな」
アル叔父様も勘でいくんかい。
[クルルアァァーンッ!]
空からシエルの鳴き声が降ってきた。
着地したシエルから降りるオズ兄様。
「父上、一体何が?」
「それは後だ。ギュスを知らないか?」
「いえ、知りませんが……。左の方に行きましょう」
オズ兄様も勘だった。
しかもアル叔父様と同じ方向。
左に進むことしばし。
「父上?アル叔父上、オズにリリィまで……。これは一体……?」
「説明は後だ、戻るぞ」
駆け出すお父様に続くアル叔父様、お兄様たち、そしてタマモに乗った私と従魔たち。
お父様がかなり飛ばしたため、あっという間に森の入口へ。
そこからは駆け足で進み、門番に緊急事態だと言って門を急いで通してもらう。
幸い大通りは昼食が終わった時間帯で空いているため、そこも駆け足でギルドへ向かう。
まだ大通りにいた人たちは何事かという顔をするが、それを全て無視してギルドに駆け込んだ。
「ロラン!ロランはいるか!」
ざわめくギルド内。
……あ、やっば。
私まだタマモに乗ったままだし、なんなら従魔たちも着いてきちゃってる。
とりあえずいそいそとタマモから降りる。
「テオたちじゃないか、何かあったのかい?」
受付からひょっこりと顔を出すロランさん。
まだそこにいるんですか。
「リルの森でオークの集落を見つけた。かなり規模が大きい。即刻討伐隊を組むことを勧める」
「……詳しく聴こう。僕の部屋に来てくれ」
「ああ」
「あ、エリク、リリィちゃんの従魔たちを獣舎に案内してくれるかい?リリィちゃんの従魔たちは賢いから、分かってくれるよ」
「はい」
エリクさんというらしい真面目そうなギルド職員が近づき、私の前にしゃがむ。
「君の従魔たちはきちんと預かるからね」
「ありがとう」
にっこり笑ってお礼を言うと、エリクさんは立ち上がりつつ頭を撫でてくれた。
「みんな、エリクさんの言うことをちゃんときくんだよ」
こくこくと頷く従魔たちは、エリクさんについて外に出ていった。
「こっちだよ」
ロランさんに促され、4階まで階段を登……ろうとしてお父様に抱っこされ、グランドマスターの部屋へ。
「じゃあ、詳しく頼むよ」




