決意と説得、そして実力
セーフ!
連続投稿記録死守!
「よう、リリィちゃん…………またリリィちゃんがなんか連れてきたぞ!」
なんかってなんだ。
「最初はサブマス、その日のうちにスライム、そんでもって今度は男か」
「あいつ誰だ?」
「さあ?見たことねぇな。リリィちゃんの保護者かなんかか?」
やっぱり保護者に見えるのかね?
「やあ、リリィちゃん。今度はなにを連れてきたのかな?」
ロランさんまで……。
若干ロランさんの目が怖い。
これは……勘づかれたか。
「ちょっとお話したいことがあるんだけど……いいかな?」
拒否権ナシですね、分かります。
「わかった」
ロランさんがラスヴェトから鋭い視線を外さない。
「君も、来てくれるかい?」
「当たり前だ」
ラスヴェトが挑発するように返す。
ロランさんはそのまま踵を返していつもの部屋に向かう。
そしてやはり、いつも通り防音の魔術具を起動させる。
「さて、単刀直入に訊こうか。君は一体何者だ?何故リリィちゃんの傍にいる?」
やっぱり、勘づかれていたようだ。
まあ、ロランさんだもんなぁ。
「俺はラスヴェトだ。それ以外の何者でもない」
「ラスヴェト?聞かない名だね。というか、その前にまず答えになっていない。リリィちゃん、この男は誰なんだい?」
「ラスヴェト」
ロランさんの口調は厳しいが、そうとしか答えられない。
ロランさんは気づいているんだろうけど、言葉にしてはいけない。
言葉って、意外と重いものなんだよ。
「リリィちゃん、この男が一体何者なのか分かっているのかい?」
「分かってるよ。分かってて、傍に置いてる」
「何故?」
「いつか、私が必要とする時が来るから」
あの勘は、きっとそういうことだ。
「はっきり言うよ、リリィちゃん。その男は危険だ。傍に置くべきではないと、僕は思うよ」
本人を前にしてそう断言するロランさん。
「それでも、私はラスヴェトを傍に置く」
私もそれに反論するように断言する。
これは私の決めたことだ。
それに、ラスヴェトは危険なんかじゃない。
もう既に、ラスヴェトに愛着が湧いているってのもあるけど。
「リリィちゃん……」
ロランさんが困ったような顔をする。
ごめんなさい、ロランさん。
こればっかりは、譲れません。
ふぅ、とため息をつくロランさん。
「……ねぇ、ラスヴェト君、だったかな。リリィちゃんから離れてくれないかな?君はリリィちゃんの傍にいるべきではない」
「断る。俺は、リリィが望む限り傍にいると決めた。それに、今更元の場所には帰れん。……いや、そもそも俺に居場所などなかったな」
そこで自虐ネタを突っ込まないで、ラスヴェト。
困った顔が極まって、なんか筆舌に尽くしがたい表情になるロランさん。
「どうしても、かい?」
「ああ」
「うん」
私とラスヴェトは、同時に即答する。
それを聞き、見たことの無いほど顔を引き締めるロランさん。
「……リリィちゃんがこの国の王女だとしても?」
「ああ」
「うん」
知ってるよ。
知ってるうえで決めたもの。
「知っていたのか……」
それは私のセリフです。
「どう見ても、王族だろう。お前こそ何故知っている」
「……はぁ。わかった、話すよ……。テオやアル……テオデリック王子やアルフレッド王子とは、以前冒険者としてパーティを組んでいたんだ。髪と目の色の両方が金か銀、という貴族しか知らない王族の特徴はその時に知ったんだよ。リリィちゃんの色はまさにそれだろう?すぐにわかったさ」
なんと、お父様の元パーティメンバー。
というか、その王族の色の特徴って貴族しか知らないんだ。
その前に、ロランさん何歳?
むしろ、ロランさんこそ何者?
そして、アルフレッド王子って誰だ。
ツッコミどころ満載。
ラスヴェトからも唖然とした空気が漂っている。
「ねぇ、ラスヴェト。アルフレッド王子って?」
「……リリィの叔父に当たる人物だ。テオデリック王子の弟だな」
ハッとしたラスヴェトが教えてくれた。
「リリィちゃんの父親ってテオだったのか……ってことは、母親はアリア?」
「お母様も知ってるの?」
「知ってるよ。リリィちゃんの父親が惚気けてくれたからね。何回か会ったこともある」
初めて会う時に変な目で見ちゃいそうなこと言わんでください。
「……リリィちゃんが王女だと知っていて、それでもなお、近くにいると、傍に置くと、決めたんだね?」
「ああ」
「うん」
「はぁ……。二人とも本気かぁ。これはもう、僕にはどうにも出来ないなぁ……。好きにするといいよ。ただし、どうなっても僕には何も出来ないからね?」
「無論だ」
「わかってるよ!」
「…………それで、今日はどうするんだい?」
「ラスヴェトの冒険者登録と依頼」
「わかった。ついておいで」
ロランさんについて行き、1階でラスヴェトの冒険者登録。
流れは私と同じだったので割愛する。
いや、ラドさんの懐は痛んでないけど。
事前の話し合いの通り、ラスという名で登録した。
職業は私と同じ特殊。
「さて、Gランクのランク試験はどうする?」
「受ける」
だろうね。
ということで、ラスヴェトのランク試験が始まった。
相手はラドさん。
そして審判役はまたもやリックさん。
お世話様です、リックさん。
そしてロランさんの腕の中の私。
「始め!」
リックさんの合図で試合が始まる。
「おらっ!」
もはや見慣れてしまったラドさんの大剣が唸りを上げる。
それを、ラスヴェトは僅かに上体を逸らして避ける。
「うおりゃっ!ふんっ!うりゃっ!」
何度も何度も振るわれるラドさんの大剣。
しかし、それがラスヴェトに届くことはない。
ヒラリ、ヒラリと紙一重で全てが躱されていく。
「うっとお!しい!な!とりゃっ!」
攻めているのはラドさんなのに、追い詰められているのもラドさんだ。
「だぁっ!少しは!攻撃!してみやがれっ!」
痺れを切らしたラドさんが叫ぶ。
次の瞬間、避けるだけだったラスヴェトが前に踏み込んだ。
再び振るわれた大剣に短剣が沿わされ軌道が変わる。
見当違いの場所を切り裂く大剣。
ヒュンッと小さな空を切る音。
ピタリ、とラドさんの首筋には短剣が宛てがわれていた。




