初依頼で初討伐
リリィちゃん初討伐です
皆さんこんにちは、リリィことリリディアナです。
さて、私は今、何をしているでしょうか?
……正解は、ラドさんに抱き上げられて森へ向かっています!
もう街は出ました。
門番さんたちにはびっくりされたよ、もちろん。
だってどう見てもギルド職員の格好してる3人に3歳児がオマケでついてたらそりゃびっくりするでしょうよ。
しかもその子がGランクのギルドカードみせれば尚更だよね。
そして現在、ある1つの問題が浮上している。
3人が着ているギルド職員の制服は動きやすいデザインになっているので、そのままでも問題はない。
問題なのは私だよ!
ラドさん私を下ろしなさい!
歩けるから!
街の外で腕片方私で埋めてどうするの!
咄嗟のとき闘えないでしょうが!
「ラドおじさん、下ろして。自分で歩く」
「ダメだ。そしておじさんじゃねぇ」
「なんで、ラドおじさん」
「危ねぇからだ。おじさんじゃねぇ」
「腕片方使えない方が危ないよ、ラドおじさん」
「……大丈夫だ。おじさんじゃねぇ」
大丈夫なわけないし。
そしていい加減認めなさい、自分はおじさんだと。
「なんだろう、このなんとも言えないやり取り……」
「サブマスが遅刻してきたときもあんな会話してたわよ」
「あ、それ聞いた。それでギルマスが爆笑してたんだったっけ?」
「そうそう。面白かったわよ、見てるぶんには」
「へぇ、ちょっと見てみたかったな」
「あぁ、そういえばあの時いなかったっけ」
「うん、ちょっと外に出ててさ。帰ったとたん審判役してってギルマスに頼まれたんだよね」
「そうだったのね」
エラさんとリックさんはそんな会話をしていた。
「ねえ、いい加減下ろしてってば、ラドおじさん」
「下ろさん。おじさんじゃねぇ」
はぁ。
「あれさ、どう考えてもリリィちゃんの方が正しいよね」
「誰が聞いてもそうでしょうね。全く、なんのつもりなんだか、サブマスは」
お二人さん、それよりも助けてください。
本気でそう言おうと思ったその時。
[グルルルルウウゥゥゥゥ……]
10頭はいる狼の群れが既に前方近くに見えていた森から飛び出してきた。
3人はすぐに戦闘態勢に入る。
エラさんはレイピアのようなものを、リックさんは剣を構える。
ラドさんは私を抱えたまま背中にあった大剣を片手で構えた。
無駄に器用なことで。
というか、どんな筋肉してるんだ。
「ラドおじさん、下ろして」
「……そっから動くんじゃねぇぞ。そしておじさんじゃねぇ」
この状況ではさすがのラドさんでも私を下ろすという選択をとった。
だがおじさんについては頑なに否定する。
こんな状況でも。
「なんでこんな浅いところに……」
リックさんがポツリと呟く。
そのまま両者はじっと睨み合う。
……あれ、あの狼たち……。
私があることに気づいたとき、狼たちが一斉に襲い掛かってきた。
「うぉらっ!」
[ギャンッ!]
[ギャウンッ!]
ラドさんが先頭の2頭を薙ぎ払う。
「はっ!」
[キャンッ!]
エラさんが1頭の眉間を正確に突く。
「やっ!」
[ギャウッ!]
リックさんが1頭の首を深く切る。
[グウゥゥゥ……]
一瞬で4頭がやられ、唸り声を大きくする一回り大きい狼。
あれがボスだろう。
再び睨み合う。
膠着状態が続く。
ふむ、ちょっとエサをぶら下げてみようか。
テコテコとラドさんの前に出てみる。
「おい!下がってろ!」
「大丈夫」
「大丈夫じゃねぇ!」
案の定、狼たちは獲物がノコノコとやってきた、とばかりに飛びついてくる。
――――――かかった。
「水よ!」
魔力消費を抑えるため詠唱破棄ではなく詠唱省略をする。
ビー玉ほどの水の塊が狼の数だけ私の周りに浮かぶ。
指パッチン……は出来ないから、パァンッと大きく拍手を打つ。
瞬間、水の塊はピュンッと狼めがけて飛んでいき、その眉間を貫いた。
やっとラドさんはかっこいい所を見せられたのでした。一瞬だけ。




