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第3話 怒髪天プロデューサーの頭はハゲていて怒髪する髪はなかったがそれでも怒りは溢れていた

「おい! てめぇやっぱりインチキだったんじゃねーか!!」


 今年で38になる番組プロデューサー『芽田慕陸めたぼりく』は怒りの形相でマサシ少年の胸倉を掴んで怒鳴り散らした。

 芽田慕プロデューサーの最近の悩みは、めっきり薄くなった頭頂部の髪の毛、お腹に溜まった脂肪、妻に言われた「離婚しましょう」、右肩下がりの番組の視聴率、などなど盛りだくさん。それだけの過大なストレスに日々晒されていた芽田慕プロデューサーは、マサシ少年が番組を台無しにしたことに心底怒り、我を忘れていた。


「死ね! クソ餓鬼がぁ!!」


 そして、あろうことか齢14の少年をぶん殴ろうとした。冷静に考えれば、14歳の少年を大人が殴ったとなれば大問題。最悪の場合、職を失ってしまうかもしれないと予想が付くはずである。しかし、そんなことも考えられないほどに、芽田慕プロデューサーはキレて我を忘れていた。


「ひぃひいい!」


 マサシ少年の頭はまだ真っ白のまま。マサシ少年は怒り狂う芽田慕プロデューサーを前に、反射的に目を瞑った。


「ちょっと待ちなさい! 殴っちゃあかんよ!」


 まさに芽田慕プロデューサーがコブシを振りかざそうとしたその瞬間、番組司会の酒飲吐苦二郎が二人の間に割って入った。


「じゃますんじゃねぇええ!!」


 しかし、芽田慕の怒りは収まらない。相手が嘘つき超能力少年だろうとベテラン芸人だろうとお構いなしに暴れてやろう。そんな気概を感じられるほどだった。


「…………調子乗ってんじゃねーぞ? お前を潰すのなんか……簡単なんだぞ」


 酒飲吐苦二郎は他には絶対に聞こえないほどの小さくドスの聞いた声でそう言った。そのドスの聞いた声を聴いたとたん、芽田慕の怒りは一瞬で消えうせた。そして、そのかわりに恐怖と冷や汗がとめどなく溢れてきた。

 このとき、芽田慕は酒飲吐苦二郎の恐ろしさを肌で感じていた。酒飲吐苦二郎が本気になればプロデューサーの一人や二人簡単にやめさせることができる。事実、酒飲吐苦二郎は気に食わない番組スタッフを何人もやめさせたことがあるという。それに、なにやら怪しい組織に属しているという黒い噂もある。酒飲吐苦二郎に逆らうことはできない。そう判断した芽田慕プロデューサーにはもはや、“退く”という選択肢しか残っていなかった。


「は、はい……すいませんでした」


「わかればよろしい。ここでマサシ君を殴っても何の解決にもなりませんよ。それに、私にいい考えがあります。今から私の言うとおりにしてくれれば、とりあえず番組は何とかなるでしょうから、安心してください」

 

 そう言うと、酒飲吐苦二郎は不気味な顔でニコッと微笑んだ。そして、マサシ少年の方を向き、


「マサシ君、ちょっといいかな?」


 と言って、マサシ少年をスタジオ裏に連れて行った。


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