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第18話 始動

王都を取り囲んだハイランド軍は依然動く気配を見せない。


私の動きをミスカ卿が待ってくれているということか。

であれば私は急がなくてはいけない・・・・


シェリー様を助け出し、そしてジュヌーンの反乱を終わらせこの国をハイランドの支配に委ねる・・・

それが私の役目。


そんな焦燥ばかりがつのるある夜・・・・

事態が動いた・・・


深夜になってようやく私が寝室に入った時、突如それが起こった。

突然天井から音もなく人が降ってきたのだ。

そのわずかな気配を察知し私はとっさに大きく横に飛びのき、壁に立てかけていた剣をすくいあげた。

「お待ちください・・・」


天井から降ってきたその主の声は女性のものだった。

そして私はその声に聞き覚えがあった・・・・


「あなた・・・あの時の・・・・」


ジュヌーンの配下のリンの襲撃を受けたときに助けてくれた女性。

そしておそらくはその死体をガルフの馬小屋に入れ、罪を巧妙にかぶせたのもこの人だ・・・


「ジュヌーンの手のものがおりますゆえ手短に」


意図的に月光を背負う形でうずくまっているため、顔が見えない・・・


「明日・・・・王都の西はずれのカノン時計台に夕刻九の時にお越しください」

「・・・・・なぜ?」

「お探しの人の監禁場所が移されます」

「!!」

「これを着て目立たぬようお越しください」


女が床に置いたのは奴隷の召使が着る服だ・・・

「あなたは・・・」


その服に目をやり私は女に視線を戻した・・・そして絶句した。

いない・・・・!


次の瞬間

「ご無礼を・・・・」


ザクッ・・・

腰の辺りまであった私の金色の髪が肩の辺りからばっさりと切られた・・・・

「!!!」

私は叫び声を必死に押し殺した。


完全に背後をとられあろうことか髪を切られた!

これは完全に女がその気になれば私を殺すことが出来たと言うこと・・・


「美しい髪ですので目立ちます・・・やむを得ずこうさせていただきました。お許しを・・・」

女はそういうと音もなく跳躍し、天井に消えた・・・・


「・・・・・・・」

私はその場に立ち尽くすしかなかった。

これは罠??誰が誰に対して仕掛けたもの?


私は大きく息を吐き出した。

やめよう・・・考えてもきっと答えは出ない。

あの女の誘いにあえて乗るしかない・・・・・・


次の日・・・・

私はジャックとレイチェルをはじめ主だった軍の隊長たちを屋敷に招いた。


「大将・・・これは?」

並べられた贅を尽くした食事に大喜びする皆を見ながらレイチェルがささやいた。

さすがに彼女は冷静だ。


「今晩シェリー様を奪還する」

「!!」

「レイチェル・・・屋敷での大騒ぎで間者の目をごまかすのは限界があるわ。でも少しだけ時間を稼げればいいの。その間にシェリー様が奪還できれば・・・・」

「では私も一緒に・・・・」

「だめ、あなたにはお願いがあるの」


私はレイチェルに近づきささやいた。

「シェリー様の奪還が成功したらあなたはすぐに軍を動かして城外に脱出して」

「しかしそれでは大将が・・・」

「ジュヌーンの目をかいくぐっての軍出動は難しいことよ。私が騒ぎを起こしている間に伝令を飛ばすの。何のためにこの屋敷に主だった隊長たちを招いているかあなたならわかるでしょ?」


私は足元に小さく丸めておいてある布を目でさししめした。

「私の部隊の旗よ。この旗を高々と掲げればハイランド軍に攻撃されることはない」

「大将・・・・あなたは・・・・?」

「私はここの残り最後の仕上げをするわ・・・」


そういうと私はまだ何か言おうとしているレイチェルを残し、部屋に戻った。


宴が始まったらしく階下で皆が騒いでいる。

このあとの行動を踏まえて酒の類は一切だしていないが、随分と盛り上がっているようだ。

無理もない、最近は張り詰めることばかりだったから・・・


私はすばやく服を女が置いていった奴隷の召使服に替えた。

鏡の前に立つと昔の自分がいた・・・・


ただ1つだけ違うこと・・・・

目の光・・・・今の私には強い意思がある・・・


私は闇にまぎれて窓から外に出た。

目指すはカノン時計台・・・・・・




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