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勇者を庇って死ぬ当て馬キャラだったけど、物語の進みがおかしい  作者: エイ


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生まれ変わったけど、思ってたんと違う






『はい、お疲れ様~きっちり仕事をしてくれたから、神様も脚本どおりに世界が救われるって喜んでいるよ!ありがとうね、タロ君!』


「……は?……ああ、声の人っすか……あー俺死んだんすね」


 目が覚めると、いつかの白い光に包まれた空間に俺はいた。

 相変わらず軽いノリの声が聞こえて、俺は自分が死んだのだと理解した。


『そんでねえ、大変な役目を頑張ってくれたタロ君に、神様からスペシャルご褒美をあげてほしいって言われているんだ。次に生まれ変わるときに、なんでも欲しいオプションあげちゃうよ~。なにがいい?モテモテハーレム人生?魔法のチート能力もらってなんでも思い通り楽々人生?あ、もちろん生まれ変わらないっていう選択肢もあるよ。神様の庭でのんびり隠居生活とかもありかもね~』


「はあ……つーかレオは本当に大丈夫なんですよね?めっちゃくちゃ泣いてましたけど、アイツちゃんと立ち直ってあの子たちと幸せになるんですよね?」


『あーそっちの心配?大丈夫だよ~これで脚本通りになったから!さっき勇者の力も限定解除されたし、すぐに魔王を斃して、勇者君は、それぞれの女の子とたっくさん子どもこさえて幸せな余生を送る予定だから!』


「ああ……そっすか……ハハ……」


『だから君はこれから自分の身の振り方だけを考えてくれればいいよ~。さ、どうする?』



 相変わらず軽いな。でもまあレオは大丈夫らしいので一安心だ。


 俺また生まれ変わるとかアリなんだなあ。

 どうすっかなあ。でも生まれ変わらずに隠居生活とかは性に合わないな。でもハーレムとかチートとか言われてもなあ……気苦労多そうだしなあ……。



「……じゃあ俺、家族が欲しいです。大家族の家に生まれて、親や兄弟に囲まれて、お互いを慈しんで、愛して、大切にするような、そんな温かい家庭で育ってみたい。そんで、普通に恋愛して結婚して、たくさんの子どもの親になりたいです。願わくば、最後たくさんの子どもや孫に囲まれて生涯を終えたい」


『へ?そんなんでいいの?普通すぎてご褒美になんなくない?なんかもっとオプションつけようか?特殊能力とか、大金持ちとかさ』


「俺にとって、その人生は、普通じゃなくてものすごく贅沢で手の届かないものなんですよ」


 声の人は、『うーん、そーかー本人がそれでいって言うならいいかなーでも怒られるかなー』とブツブツ独り言をつぶやいていたが、しばらくすると『まあいっか!』となんとも軽い声が聞こえてきた。


『うん、じゃあ今タロ君が言った人生が、今回の働きに対する報酬ね!じゃあさっそくいってらっしゃい!もう会うことはないだろうけど、色々ありがとう、次こそはよい人生を』


 声の人がそう言って、いつかのように白い手が俺を光の中から押し出した。


 あ、落ちる。


 落ちていくような、吸い込まれていくような感覚に既視感を覚える。ああ、俺生まれ変わるんだな……と消えゆく意識の中で思った。





***




 そして現在。



 声の人は確かに俺の希望をかなえた人生をプレゼントしてくれた。


 そう、俺は大家族の家庭に生まれたのだ。


 希望したとおり、家族を慈しんで大切にする、温かい家庭に。


 でも、でもなあ……。



「リンた~~~ん。可愛い~今日も可愛いね~リンたん大好きぃ~」

「リンちゃんはあはあ……今日もいい匂い……」

「リンたん、おはようのちゅーは?」

「リン、お顔にいたんが洗ってあげるね」

「リンちゃん生まれてくれてありがとう!愛してる!」

「リンちゃんが可愛くて死ぬ……」

「リンちゃんは一生にいたんが守るからね!」



「にいしゃまたち、ちょっとはにゃれてくだしゃい。いきができましぇん」



 どうしてこうなった。


 毎朝毎朝、俺は七人の兄たちに起こされ、着替えからなにからお人形よろしく世話をされている。


 そりゃね、大家族の家に生まれたいっていったよ?


 そんでね、確かにこの家は、父さん母さん、今年二十歳の長兄、そしてなんと十五歳の七つ子の兄がいる、まごうこと無き大家族。


 父さんの名前はグレアム。母さんはアクア。一番上の兄はグラム。

 七つ子は、上からセンティ、ミリー、マイクロ、ナノ、ピコー、フェムト、アット。七つ子の兄さんたちの顔はそっくりなんてもんじゃない。七人並んでいると、『残像かな?』てくらいに似ている。


 七つ子ってすごくね?母さん儚げでほっそりした美人なんだけど、なにをどうやって七人も一気に産んだの?異世界だから産み方も違うの?


 まあ、男ばっか八人もいる家だけど、父さんと母さんも仲良しで、俺が生まれる前からも家族仲はすこぶるよい、仲良し家族で有名だったらしい。


 父さんは、ド田舎の小さな村の町長をやっている。対して儲かる産業もなく、ほそぼそと農地を耕して暮らしている若干寂れた村だが、犯罪もなく平和そのもので村人も皆穏やかで優しい。



特別裕福ではないけれど、これまでの人生から考えると俺の新しい生はものすごく幸せである。


でもね?

でもね?


なんで俺、女の子に生まれ変わってんの?!



ねえおかしくない?俺男にしか生まれたことないから、女子の体に違和感しかないんだけど?!前世の意識強すぎて、心と体が一致しないんだけど?!


 百歩譲って、女子にするんだとしたら、せめて前世の記憶をもっと薄めてくれよ。なんで百パー俺で転生させちゃうんだよ。違和感しかないよ。



 はい、現在の俺、三歳の女の子。リンちゃんでーす(涙)。







「リンちゃん、おはよう。あらあら今日も七つ子たちはリンちゃんにべったりね~。おかあさんもたまにはリンちゃんと一緒に寝たいわぁ」


「あ、かあしゃま。おはようごじゃいます」


 七つ子に囲まれている俺のもとに、朝のしたくを済ませた母さんがやってきたので挨拶をした。うーん、九人も産んだ人には見えない可憐さ。もしリーマンの頃だったら正直好みのタイプです。



 どうでもいいけど、俺まだ三歳だから口が回らないので、恥ずかしながら舌足らずなしゃべりです。メンタル成人男性としては恥ずかしいことこの上ない。


「母さんは父さんと一緒のベッドではないですか!夫婦水入らずでお休みになってください。リンたんのお世話は俺たちがやるんで!」


「ええ~おかあさんが女の子欲しいから頑張って産んだのにぃ~私ももっと可愛がりたいわぁ」


 毎朝恒例のことだが、俺を溺愛する七つ子の兄と、母さんとのリンちゃん争奪戦が始まる。

 それも仕方がない。自分で言うのもなんだが、なんせリンちゃんはものすごく可愛いのだ。


かあさま似の菫色の髪と瞳に、まっしろすべすべな肌。顔の造形は自分で鏡を見るたびに驚くくらい整っていて可愛らしい。だから余計にこの体が借り物のようで、どうも馴染めない。


 かあさまは男ばっかり八人生まれちゃって、どうしても女の子が欲しくて、高齢出産のリスク覚悟でリンちゃんを生んだらしい。


 女の子をお恵みください~って神様に一生懸命お祈りしたのよ~そしたらこんな可愛いリンちゃんを神様は授けてくださったの!と母さんは言っていたから、そのせいで俺は予定外に女の子で生まれちゃったのかもな。



 仲良しの大家族の家に生まれて、文句をいうつもりもないけれど、でもやっぱ男がよかったよ神様……。




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