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異世界生活の基礎知識  作者: 彩瀬水流
まだまだ知らないことがあるようです。
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魔法で遊ぼう

たいそうお久しぶりでございます……

あまりにも間が空きすぎて、文体とか変わってるかもしれません。


 流石というかなんというか、真っ先に立ち直ったのはアジュラで

「お、オルハ、様? その、我を慮っておられるのならば、不要というかお気になさらずとも……」

 おろおろとそんな言葉を紡ぐ。

 いやそうは言うけどね。

「だってさ、色々と都合がいいからってたまたまここが居住地になっただけでしょ。で、ニーアの守護する場所だったから、わたしが好き勝手することで結果的にニーアだけ力が増した。ああ、ニーアが悪いって言ってるんじゃないよ。でも、そういう意味ではジオラ達が『狡い』って言ってたのは間違いじゃないわけだ。本人に責のないところでそこに格差ができるのは、()()()()嫌なんだよ」

 これはわたしだけの感覚なのかもしれないけど。

「オルハ様……」

 あ、ニーアがしょんぼりしてる。誤解させたかな。

「ニーア、あんたが悪いわけじゃないって言ったろ? まぁアジュラのとこは難しいかもだけど、ジオラのとこや風の長のとこにも可能性はあったかもしれないってことを言いたかったんだ。だって女神様とライの力を以ってすれば、どこにでも住もうと思えば住めたはずなんだから。ライ、そうだよね?」

 視線を向けると、ライは素直に頷いた。

「水底でも天空でも、住むだけなら住まわせることができたよ。でも君はそれを良しとしないでしょ。ここには『人生を楽しむために』来たんだから」

「うん。畑作って、採取して、狩りをして、街に行って。そういう生活を送るなら、地上が一番適してるよね。だから今のはただの可能性の話。だけどね、風の長」

 不意に自分に話を振られたからか、自分を指差して首を傾げる。

「そう、あんた。ただの可能性の話だとはいえ、あんたにだってニーアと同じようなことが起きたかもしれなかったんだよ。わたしの望みを思えばここになるのは必然だったから、そこはまあ申し訳ないけどどうしようもないところではある。なら分け与えてくれてもいいだろうって思うかもしれない。だけどね、ニーアは最初からわたしを認めてくれてた。まぁちょっと持ち上げすぎだと思わないではないけど、ちゃんと向き合ってくれたよ。だからわたしもニーアの力が増してるって聞いても、どうにかしなきゃとは思わなかった。ニーアはニーアで、あんた達が来るのを拒んだりはしなかったよね。だけど、もしあんたのとこにわたしが住んでいたら、どうだっただろうね? だって、わたしをただの人間と侮りながら、自分の利となる力だけを受け取ろうと……掠め取ろうとしていたんだから。わたしにはそれが許せなかった。そういう話だよ」

 そう締め括ると、何か考えるように顔を伏せた。

 もっとも、これだけ言われて何も考えないんじゃ終わってるだろうけど。

 しかしまあ、久しぶりにたくさん喋ったな。流石に喉渇いた。

 とんとんと胸元を叩いていると

「オルハ様、これを」

 さあっ、とジオラが小さな水球をいっぱい浮かばせた。

 目の前でふよふよしているそれに食いつくと、ぽんと口の中で弾ける。

「わ。」

 ぱく、ぽん。ぱく、ぽん。

「わ、わ、わ」

 楽しー!

「お気に召しまして?」

「面白いねー! こんなこともできるんだ」

 流石水の長。

「オルハ様ならできるのではないでしょうか」

「そうですわね。オルハ様なんだかんだ器用ですし」

「あら、そうなの?」

「ええ。あたくしが実際見たのではなくて主からの又聞きなんですけど、魔力を雨のように降らせたこともあるのですって」

「ええと……。『雨を』降らせたのではなく?」

「らしいですわよ? しかもオルハ様自身は見魔ではありませんわ」

 それを聞いたジオラが、こめかみに指を当てて考え込んだ。

「……つまり、具現化するのが得意ということですね?」

「そういうことになりますわね」

 顔を見合わせて、何やらうんうんと頷いたかと思うと、揃ってくるっとこちらを向いた。

「ではオルハ様、やってみましょうか」

 良い笑顔で言っても無理だからね?

「そんなお手軽に言われても」

「お手軽ですわよ?」

「簡単な話です」

 真顔で口揃えない。

「まずですね、小さな水滴をイメージすることはできますよね?」

 まあ、雨粒みたいなもんだよね。

「その水滴がわずかな衝撃で弾けると思えばいいのです」

 ……だからよ。

「それ説明になってない」

 こてん、と首を傾げる美女2人。

 これ以上の説明をしようがない、と言わんばかりに眉がハの字に下がる。

 基本的にこの2人って似てるんだよな。

 性格はラテン系とヨーロッパ系って感じがするけど。

「んー……水風船とかならできそうなんだけどなぁ」

「「水風船?」」

「こういうの」

 と、手の中に生み出した水の球を、すぱーんと風の長に投げつける。

 不意打ちもいいとこ、見事に命中したそれはキレイに破裂。ずぶ濡れになった。

「ッてめ、なにすっ……!」

 喚きかけて、ライの目線に黙った風の長を無視して2人に向き直る。

「とまあ、こういう感じでね、子どもの水遊びの1つだったのさ」

「あらでも、オルハ様の世界には精霊はいないものでしたわよね?」

「うん。だからこういう……」

 ひょい、と手の中に水風船を“複製”する。

「この風船、伸び縮みする薄い膜みたいなモノだから、簡単に破れるんだよね。それを今みたいに投げつけあって遊ぶんだよ」

 あれ地味に遊んだ後のゴミ拾いが面倒なんだけどね。

 当然遊んだ本人達にやらせてたけど。

「おるは、あれもできるんじゃない? 指鉄砲って言ったっけ。あれで魔力の代わりに水飛ばすの」

「……それはそれで水鉄砲ってのがありましてね」

 まあ、これまたプラスチックなんていうこの世界にない素材で出来てたけど。

 えーと、あれの構造は……っと。

「こういうやつ」

 ひょい、と再び複製したものを手の中に出すと、ご新規さん3名の目が、完全に点になった。

「……さっきの、気のせいかと思いましたけど。違いますのね。これ、なんですか?」

「だから水鉄砲」

 ジオラの視線が、困ったようにニーアに向いた。

「オルハ様、ジオラが言いたいのはそうじゃないと思いますわ」

 はて、とジオラを見ると、こくりと頷く。

「……ああ、『複製』だよ」

 やっと質問の意味がわかって、笑顔で答えたものの、ますます困惑した顔をされた。

 なぜだ。

「主……?」

 ジオラがその困った顔をライに向ける。

 流石にまだ顔は直視できないっぽいけど、視線を向けることはできるようになったらしい。

 ……まぁ、あれだけ威厳とか諸々破壊されたらそうもなるか。

「困ったことに、おるははこの世界にはないものでも作り出せてしまうのだよ」

 全然困ったような表情じゃない。むしろドヤ顔。

「既に『複製』の域を超えておりますわよね」

 ニーアももうそれが当たり前と言わんばかりの顔だ。

「でも、わたしが構造とかちゃんと理解してるものしか無理だし」

「このぷらすちっくがどうやって作られてるかはわからないって言ったくせに」

「それ言うなら金属も複製できないってことになるでしょうが」

「あ、そうか」

 つまりは『こういうもの』という、概念と言えばいいのか、そういったものをだせるんだと思うんだよ。

 多分水鉄砲の構造を知らなかったら、『水鉄砲の形をしたプラスチックの塊』が出てきたはずだ。

「だからこれはね、ここに水入れてね。……こうだ!」

 当然というか、標的は風の長。

 飛距離も威力もないのがわかってるからだけどね。

 案の定、ぴしょん、と一応飛んだ水は、風の長の足元にも届かなかった。

「あー、そっか、そういうことか。ということは、こうでこうすれば……。ていっ」

 水鉄砲のはずのそれから飛び出したのは、正しく水でできた『弾丸』。

 木の葉に当たってパッと散る程度の強度だけど、多分これ、わたしのイメージの仕方でどえらい威力になると思う。

 だってほら、ウォーターカッターってあるよね。あと時間はともかく水滴で石に穴が開くんだから。

「流石ですわオルハ様」

「先程のも同じようなものですわよ?」

「いや、うまくイメージができなくて」

 2人揃って、また首が傾ぐ。

「先程葉に当たって散りましたでしょ? あんな感じで食べた時に弾けるようにすればいいだけですわ」

「んん、んーーー?」

 いやだからさ。

 口ん中で爆発するとか、物騒すぎて……あ、待てよ。

 昔、炭酸飲料のCMであったな。白く弾けるなんとやら。

「ということは、こう……」

 某炭酸飲料のCMを頭に描きつつ、魔力を水滴に変換。

 ジオラのように多くないし大きさも整ってないけど、某CMがイメージ元なのだから仕方がない。

 試しに口に入れてみれば、シュワっと泡のように弾ける。

 うん、サイダーだ。

「できましたわね」

「うん。弾け方はちょっと違う気がするけど」

「そうですの?」

「うん」

 なにせイメージが炭酸飲料だ。

 頷くと、ぱくん、と口に入れた2人が目をぱちくりさせた。

 さっきのジオラのは、まるでポップコーンが弾けるみたいに、ぱちん、と弾けたのに、私のは、しゅわしゅわするからだと思う。

「これはこれでまた……」

「これはどういうものですか?」

 気に入ったらしく、次々口に入れるニーア。

 対するジオラは見つめたりつついたりと観察するのに忙しい。

「炭酸水って言うんだけど、ええと……こっちには無い、のかな……?」

「仮にも水を司る精霊の長たる私が知らないのですから、無いのだと思います」

 顔を見合わせるわたし達の後ろでは、妙にハイテンションなニーアが、アジュラに飲ませようと大騒ぎしている。

「待て、我は別に水は飲まずとも……むしろあまり」

「だーいじょーぶ! これほとんどオルハ様の魔力の塊ですもの! 美味しいわよ!」

「いや、その、……っ!」

 開いた口に、ニーアが指で弾いた水滴が吸い込まれた。

 けど、特に何も起こらないってことは、問題ないんだろう。

「ライに作ってもらった温泉は炭酸泉だった気がするんだけど」

「温泉?」

「え?」

 待て、もしやこっちにはそれも無い?

「ライさんや?」

「なにかな?」

「もしやこちらには温泉というものが無かったりするのかな?」

「熱い水、っていうのはあるよ。でもそれって、水とはいえ火の力が宿ったものだから、ジオラには認識できてないかも。それに身を浸すとか自殺行為だし」

 つまり熱湯しか無いんだな?

「こっちに無いもの作っちゃ駄目でしょう」

 仮にも創造主なんだから!

「それ、おるはにだけは言われたくないなあ」

 憮然とするライの後ろで、長たち4人+ティン、ルチル……つまりわたし以外の全員が頷いた。

 くっ……!






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