リン登場です
地面に座り込んで震えている学生に俺が歩いて近付いているとケビンが走って来た。
「教官殿お怪我はありませんか?」
「あるわけ無いだろ?あの程度の相手に」
ケビンは呆れた様に俺を見る。
「あれでも帝国の中では2番目に強いはずなんですが……流石は教官殿です!」
「それはまぁいい、それで?こちらの被害は?」
「人的被害は軽傷者が数人いますが戦闘に支障をきたす程ではないかと」
「ふむ…まぁそれぐらいはしょうがない、それで?他の被害は?」
「はっ!特にありません!」
俺が満足気に頷くとケビンも報告が終わった様で「失礼します!」と頭を下げて他の騎士達の方へ戻った。
ケビンに邪魔されたが気を取り直して俺は学生達の元へ向かった。
俺が学生達に近付くと震えながら完全に怯えた目で俺を見ていた、俺は学生達をぐるりと見渡して1人だけ怯えた目をしていない学生が居たので話しかける。
「君の名前は?」
「僕は鈴木士郎です」
「君達は学生の様だが何故ここに居る?」
「分かるんですか!そうなんです!僕達は学生なのに…ほんと、なんでなんだろう…」
鈴木士郎と名乗った学生は疲れ切った顔をして俺を見上げる。
「聞いてくれますか?正直僕達も何が何だか分からないんです」
「あぁ、話してくれ」
それから学生達がここまで何をして何をされてここに居るのかを聞いた。
「なるほど、じゃあ今は俺の奴隷になる訳か」
「え?そうなるんですか?」
鈴木士郎は目を見開いて驚いた顔をする。
「あぁ、俺がお前達の主人を殺したからな」
「僕達はどうなるんでしょうか?」
鈴木士郎だけではなく他の学生も不安そうな顔をしている。
「え?そんなの解放するに決まってるだろ」
こんな何十人も面倒見切れん……
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」
鈴木士郎は頭を下げて礼を言う。
他の学生達も不安そうな顔から嬉しそうな顔になった。
「それじゃ、解放するから」
俺はまず鈴木士郎の首輪に神気を集めた指で触れる。
指で触れた首輪はビシ!と音がすると同時に首輪が外れた。
「よし!大丈夫だな、この調子でドンドン外すから並んでくれ」
学生達が列を作って並ぶ俺は次々と学生達の首輪を外していく。
暫くすると列もはけたので周りを見渡すと1人だけ倒れて動かない女子学生がいた。
俺はその女子学生の側に行き脈などを確認する。
「脈は大丈夫だな、気を失っているだけか」
女子学生の髪が顔を隠していたので抱き上げて髪をかきあげて顔を確認すると。
「!まさか…リンか?」
その女子学生は俺が日本に居る時に俺がパトロンをしていた孤児院の子供だった。
孤児の中でも特に俺に懐いていて俺もつい可愛がっていた娘だから数年会ってないが顔を見たらすぐに分かった。
「痣と傷だらけじゃないか!」
リンの怪我や傷が他の学生達と比べると一番酷かった。
俺は直ぐに首輪を外し手や足も確認したが傷や痣がない場所が見当たらない程だった。
「帝国のクソが!取り敢えずアレを使うか」
リンを左手で抱き上げて右手に【無限収納】からエリクサーを取り出しマリアやカレンに使った様に口移しで飲ませた。
周りの女子学生がキャーキャー騒いでいるが気にしない。
暫くするとリンが気が付いた様でゆっくりと瞼を上げる。
「気が付いたかリン」
「誰?」
「寝ぼけてんのか?起きろリン」
俺はリンの頬をペチペチと優しい叩く。
「分からないよ…誰なんですか?」
リンにそう言われた時、あっ!と思い出した今俺の体は神が混ざっているからハーフっぽい顔つきになっているんだった。
「俺だよ、ユウ兄ちゃんだ」
「そんなわけないよ、ユウ兄ちゃんはそんなに若く無いもん」
可愛がっていた娘にまさかのグサリと胸を刺す口撃に俺はorzの姿勢で膝から崩れ落ちた。
「まさか本当にユウ兄ちゃんなの?マジで?」
「マジだ!まったく、折角助けてやったのにありがとうの一言くらいは言いなさい!」
「そうなの?うん、それはありがとう」
「まったく…まぁいい、これからどうするかをみんなで話し合うみたいだからお前も混ざって来なさい」
「は〜い」
俺がリンを見送るとネルがいつの間にか隣に居た。
「ご主人様、今の娘は誰ね?」
「昔孤児院で可愛がってた娘だよ」
「ご主人様…」
ネルがジト目で俺を見上げる。
「おいおい、何か勘違いして無いか?リンは孤児院の中で俺に一番懐いてたからお菓子や他の物を買ってやたりしていただけだぞ!」
「まぁ、そういう事にしとくわ」
ネルから変な誤解を受けたっぽいがそれは夜にベットの上でしっかり解いておこう。
その後暫くの間俺はネルと話しながら学生達の話し合いが終わるのを待った。




