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違和感だけが残った日

初めまして、担々鍛造です。

ゲームやSFが好きで、日常に潜む“異物感”を描いていきます。

よろしくお願いします。

目を開けたとき、天井がやけに白く見えた。

蛍光灯の光がこんなに眩しかっただろうか、と僕はぼんやり思う。

気づけば、自分の部屋のベッドに寝ていた。

制服のまま。靴だけ脱がされている。

――どうやって帰ってきたんだっけ。

昨日の放課後の記憶が、ところどころ抜け落ちていた。

夢を見ていたような気もするし、誰かに呼ばれたような気もする。

でも、どれも霧の奥に沈んでいて掴めない。

ただひとつ、胸の奥に“違和感”だけが残っていた。

身体が軽い。

頭が妙に冴えている。

視界がクリアすぎる。

僕は凡庸な中学生だ。

運動も勉強も平均より少し下。

特別な才能なんてない。

だからこそ、この“変化”が気味悪かった。

「……寝不足だったのかな」

自分に言い聞かせるように呟いて、机に向かう。

宿題をやる気はなかったが、なんとなく数学の問題集を開いた。

――気づいたら、全部解き終わっていた。

しかも、解いている間の記憶がほとんどない。

手が勝手に動いたような感覚だけが残っている。

「……嘘だろ」

僕の字じゃないみたいに綺麗で、計算ミスもない。

こんな集中力、僕にはなかったはずだ。

胸の奥の“違和感”が、さらに強くなる。

そのとき、窓の外から声がした。

「おーい! アンタ起きてんの!」

幼馴染の 美咲みさき だ。

赤い髪を揺らしながら、乱暴に窓を開けてくる。

「昨日、急にいなくなるから探したんだから! 何してたのよ!」

「……いや、僕もよく覚えてない」

「はあ!? アンタは、ほんとバカなの!?」

怒鳴りながらも、どこか心配そうな目をしている。

美咲は昔からこうだ。

口は悪いが、僕のことを放っておけない性格だ。

「まあいいわ。学校行くよ。ほら、早く!」

強引に腕を引っ張られ、僕は玄関へ向かった。

――その瞬間。

美咲の手が触れたところだけ、妙に温度を感じた。

皮膚の感覚が鋭すぎる。

まるで、触覚の解像度が上がったみたいだ。

「……美咲、手、冷たくない?」

「は? 普通だけど?」

僕の感覚がおかしいのか。

それとも――。

考えようとしたとき、校門の前に“誰か”が立っているのが見えた。

黒髪の少女。

見たことのない制服。

無表情で、静かな目をしている。

美咲が眉をひそめる。

「……誰、あの子?」

少女は僕たちの方へ歩いてきて、軽く会釈した。

「……おはようございます」

それだけ言って、すれ違うように校舎の方へ歩いていく。

美咲が小声で言う。

「転校生? なんか変な子ね……」

僕は返事をしなかった。

少女の声は淡々としていたのに、

なぜか胸の奥がざわついた。

――初対面のはずなのに、どこかで会ったことがあるような。

そんな感覚だけが、妙に鮮明だった。

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