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第百二十七話やっぱコミュ強というより距離感バグってるだけだよね

「あー……まず、皆の体調は大丈夫か?」

 俺がぶん投げたスタングレネードにやられたのだ、激しく体調を崩した者がいないか確認する。


「最悪、頭キンキンする」

「ちょっと目が回っています」

「俺も頭痛がする、耳もこもった感じだ、休みたい」

「ボクはちょっと離れてたからもう大丈夫かな」


 アーリ、ハスク、クイラ、アーシェス、それぞれの体調確認である。


 とりあえず今日の所は俺の情報と、各々の武器のことを知れた。


「こりゃ、今日の連携訓練はもう終わりかな、無理しても仕方ない」

 レキ先生も多大なダメージを受けた筈、そんな中で観てもらうのも申し訳ないため、その日は解散となった。


◇◇◇◇


 普段は夕食の鐘が鳴ってからトレーニングを切り上げ、公衆浴場で汗を流す。

 凄いことに銭湯のようなお湯が張られた大きな浴槽がある本格的な物だ。


 今日は鐘が鳴る前に切り上げたので、手っ取り早く公衆浴場で汗を流し、ヤミ姫様を探す。


 ゴーン、ゴーン、ゴーンと夕食を報せる鐘が鳴る。

 とりあえず、食堂へ行くことにする。


 そこでヤミ姫様を探し、すぐに見つける。

 スミーアとミリルナと3人で随分親しそうにしている。


 席に着いたヤミ姫様の近くに俺も座る。


「ヤミ姫様、今後はパーティが別になるので、その件で食後にお時間をください」

 俺が誘うと、首肯を返してくれる。


「わかりました、ですが、まずは夕食のマナーのおさらいからですが」

 扇子と鋭い視線が俺の食卓へ向けられていた。

 ペシリ、と俺が肉料理を食べようとしたところを叩かれる。


「あ、そうだ、ヤミ姫様が良かったら、王都迷宮パーティの1人、一緒に食べていいか?留学生でシャル王国流のマナーが不得意らしい、ヤミ姫様に教えてもらうんじゃなくて俺が叩かれるのを見れば多少勉強になるんしゃないかと……」

 ヤミ姫様へアーリの事を相談してみる。

 ヤミ姫様様の眉が上がり、不機嫌メーターが振り切った。


「アルファさんって……結構サイテーな人ですね、留学生ってことはアーリさんとハスクさんのどちらかでしょう?マナーを間接的にとはいえその2人に教えるのは、嫌です」

 そう言って、早々に立ち上がり夕食も途中で出て行く。

 その後ろにスミーアも同じだとばかりについて行く。

 ミリルナは少しオロオロしたが、ヤミ姫様とスミーアの方へ走っていった。 


 うーん……友人関係って難しい。


◇◇◇◇


 ヤミ姫様達が食堂を出た後、俺もすぐ後に食堂を後にする。


 自室に戻ると、部屋の前にヤミ姫様がいた。


「ヤミ姫様……どうしてここに?」

「アルファさんでしょう、夕食後、時間を欲しいと言ったのは」

 ヤミ姫様に問い掛けると俺が誘ったのを律儀にも守ってくれたらしい。


「すみません……あの別れ方で来てくれるとは思ってなくて……」

 実際今もご機嫌斜めな様子である。


「貴方が呼び出すんだもの……必要なことなんでしょう?」

 食堂では怒り心頭だったヤミ姫様が、今は優しく話す。

「ありがとうございます……今後の警備の件でお話したくて……グラウンドに行きましょう、今なら誰もいないはず」



 日が暮れ、灯りがなければ何も見えないグラウンドをライトで照らしながら進む。


「足元、気を付けてくださいね」

 グラウンドの隅にある俺の射撃訓練場に到着する。

 射撃訓練場といっても、金属製の人型のプレートを3体置いてあるだけだ。


「ヤミ姫様……これから先、学院生活を送るにあたって、王都迷宮実習のような、俺と離れる事が多くなると思います、だから、護身用の銃を渡したいと思います」

 ライトを向けていないヤミ姫様の表情は分からない。


「これから渡すのは対人用の威力も射程距離も短い物です」

 そう言って、俺はワルサー PPKをインベントリから取り出す。


「あくまでヤミ姫様が最低限身を守る為の銃です、間違っても魔物には使わないでくださいよ、反撃されます」

 そして、俺は歯に絹を着せぬ本心からの言葉を贈る決心をする。


「ヤミ姫様が……竜血と間違われてさらわれた時……俺は……泣きそうなくらい心配しました……」

 大の男が何を言っているのかとはおもうが、そのくらい心配したのだ。


「でも、学院生活ですら、ヤミ姫様を護ることができない……そこで、ヤミ姫様には自分の身を最低限護ることができる銃を渡します」

  ワルサーPPK――007のジェームズ・ボンドの銃として世界的に有名な銃で、ヤミ姫様には.32ACPという低威力低反動のモデルを渡す、.32ACPは米国などでは威力不足として公的機関では使われないが、日本の警官の持つセミオートマチック拳銃の弾として使われているので、威嚇射撃などには十分なハズ。


 今回は小さなブリーフケース型のカバンに予備の弾倉2つと共に収納れている。


「……貴方の奇跡のそれは、無闇に使わないようクギを刺されていたと思いますか?」

 相変わらず表情の見えないヤミ姫様か問い返す。


 まぁ、確かにそうなんだが、先例としてルミがいるし、あの旅をした仲間は特別だ。


「ヤミ姫様を護るのに刺された()()なんて、すぐ抜きますよ」

 ブリーフケースを開けて、ワルサーPPKのマガジンを取り外し、薬室内の弾丸を取り出して、弾丸が発射されない事を確認した、ヤミ姫様の手に握らせる。


「ヤミ姫様が自身の身を護れるようになっていただきます、これから最低限操作方法と狙った所へ当たるよう、訓練してもらいますよ」

 ヤミ姫様が抱き着いてくる、呼吸を感じると泣いてる?


「ちょちょ、姫様!?どうしました!?」

 どうすればいいか慌てる。


「アルファ……さんは……ひっく……いつもそうです……皆がもう殿下としか呼ばない私を『ヤミ姫様』って呼んでくれて、本気で私を心配して……」

 そうか、そういや他はヤミ殿下かヤミ様呼びか……

 結構気にしていたのだろうか。


「当たり前でしょう、王位継承権とか、性別とか、何にも関係ない、同じ釜の飯食った仲間でしょう」

 ヤミ姫様が俺から離れる。


「……はい!……じゃあ!この武器の使い方を教えてくださいな!」

 先ほどまで震えていた彼女はワルサーPPKを、構える。


「まず基本的な事からお話しますね、銃っていうのは、必ず実弾が入っていると思って取り扱ってください」

 その後は物分かりのいい姫様ヘ、基本的な取り扱いをしっかり教える。


 1つ、銃には必ず実弾が装填されていると思うこと。

 2つ、銃口は何があっても、撃ち殺す相手以外に向けないこと。

 3つ、安全装置を外す時は確実に発砲すると決めた時にしか外さない。

 4つ、人差し指は必ず発砲する直前までトリガーには掛けない。


 ――その他諸々、様々なことを詰め込んでいく。


 射撃すると右手に力が入りすぎて所謂ガク引きになってしまったり、構えた時にカップアンドソーサーになってしまったりなどがあったが、すぐに覚えてしまう。


「ヤミ姫様、1番覚えていて欲しいのは、銃を撃つことじゃなくて、危機から逃れることだということを忘れないでくださいよ、第1は逃げる事、第2は隠れる事、第3は本当にどうしようもない時に戦うというのを肝に銘じてくださいよ」

 俺の言葉にヤミ姫様は真剣に頷く。

 ヤミ姫様の手に握られているのは武器なのだ、使わないに越したことはない。


「弾丸は1つのマガジンで7発、予備のマガジンは2本で装填済みと合わせて21発です、無頼の暴漢1人を返り討ちにはできるでしょうが、野生動物や訓練された兵士には全く役に立たないと考えてください」

 俺が普段腰に下げている9mmパラベラム弾の半分以下の威力しかないのだ、近距離で1人や2人の相手はともかく、この世界の飛び道具への一般的な対処方『ビビらず走れ』ができる奴なら自分が倒れる前に攻撃がされる。


「アルファさん、本当にありがとうございます、貴方に授けられたこの奇跡の武器、無駄にはいたしません」

 ヤミ姫様が神妙な顔で宣言した。

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