16 プリンセスは知っている
プリエステスは思い出していた。
積もる話をプリンセスとしているとき、プリンセスが教えてくれた。
「いいこと、プリエステス。プリエステスが首都に来ている間に、プリンスはきっと、探索者登録をする。そのときに名前を登録しなきゃいけないんだけど、プリンスのことだから、絶対悩む。悩んで、悩んだ末に、安易な名前にする。例えば『プ』を取って『リンス』のような。
チャンスをみてなんとしてでも、名前の当てっこをするのよ? ご褒美をかけて。きっと、(クスクス)プリンスは(クスクス)『リンス』にする!」
○
なんで、わかるんだ? まさか、協会の受付嬢から聞いたのか? 二人は友人だった?
人と人とのつながりはわからない……
「……なぜわかったんだ? 協会に知り合いがいて、そこから聞いたのか?」
「まさか、いるわけ、ないじゃありませんか。私の勘です。すごいでしょ。女の勘をなめてはいけません」
プリエステスはそう言って、満面の笑みを浮かべる。
見えなかったが、恨み顔の黒髪女性の姿が頭に浮かんだ。怖い。
「いや、こ……すごすぎる……」
「それでは、私の名前を当ててみてください」
首を傾けながらプリエステスが問う。
わかるわけがない。ヒントはないのか?
「ヒントは、リンスさん!」
心を読まれた! 俺の心を読むことができるのか? 読心術は今まで聞いたことがないが……きっと偶然だ……
ヒントはリンス? 俺への呼びかけだった? なんだ、それは。わからない……
「降参だ。名前を、教えてくれ」
「答えは、シャンプーです!」
そう言って、探索者証を出して俺の前に突き出して見せる。たしかにシャンプーと書いてある。
まさか、リンスとシャンプー? なにそれ?
偶然……のはずがない。
リンスに名前を変えると、あらかじめ予想していて、首都で探索者の名前をシャンプーに変えたんだ! どうしてそんなことができる? ……プリンセス……プリンセスだ。妹が入れ知恵をしている。間違い、ない。さすが……妹だ……
ということは……プリンセスに俺の行動が読まれている……ということは? 俺の優柔不断が知られているわけか…………女の勘は怖い……
そのとき、俺は再び、黒髪で目つきの悪い女性を思い浮かべてしまった。俺をなぜか、恨んでいる女性。
「ごめんなさい」
反射的に言ってしまう。
しまった、えっと、どうしようかな、今の発言。
プリエステスは驚いた表情を一瞬したが、
「ご褒美、忘れないでくださいね。そのうち、リクエストするので、覚悟してください」
そう言って聞き流してくれた。笑顔が怖い。
俺は、元プリンス。
しかし、もう、その威厳はない……
開いたジョハリの窓は、俺はわからないが、みんなは知っている窓だったのか……




