吾輩は全て愛される世界になってほしいのである。①
新しい部下が配属された。
ラブラドールのゴン太くんである。
先日の大脱走事件で犬達は全匹お縄となった。
しかしその哀れさが人々の同情を引き、殆どがこの町で飼われる事となる。
幸いなことに、狭い檻へ入れられまともな食事を与えられなかっただけの彼等。
特に殴られるなどといった暴行の後は見受けられない。
同じ虐待でも痛みを伴う行為は受けなかった模様。
そのせいか、人間に対しても特に警戒心があるわけではなかったのだ。
寧ろ人懐っこく、直ぐに飼い主が決まった。
そしてこのゴン太くんは、盲導犬教育を受けていて大変賢い。
残念ながら中途半端な訓練を積んでいたため、本物の盲導犬にはなれない。
しかしながら頭の良さを買われ、商店街のマスコットとして飼われることに。
それも放し飼いで。
客寄せパンダとはまさに彼の為にある言葉だな。
本来リード無しで犬を飼う事は禁止されている我が国。
彼は特例で警察にもキチンと許可を受けている。
尤も、その他のバカ犬は全て鎖に縛られたのだが……
そして彼は今回の騒動を解決したのが我輩と勘違いしている。
そのせいか、忠臣の如く従順で思い通りに動いてくれるのだ。
非常に有難い。
只、毎回顔を合わせるときに舐め回されるのは勘弁願いたい。
ベチョベチョになるし、その……クッサイから。
当初は商店街のアーケード下しか行動を許されなかったゴン太くん。
町の協力もあり、公園に立派な犬小屋が建てられた。
今ではすっかり癒し系キャラとしての地位を確立。
毎日彼を探索する人間までいる始末。
これは商店街だけではなく、町にすら様々な恩恵をもたらす事となる。
彼のおかげで人々が表に出始めたのだ。
いつもなら家から一歩も出てこない者まで巻き込んでの熱狂ぶり。
となれば、彼の行動範囲内にある商店や自販機も人が集まり潤い始める。
知らないうちに経済効果を町全体へともたらしていた。
これには町会長をはじめ、商工会の会長も大喜び。
きっといつか彼の銅像が建てられると思うな。
まあ、愛されるのは悪いことではなかろう。
きっとその事が我輩の仕事に役立つとおもうから。
誰にでも愛されるゴン太くん。
実は彼に反感を抱くものも少なからず存在。
いつものバカ猫達である。
ニャゴローの言う事は聞く癖に自分達には冷たく接する彼。
時にはその牙を剥くことも。
勿論それには理由がある。
当然原因はバカ猫達に。
結果、逆恨みをしているだけだった。
―― つづく ――




