吾輩は金儲けの道具ではないのである!③
「ニャ~ン」
「このネコちゃんカワイー!」
我輩はまだ猫カフェにいた。
劣悪環境と言われ、業務停止命令まで食らったこの店を調査する為に。
だが、飼育されている猫達を見てふと思う。
訪れる客は癒しを求めて対価を払う。
受け入れる従業員や経営者は報酬を求める。
ギブアンドテイク。
これぞウインウインの関係。
但し、人間のみ。
飼いならされた猫達。
商品にされた猫達。
玩具にされる猫達。
束縛される猫達
彼等は牙をもがれた小さなハンター。
確かにここで人間に媚びを売れば食いっぱぐれる事など皆無。
生きていく上でそれもまた一つの選択。
それに人間を持て成す、相当ハードな重労働を熟しているとも言える。
ある意味サービス業のプロフェッショナルとも。
仕事師の観点から見れば尊敬以外の何物でもない彼等の働きぶり。
しかし野性の観点からはどうだ?
猫のプライドと天秤に掛けろなどとは言えないも、少しぐらいは・・・。
その点、我輩など自由奔放。
家に帰れば美也殿に愛想を振りまき、小織殿には太鼓持ち。
仕事と称して外へ出ればほぼ毎日誰かに捕まって酷い仕打ちを・・・。
食べ物は自力で各家庭を訪ねて恵んでもらう事に精を出す。
時には公園でいつ何時置かれたか分からないカリカリを・・。
・・・。
アレ?
なんか我輩の方が惨めでない?
恵んでもらうって・・・それこそプライドは?
カフェで働く猫達は、その報酬として食と住を。
我輩は・・・恵んでもらう?
人間に愛想を振りまいて?
それっていわゆる八方美人的な・・?
いや、それだけではないぞ!
時には魚屋や肉屋から自力で・・・
た、確かに他の猫達を騙しておとりに使うかもだが・・。
い、生きるのはそれ程までに大変な事なのだ!
だ、だから決して惨めなんかではない!
カフェで働く猫達に劣ってないぞ!
そんな我輩は今、ニャン吉に化けてカフェに侵入している。
お客達から餌を貰いつつ内定調査。
け、けっして楽に食べ物を貰おうといった魂胆じゃないんだからね!
我輩はプライドの”バケモン”なんだから!
こうして極悪環境と言われている店の事などそっちのけとなり、自身のプライドをよそに今日も外で空腹が満たされるのであった。




