それから 2
本日二回目の更新です
「ふふっ……」
「ん? ……何だ、どうしたフィー? 急に笑って」
「……二年前の事を、思い出していたの。貴方と、イシュマや皆と、出会った頃の事を」
「出会った頃? ……フィーがこの国に来たばかりの頃か?」
「うん。……色々あったよねぇ。イシュマと出会って、各国の王様達に能力を調査されて、ソドウィザムに来て、騎士になって。そして……旅団の任務の中で、レンやスイ達、珍獣を保護していった」
「……そうだな。この二年、色々あったな」
「うん」
イシュマの言葉に頷いて、私は白い壁と壁の間にあるステンドグラスを見上げる。
そしてその向こうにある空を思い浮かべ、目を閉じた。
あれから。
数日後、また旅立った私達は、フローラリースという、能力調査の場で我らがソドウィザムの王セイヴィリム陛下と、トゥイタギアの王様の間に座っていた女王様の国へと赴いた。
その国の、大森林と呼ばれるこの世界最大の森で、まるで隠れるように活動する怪しい集団の調査を頼まれたのだ。
その集団は魔獣の生体調査という活動名目のもと、魔獣を弱らせ、生きたまま捕らえては切り刻み、苦しむ様を観察するという、酷い事を行っていた。
いくら魔獣は人を襲う存在だとはいえ、弱り、無抵抗になった魔獣にそんな事をするのは、正しい行為とは言えない。
たとえ野に離せばまた人を襲うとしても、痛みに苦しむ姿を観察するなんて良くない。
私達騎士は人を守るため魔獣を倒すけど、少なくとも彼らのようなそんな下衆な真似はしないし、魔獣とはいえ、悪戯に命を弄ぶような行為は許せない。
そう判断を下した私達は集団を捕縛し、その国の騎士団に引き渡した。
集団に捕まっていた魔獣は……野に離すわけにもいかず、可哀想だけど、その国の騎士団によって処分された。
苦しめず、一刀のもとに倒された事が、せめてもの救いだったと信じたい。
そして、その中に一匹だけ、レンやスイのように、人を襲わない魔獣がいた。
檻から出してもただ立ち尽くしていたその魔獣は、私の勘によって処分に待ったをかけられ、後にそうだと判断され、旅団に引き取られる事になった。
普段は狼のような姿をしたその魔獣を、私はロウと名付けた。
ロウは好きなときに二足歩行の人狼に変身できて、力持ちな為、崖崩れなどの復旧作業では大活躍している。
そうして三匹に増えた私の獣達は、新たにその存在の呼称を珍獣と改められ、少しずつ少しずつ、人々に受け入れられ始めている。
どういうわけか、人狼に変身した時のみ人の言葉を話せるロウによると、初めは人を襲う魔獣でも、ふとした瞬間に人に対する敵意が消え、珍獣となる事があるそうだ。
レンもスイも、そうだったらしいという。
魔獣については今だに謎が多いけれど、その事実が知れた事は大きな前進だったと思う。
それからも、皆と一緒に、色々な場所へ行き、色々な事があった。
そして……。
「イシュマ、フィー? そろそろ時間だって~!」
「え、もうそんな時間?」
「らしいな。……じゃ。お手をどうぞ? 花嫁殿?」
「! ……あはは。はい、旦那様?」
コンコン、と扉を叩くノックの音と共に聞こえた声に我に返り、扉へと体ごと目を向ける。
そして、柔らかな笑顔を浮かべたイシュマからスッと差し出された手を取って、私は立ち上がり、歩き出した。
扉を開けて、厳かな雰囲気の大神殿の廊下を、二人並んで歩く。
イシュマは、式典用の騎士の正装。
私は……真っ白なドレス姿。
今日からはまた、新しい日々が始まる。
陛下や団の皆、そしてレンやスイやロウの待つ聖堂へと、私達はゆっくりと進んで行った。
平凡娘、これにて完結です!
実はこれが、葉月の初の投稿作品であります。
ここに至るまでに色々ありましたが、いやぁ、無事に完結して良かった、良かった。
さて、この話に関しては、読者様にご迷惑をお掛け致したと、ちょっと反省しております……。
何しろ、途中から書き方変わってますからね!
楽なほうに無断で変えましたよ、ええ!
……申し訳ございませんでした……。
最後に、平凡娘をお読みくださって、ありがとうございました!
葉月の他作品も読んでお楽しみ戴けたら嬉しいです!