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エイボンのブックス!  作者: 真実の王っぽいワーグナーっぽいの
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ノーデンスの章

ノーデンスを端的に解説

旧神のトップでニャルラトホテプ一味の天敵、以上

「義手ってさ……萌えるよね?」

 授業の合間の休み時間……いつも通りの雑談でふと思いついたことをいつも通りに言ってみる……

「ごめん、お前の唐突な発言には慣れたつもりだったんだが、僕はまだまだだったらしい……」

 どうやら特に理由もない肘鉄並みには予想外だったみたい。スタロ警戒でサイク2から大嵐をしてスタロを撃たれる位に予想外だったみたいだ。

「というか、なんで義手なんだよ」

 何でって……決まってるじゃん……!

「あのね、ぼくとしては義手義足なんて纏めちゃう人はどうかしてるよ! 義手は義手! 義足は義足でしょ!」

「そういう問題じゃねぇよ」

「義足つけた子も別にいいけど、助けてあげないとっていう保護欲で萌えるんだよ! でも義手は全然違ってどっちかというと自分が手伝ってあげているっていう支配欲で萌えるんだよ!」

「よく分からないと言うことが分かった……とにかくその演説をやめろ」

「でもね、義手義足両方は流石にぼくでも萌えるのは……ねぇ」

「……ひょっとしてお前は人としてフルカウント止まりかもしれないと思い直したくらいに比較的普通だな……」

 フルカウント止まりって既に人として2アウト2ストライクって事だよね? ……酷くない?

「だって痛々しいし……」

「O2B3ぐらいだな」

 ストライクが2つ減ったということは出塁して更にボールが3つ溜まったみたいだ

「それに……萌え属性を詰め込みすぎちゃいけないし」

 あっちゃんが夜神さんちの新世界の神みたいな視線でぼくを睨んでいる……遠回しに疲れてるんだからツッコミを休ませろと言われているような気がする。

「あ、念のため言うけど、片手片足ぐらいしかぼくは萌えないよ? それ以上だと……やっぱり……」

 やっぱり……ねぇ?

「ぼく自身が片手か片足の変わりになるのがいいんだから、それ以上は萌えないね」

「お前は人として3アウト、チェンジだ」

「えっ……酷くない」

 ノーストライクから一気にアウト判定を受けちゃった……じゃっじー!



 そして午前中の授業が終わり、昼休み…………ぼくはとんでもない事を忘れていた……ナンテコッタイ、お財布もお弁当も……ない……

 ちらりとあっちゃんの方をみる……目が合った。あっちゃんが好きだということには気付いてないけど、ひょっとしたらという別の事に気付く……

 あっちゃんも……忘れてきたんじゃないか、と……

 いやいやいや、しっかり者のあっちゃんに限ってそんなオカルト笑止で有り得ない……だったらよかったんだけどね……

「すまん、ユウ……お金貸してくれ」

 どうやらぼくらは運命共同体みたいだった……

 視線だけで財布が無いという事を伝えると、絶望した目で仲のいい女子2人組の方をチラ見した……放って置いたら悪魔と契約しかねない追い詰められようだった……まあ、それは僕も似たような状態だけどね

 どうしようかと考えていると、突如見知らぬ誰かによって教室のドアが開かれた……お弁当を片手に

「お兄ちゃん! お弁当忘れていってたよ! わたしのお兄ちゃんへの愛妹弁当だよ!」

「私も少し作った……」

 クラスが急に静かになった……まあ、それはそうだろう。美少女姉妹が誰かにお弁当を持ってきたのだ。……あっちゃんのうちに居候している子にお弁当を一個賭ける。

 そして案の定、物静かでどちらかというと目立たない方がこっそりとあっちゃんの机に置き、またまたこっそりと相方の元へ帰って行った

 用が済んだらしく、姉妹が踵を返したのでやっと空気が戻る、と思った矢先に、姉妹が入ってきた方とは反対側のドアが開き、ヴォルヴァドスさんが入ってきた……それはそれとして、昨日はお楽しみでしたね、ムフフ……

「ユウ殿! 弁当を持ってき……た……」

「あ、ありがとうございます」

 お弁当を持ったまま固まったので何事かとヴォルヴァドスさんの視線の先を見れば、あっちゃんちの姉妹がいた

「あなたは……」

「……あの時の?」

 どうやらヴォルヴァドスさんとは面識があるみたいだ。それはそれとして、焦るヴォルヴァドスさんもそれはそれで良かった。

「ななな、何ゆえに貴様らがここにいるのだ! つぁ……っ!?」

「……目立ちたくないので屋上に行きましょうか……ねぇ、あっちゃん達も行こう? どういう状況か分かんないけど」

 有無を言わさない言葉で、ざわめいているクラスからお弁当片手に脱出した……それはそれとして、後で良い船なナイスボートエンドになりそうだ。


「で、いったいどういう事なんだ? ツァール? ロイガー?」

「あ、あっちゃんがが仕切るんだ……ぼくはどっちでもいいけど」

 まあ、ぼくが仕切ってムフフな所をエンドレスエイトするよりはましだとは思ったけど。

「手っ取り早く」

「再現……?」

『ヴォルヴァドスの手と足を取って胸を揉んで』

 是非お願いします! と、被害者がヴォルヴァドスさんでなかったら間違いなく、何の迷いもなく言っていたと思う……まあ、ヴォルヴァドスさんだから迷った結果言わないことにしたけどね。

「させぬ! 絶対に再現などさせぬ!」

 案の定、うぶなヴォルヴァドスさんは拒否したみたいだけど。残念

「……で、いったい何があってどんな事をやったんだ?」

「経緯については拙者が語ろうぞ……あれは今からひと月前……」

 要約すると、ヴォルヴァドスさんがはるばるグン……ミャンマーから日本に来た双子の姉妹(どうやら邪神みたい)を撃退しようとした結果、敗走したらしい。何があって敗走したかはヴォルヴァドスさんの口からは語られなかったけど……残念。

「で、何があったかは」

「まず先にわたしが手足を押さえて」

「私が揉んだ……」

『それでその後交代して』

「もういい分かったやめろ」

 ここからが本番いいところだったのに……それはそれとして、ヴォルヴァドスさんがトラウマを刺激されてうつろな瞳でブツブツと何かを呟いているのは止めた方が良さそうだ。

「ヴォルヴァドスさん?」

「……やめろぉ……そこは駄目だ……拙者の胸に触るな……それ以上は……っ」

「ヴォルヴァドスさぁん!」

「はっ……我ハ正気ニ」

「ヴォルヴァドスさん!」

 うつろな瞳に感情の無い声で正気発言をしたので、肩を揺さぶって正気に戻す……

「すまぬな……拙者が弱い故に」

「あなたの弱さが敗北させたんじゃありませんよ……あなたが弱かったんじゃなくて相手の双子邪神姉妹ツァールちゃんロイガーちゃんが強かっただけです!」

「ただ単に開き直ってるだけじゃねぇか!」

 あっちゃんに鋭いツッコミチョップされれてしまった……それそれ(略称)、チョコと言うべき所をチョップとごまかすような子は大抵可愛いと思う。

「ところでヴォルヴァドスさん……もうツァールちゃんとロイガーちゃんを退治するつもりはないんですよね?」

「まあ、な……拙者はあんな辱め、もう二度と受けたくないからな……」

「じゃあ……」

「仲直りの」

「しるしに」

『肩を揉んであげる』

「おいお前ら……」

「…………いや、良い……拙者がよからぬ事をされる予感がした」

 まあ、卑猥なる双子の異名を持つらしいツァールちゃんロイガーちゃんの姉妹だ。どさくさに紛れてよからぬ事をするだろう。胸揉みとか胸揉みとかよからぬ所を触ったりとか。

「そう」

「だったら……」

『マッサージを』

「だから待てよおい」

「なあユウ殿……」

「なんですか?」

「この袋小道から脱出するには何をどうすればよいのだ?」

「微妙に変化しているので何度も繰り返せばきっと脱出できる可能性がありますよ。小数点以下いくつの確率で……小数点以下は切り捨てられますけどね」

「それは実質0割ではないのか?」

 ……勘の良いヴォルヴァドスさんは嫌いです……バスにゃんの信者やめてヴォルヴァドスさんのファンになります。

「とにかく、ヴォルヴァドスさんもツァールちゃんとロイガーちゃんも、お互いに約束しましょうか……病めるときもヤンデレる時も永遠にぼくと一緒に居ることを」

「それは……」

「……嫌です」

「だからまだ時期早々だというておるだろうが……」

 邪神3人に拒否られてしまった……ナンテコッタイ……まあ、ツァールロイガー姉妹はあっちゃんにベタぼれだし、ヴォルヴァドスさんもぼくにデレてはいるけどそういうのはまだまだポクテ……奥手みたいだし仕方がないよね

「……ツァール、ロイガー、ヴォルヴァドス、そしてクティーラの旧支配者と旧神の絆など所詮我の計画の前には前戯に過ぎん」

 他に誰もいないはずの屋上なのに、どこからか少女……いや、女の子? これも少し違うか……少し年上ぐらいの女の人の声が響き渡った……

 それはそれとして、今なんか卑猥な単語が聞こえて来たような……

「の……ノーデンス殿!?」

 声のした方向に振り返ってみれば、女の子が立っていた……フェンスの上に……普通にうちの制服を着ている事とアホみたいな場所に立っている事以外の特徴をあげるとすれば、髪や肌が真っ白で右手が銀色の籠手のような義手で……そして瞳はまるで血のように赤い薔薇のような色……まあ、血のような色でも良かったんだけど。あと肩よりも遥かに長い髪だけど、校則ダイジョーブだっけ? 学校の発展に犠牲は必要らしいから仕方がないね。

「深海の大帝が……」

「どうしてここに?」

 ツァールロイガー姉妹がお互いに抱き合いながら、ノーデンスに問いかける……それはそれとして、いいものを見させてもらった……

「我が何故この様な場所に、か……教えてやろう、それはな」

「さっき何を言いたかったのかは分かりませんけど、前戯ってえっちい単語ですよ?」

「…………我がこの地に降り立った目的、それはな……」

「それと、こっちに風邪神2人いるのにあえてバランスの悪いフェンスの縁に乗る意味はあったのか?」

「我の目的はな……」

「ノーデンス殿! かの時の鎧は如何なものだったのだ! お陰で拙者はなんの罪もない旧支配者に怪我を……」

「ええい、黙って聞かぬか凡愚共が!」

 あまりにも話を聞かないからとうとうノーデンスさんがブチギレてしまったようだ……これだから大人は駄目なんだよ……味方をも凡愚呼ばわりしちゃうし……

「我の目的、それはな! 旧支配者達の切札、クトゥルーの秘姫、クティーラとやら、貴様を封印することだ!」

 そう言いながら、ノーデンスさんはぼくの方を左手に掴んだ杖で差した……あれぇ? ぼくはいつの間に

「な……」

「……なんだってー」

「どういうことなのだ! 答えてくれぬか! ユウ殿!」

「……二重に間違ってるな」

「……ふっ、いずれわかるさ、いずれな……」

 ノーデンスさんの言葉に対し、ぼくが冤罪だと分かっているからか凄い棒読みで驚くツァールちゃんとロイガーちゃん……そしてぼく以上に驚くヴォルヴァドスさん……そして呆れながら間違っている事をボヤくあっちゃん……そして意味が分からないからよかれと思って誤魔化すぼく……

「ぐ……ヴォルヴァドス! 何故に気づかぬのだ!」

「違う! ユウ殿はただの人の子だ!」

「黙れヴォルヴァドスよ! 何の根拠があってそやつを人の子と見なすのだ!」

「昨夜一晩を共にした相手故に、邪神か人の子かなど、はっきりと分かっておる!」

 ……ノーデンスさんがフェンス上でずっこけそうになった……どうやらえっちい言葉には耐性がないようだ。それはそれとして、ヴォルヴァドスさんが予想外に天然ですごく幸せです。

「そうですよ! ぼくとヴォルヴァドスさんは昨夜同じ布団で密着して一夜を共にしたんですよ! これなのに気付かない理由がありますか!?」

「間違ってないのかもしれないけどもっと言い方ってモンがあるだろ!」

 ぼくの追撃によってノーデンスさんは屋上から転落しそうになった……というかいまも片手でぶら下がっている、一歩間違えば転落しかねない危険な状況ではあるけど。

「さて……ノーデンスさんは勝手に足止めされているみたいなので……逃げますよ!」

「逃げるのか?」

「拙者の説得も無意味だった故に逃げるほかあるまい……逃げるぞ、ツァール! ロイガー!」

「はいはいオ~バ~ブースト~」

「……あらほらさっさ~」

 ツァールちゃんもロイガーちゃんも、何を言いたいのかがいまいち分からない……きっとあっちゃんなら分かってると思う。きっと……

「で、どこに逃げます?」

「任せろ! 僕に良い考えがある!」

 あっちゃんの発案だし、きっと大丈夫な場所に行くんだろう……そう思っていた。



「で、何でボクを振ったはずのアツトクンが新しいハーレムメンバーの姉妹と友人と旧神を引き連れてこの生徒会室に来たのかな?」

 生徒会室の室内なのに、ご丁寧にも生徒会長の腕章をつけた少女(あからさまに中学生くらいなのだ!)がぼくら……特にあっちゃんを睨みつけている……そんなにあっちゃんがノックをしなかったのが気に入らなかったのかな?

 ちなみに生徒会長さんは黒髪で黒縁眼鏡、制服も黒のセーラー服……黒ずくめの生徒会長とでも言うべきだろうか?

「それは……とにかく、頼むから昼休みが終わるまでで良いからかくまってくれ」

「……はぁ……で、一体何に遭遇して何と戦っているんだい?」

 生徒会長さんが額に青筋を立てながら、あっちゃんに対して尋問する……その様子をぼくがお弁当を食べながら見ていると急に生徒会長さんににらまれた。

「そこのキミ、お弁当を食べるならトイレか空き教室にいって食べてくれないかな?」

「あ、少し食べます?」

 そう言って普通としか言いようがないお弁当の中から焼き鮭を箸であげようとしたけど、更に睨まれてしまった……そして、ぼくを睨みつつもあまり大きくなかったとは言え、一口で焼き鮭一切れを完食した。

「このしゃけ……焼き加減が奇跡としか言いようが……はっ、この程度でボクを買収しようなんて思わないでくれないかな! ボクを買収したかったらせめてその美味しそうな出汁巻き卵を」

「はい口開けてください」

 性欲に忠実すぎるぼくが言うのもなんだけど、この人はあまりにも食欲に忠実過ぎるんじゃないかと思う。しゃけと出汁巻き卵で買収されようとしているなんて……

「あーん」

「はいどうぞ」

「む……出汁のとりかたは完璧……この卵もなかなか……でも微かに香りがついている……おのれ、この生徒会長、青木世界ことニャルラトホテプの味覚と嗅覚を試そうというのか!」

「ニャルラト……」

「ホテップ……?」

 ニャルラトホテプって? ああ! それってハネクリボー?

「なかなかの味覚のようであるな、ニャルラトホテプ殿……拙者の作ったその料理の隠し味をおぬしには当てることが出来るかな?」

「分かった! アトラさんの秘蔵のお酒、それを数滴だね!」

「これはこれはお見事……持ち主までピタリと当ててしまうとは……」

「お前ら、なんでこんな時にフードファイトをやってるんだよ……」

 あっちゃんに呆れられてしまった……別にぼくはフードファイトをやっていたわけじゃないしただ賄賂を渡していただけだからね……



 一方その頃屋上では……

 ノーデンスが一向に屋上に這い上がれずに苦戦していると、たまたま屋上に来た少年と少女に引っ張られる形で、なんとか這い上がってきた……

「礼を言おう、人の子よ……」

「あ、いえ、困っている人を放っておけるわけがないじゃないですか」

「まあ、そいつは厳密には人では無いがな」

「あ……え?」

 少女が少年に対して、ノーデンスが人ならざる者という事を言う……まあ、それで少年が焦るほどヤワな教育は少女から受けていないのだが。

「まあ、それはそれでいいんですけど、あなたはなんでここに? ただの生徒さんじゃ無さそうですし……」

「うむ、我はとある邪神を追わねばならぬのだ……」

「そうか……で、その邪神とはどのような邪神だ? 場合によっては元邪神ハンターのわたしが手伝わなくもないが……」

「我はクトゥルーの秘められし姫、クティーラを追っておる……」

「く……クティーラですか……?」

「……だが、なぜクティーラを追っているのにこの学校にいるのだ?」

「クティーラは学舎にいるからだ」

「……まあ、1人で頑張れ、ノーデンス殿よ……それと、ニャルラトホテプなら生徒会室に」

「なん……だと……? 承知した……さらばだ人の子よ」

 そう言って、ノーデンスは2人を置いて屋上から去っていった……

「なあ、レンカ……何故にこの学校には邪神の類が多いのだろうな……」

「えぇっと……それは僕に聞かれても……というか沙耶さ……あ、沙耶の方が同じ学年だし僕よりは知ってると思うんですけど……」



「なるほろ……ろーれんすがはっひおふひょふへ」

「ちゃんと食ってから話せ」

「ここでは……」

「……リントの言葉で」

 ぼくには何となく分かったんだけどな、ニャルラトホテプさんの言ってる言葉。『なるほど……ノーデンスがさっき屋上で』……らしい。

「んん……ノーデンスがさっき屋上でクティーラを狙っていると」

「ノーデンス殿に拙者がユウ殿はそもそも邪神ではないと言ったのに聞く耳を持たぬようで……」

「へー……大変だね、アツトクン」

「お前ノーデンスの前に差し出してやろうか?」

 あっちゃんが鬼おこだ~どうにかして宥めないと~

「んん! 喧嘩はいけませぬぞ! アツト氏!」

「喋んな」

「赤モップな雪男なんてありえないんだから!」

「そう、今の時代は緑の恐竜……」

「拙者とどこか被っていて……少し腹立たしいのでやめてくれぬか?」

 うわぁん、みんなが酷いよぉ! みんな人間じゃないよぉ!

「それで終わりですか? ユウさん」

「その声は3―2の委員長をやっているツァトゥグァ!? いつのまに!?」

「今来ました……どうやらノーデンスがこの部屋に向かってきているようなので忠告に……それと、ユウさんとヴォルヴァドスさんを連れ戻しに来ました……帰りますよ」

「嫌です……ぼくは……帰りたくないぃぃぃぃぃぃ!」

「アツトさん、なんでこんな拒絶しているのか心当たりはありませんか?」

「……まあ、色々と目立ってたからな……美少女にお弁当持ってきてもらった時点で」

「ああ、なるほど……それで悲しみの向こうへたどり着きたくないから行きたくない、と……」

「そうです」

「……じゃあ教室に戻りましょうか」

「えっ、ひどくない?」

「では妥協しましょう……アツトさんも連れて教室に戻りましょうか」

「おい」

「あっちゃん!」

 面倒臭い女の子の目であっちゃんを睨みつける……にらんでるって言えなさそうだけど睨みつけている……ついでに頬を膨らませて激おこアピール……

「……お前、本当に男かよ……ただの痴女じゃないのか?」

「美少女の間違いじゃないのかな?」

「立てば(ウツボ)カズラ座れば(ムシトリ)ナデシコ、歩く姿はラフレシア……だからな、お前」

「……何かおかしいと思ったらウツボカズラとムシトリナデシコだったワケだね……なんで前2つ食虫植物なの!? あと最後! さり気なく酷いこと言わなかった!?」

「お前が進級直後に起こした惨劇を忘れたとは言わせないからな?」

「いったい何が」

「……あったの?」

「……何となく予想がつくのだが……一応拙者らに教えてくれぬか?」

 教えて下さいってかぁ? あっちゃんがおしえてくれるよぉ!


「…………嫌な事件でしたね、アツトさん……まだクラスメイトが1人留学から帰ってきていないんでしょう?」

「いや、あいつは春休みからアメリカの方に留学に行ってるんですが……ふた月ほど」

 ふた月もアメリカに留学とは、頑張るねぇ……ぼくならロシアあたりで幼女を手込めにすることが出来ないなら留学に行きたくないからねぇ……

「頑張り屋なんですね」

「いや、あいつ2年の時の英語があまりにも上下し過ぎるから1回アメリカでネイティブの英語を学んでこいと送り出されただけですけどね」

 なんか去年別のクラスにデュエル脳患者がいるとか聞いたけどひょっとして……

「でもって最近は何やら邪神にストーキングされているらしいですけどね……確か、名前は」

「ラーン=テゴスか……」

「……ノーデンス殿……!? いつの間に」

「今し方来たところだ」

 気が付いたらノーデンスが生徒会室の入り口で仁王立ちしていた……先ほどとは違い、腕に風紀委員長の腕章を付けた威厳のある姿で。

 というかノーデンスさんもうちの学校の生徒さんだったんですね……風紀委員長という単語が何か引っかかるけど。

「風紀委員長、白崎零……もしくは旧神のおさ、ノーデンスだ……貴様が生徒会長ニャルラトホテプか……?」

「そうだよ……ボクがキミの永遠のライバルニャルラトホテプ……そして……チラッ」

「こっち見んな」

 何を考えたのか、ニャルラトホテプ生徒会長があっちゃんの方をみた……一触即発な雰囲気なのに、そんな余裕がどこにあるのかな?

 いつ動き出すか分からないノーデンスさんの方を見ていると、こっそり抜け出そうとしている双子が見えた……というかノーデンスさんの真横を素通りして抜け出していった……

「……そういえばツァトゥグァさん、君にもそこの少年にも、そしてアツトクンにも一応言っておかないといけないことがあるんだ……それはね…………ボクが就任するまえまでは風紀委員なんて影すら無かったんだよ……そして、ぼくは風紀委員の発足を認めた覚えなんてない。ちなみに校長先生も同じく知らないみたいだよ。つまり、君が風紀委員長というのは真っ赤な嘘、怪しまれずにここに入り浸るためのただの口述に過ぎない、ただの隠れ蓑なんだよ……」

 な……なんだってぇー!? さっきまで風紀委員長やっていたのも、この前校門で熱血指導していたのも、ただのボランティア活動だったんですか!?

「……まあ、風紀委員があったなら、ユウが真っ先に処分喰らってるだろうからな……」

「そうですよね、わたしもそう思います」

 あとさり気なく2人が酷い。人間じゃないよ……

「ぐ……我を愚弄するかニャルラトホテプ! ……行くぞヴォルヴァドス! ……ヴォルヴァドス?」

 ぼくは気付かなかったけど、さり気なくヴォルヴァドスさんも退室して帰宅したらしい……多分ニャルラトホテプ生徒会長の長ったらしいネタバラシのあたりに出て行ったんだと思う。

「ヴォルヴァドス! ヴォルヴァドォォォォォス!」

「あ、じゃあ後は頼みましたよ、ニャルラトホテプ生徒会長さん」

「ユウさんに同じく……」

「まあ、その、なんだ……頑張れ」

「こンの裏切り者ォォォォォ!」

 叫ぶノーデンスさんとニャルラトホテプ生徒会長を放って置いてさっさと教室に戻る。



 ぼくとした事が、すっかり忘れていた……

「おいおいおいおいおいィ?」

「美少女な彼女に弁当つくってもらって更に持ってきて貰いやがってよぉ!」

「とんだハリキリ☆ボーイが戻ってきたじゃねぇか!」

 この、血走った目をして怒り狂っている男子一同を見るまで、ぼくは大変な事を忘れていた……

「人もみんな……悪魔だったんだね……」

 そして、クラスの男子にフルボッコにされて、三途の川で良い船に乗りかける羽目になった。ちなみにこの後男子一同もあっちゃんによる復讐と言う名の制裁を加えられ、午後の授業はクラスの約半分が気絶しているという大惨事になったらしい。やっぱり人を呪わば穴3つ……あ、男なら2つか……まあ、とにかく、気をつけなきゃいけないね。

 それと、あっちゃんへのフラグだ立ちました!

後編? ブラックメイドさんの話に続きます。同時投稿で番外編的なアツト視点の話カイト来ますハルトオオオオオ!

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