表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/8

2話 ダンナと呼ばれた男2

ダンナと呼ばれた男は、悲鳴の聞こえた店の前までやってきた。

すでに人集りができて、中の様子はうかがえない。

男は近くの野次馬に声をかけ、状況を聞く。



「あら?ダンナ。今日は商売かい?なら後で買いに行かないとな。」


「今更行ったってもう品物があるかい・・・何があった?」


「ああ、さっき来たばかりだから詳しくはわからんが、どうせ、ゴロツキがいちゃもんつけてきたって感じよ。」


「まだ鬱陶しい声が聞こえるな・・・片付ける。」



野次馬から状況を聞き、そのまま他の野次馬達をかき分けて店の中へと入っていく。

店を見ると、店主らしい爺さんと給仕の女性、ゴロツキですと言わんばかりの男が対峙していた。



『奥にも誰かいるな・・・女か?』



よく見ると客席の奥に誰かいる。

こんな状況でも、どこ吹く風かと言わんばかりにのんびりしている。



「ひぃぃ・・・もう止めて下され!!」


「あ゛ん!?何が止めて下され、だ!!テメエの店の対応がわりいから怒ってんだろうが?」


「い、言い掛かりよ!!アンタが勝手に怒り出しただけじゃない!?」



奥の女が気になったため、こちらの状況を気にしていなかった。

状況は良くない。

ゴロツキは剣を持ち出し、相手に切っ先を向けていた。



「精神的苦痛を受けました。なので慰謝料が必要ですってとこだ!!わかったか!?」


「アンタに払うお金なんてどこにもないわよ!?むしろ迷惑料が欲しいくらいよ!!」


「これ、止めんか・・・」



ゴロツキは大きな声をあげて相手を威嚇する。

だが、それに負けじと給仕の女性は声を張り上げて対応する。

爺さんは弱腰で、早くこの状況を納めたいと考えていた。



『剣先を向けられ、あれだけ言葉が出せる、か。気丈な娘だな。』



その女性もよく見れば、足が震えている。

あまり、悠長にはしていられない。

男は軽い口調で、その場に入り込む。



「爺さん、飯食いに来たぞ。何か店の前、人集りできてるが催し物でもすんのか?」


「えっ?あ、ああ、ダンナですかい!?どうしてここに?」


「だ、ダンナさん!!助けて下さい!!」


「何だテメエは!?俺の邪魔すんじゃねえよ!!」



どんなゴロツキでも発する言葉を聞いて男はガックリ肩を落とす。

先ほどまで女性に向けられていた剣先は男に向けられた。



「耳、わりいのか?ダンナって呼ばれてんだろうが。さらに言っとくとテメエに名乗る名はねえよ、馬鹿。」


「こ、このヤロウ!!」



ゴロツキは持っていた剣を振りかぶり、ダンナと呼ばれた男に目掛けて振り下ろす。

給仕の女性は悲鳴をあげて顔を手で隠し、店主は顔を真っ青にして動かない。

そのまま行けば、ダンナの血が宙を舞い辺りは騒然な状況となる。


しかし、そうはならずダンナは左腕を剣の軌道上に出し、受け止めた。

剣の切れ味によるが、本来なら腕が吹き飛ぶであろうものだがそうはならなかった。



「な゛ッ!!堅え!!暗器か!!ふざけやがって!!」


「・・・暗器ではないんだがな。」



ダンナは左腕で止めた剣を押さえ込み、ゴロツキの顔に一撃を食らわす。

ゴロツキは宙を舞い、奥にいた女性の近くまで吹き飛ばされる。


ゴロツキと一緒に、持っていた剣も宙を舞っていた。

その剣の行き着く先は、奥にいた女性。

剣はそのまま女性に突き刺さるかと思われた。


しかし、そんなことにはならず女性は、自分の方に来た剣を持っていた箸で挟み込む。

飛んできた方向に振り向く事なく、そんな芸当をやってのけた。

その一部始終を見ていたのはダンナのみ。

ダンナは少し冷や汗をかいていた。



『やべぇ・・・面倒事にならなければいいが・・・』



すぐさま、奥の女性の元に向かい謝罪と併せて話をする。



「すまんね・・・食事中だったのに邪魔したね。」


「・・・いや、大丈夫だ。本来なら私がコイツを懲らしめなければならなかったのだが・・・ここの料理が旨くてな。」



そう言って自分の近くに横たわって気絶しているゴロツキの頭を蹴り飛ばす。



「まあ、もう一回あの五月蠅い声を出していたら私が片付けていただろう。気にすることはない。」


「そうかい・・・ならよかったが・・・」


「手伝わなかった詫びではないが・・・コイツは私が憲兵に引き渡そう。」


「いいのかい?」


「面倒事はゴメンだ、と顔に書いてある。」


「あ~助かる。俺、憲兵って苦手なんよ。」


「得意と言うやつはそういなかろうよ・・・こっちはいいからあの娘さんを介抱してやらなくていいのか?」


「おっとそうだ。重ねて謝るよ。後はよろしく。」



お互いにヒラヒラと手を振り、自分のやるべき事をやる。

ダンナは店主と給仕の女性を介抱し、奥の女性はゴロツキを縄で縛り上げ、まだ残っている料理に手をつける。


ある程度、落ち着いた所にダンナと共にいた商売人がやってきた。



「いたいた、ダンナ。完売したさ・・・って、また派手に暴れたさね・・・」


「俺は何にもしていない。」


「ほんとさね?まあいいさ。一段落着いてんなら行くよ?あの子達待ってるさね。」


「ああ、そうだな・・・爺さん、身体には気をつけろよ?娘さんもな。次はちゃんと飯食いに来るから。」



2人に挨拶し、商売人と共に馬車に乗って帰路につく。

その姿を店主と給仕、そして奥で食事をしていた女性が見送る。



『あれが益州で噂の『ダンナ』か。しばらくはここを拠点に活動するか。』



白く、蝶を象った着物を振り女性は彼とまた会うために江州滞在の用意を始めた。

『父上がぞくとーばつに出かけました。・・・にぃにもせん力だからとつれていきました。しばらく・・・にぃにとべんきょうもあそんだりもできません。つまんないな。』



この時代は治安はよくなかっただろう。

飢餓や疫病など、今の時代と考えられないような環境で生きているのだろう。

・・・いや、今の時代もかわらない。世界のどこかで飢餓や疫病に苦しんでいる人がいる。私が住んでいる場所でも、明日の食事に悩まされる人は存在する。


いつの時代もかわらない、か。



『父上がぞくとーばつに出てなん日もたちました。明日かあさってにはかえってくるそうです。・・・にぃに、早くかえってきてほしいな。』



このにぃにと言われている者とこの日記の少女とはどれくらい年齢の差があるのだろうか?

賊討伐に参加するくらいだ、20歳くらいだろうか?

いや、日本でも元服・・・15歳で戦場にでたりしたのだ。その前後の歳くらいだろう。

だとして、少女はどうだろう?

小学校に入るか入らないかくらいの年齢だろう、文体からそんな感じがする。



・・・文体?

漢文なのにそんな事がわかるのか?



気が付いたらもう、こんな時間か。

明日もある。

今日はこれくらいにしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ