3話 白い蝶と左腕
「ダンナ~。今度こそ、売るの手伝ってよ!?」
あれから数日、またあのダンナと独特な口調をした商売人がいつもの町にやってきた。
今日はいつもより荷物が少ない。
何を売るつもりなのか?
「アホか。食料品ならともかく、今日のは装飾品だぞ?口下手な俺が売るよりお前が売る方が効率いいだろう?」
「い~や、今回のはダンナが売る方が効率いいさ!前にも言ったけど、ダンナは自分の容姿をじっくり見る必要があるさね!」
「言われたからやってみたけど、面白くも何ともないぞ?」
商売人はガックリ肩を落とす。
「言葉のまんまじゃないさ・・・大体、商売始めたのダンナからじゃないさ!?手伝い感覚でやってたけどいつの間にか、ボクがメインになったさ!!何でよ!?」
「商才があったんだよ、お前には。お前に任せたら売上、一気に上がったんだから。」
「ダンナは嘘つきさ!!ダンナの方がよく売ってたさ!!この前、過去の帳簿見たんだから間違いないさ!!」
「あいつ等の帳簿なんぞ、証拠にならん。」
「あの子達に帳簿付け出来るようにしたのはダンナさ!!」
「あ~言えばこ~言う五月蠅い奴だ・・・着いたぞ。さっさと用意するぞ?」
「ダンナ・・・今日逃げたら恨むさ。」
いつもの事なのだろう。
言い争い(ほぼ、一方的だが)をしながらやってきた行商人2人を微笑ましく見守っている通行人達。
そして今日は何を売るのか分かったため、若い女性が集まりだした。
「ほら、ダンナ。今日はダンナが対応を「少しいいか?」はいさ!!何の用、綺麗な方?」
テキパキと店の用意をしていた2人に声をかけてきた女性がいた。
「いや、そちらの男に用があるのだが・・・」
「俺?・・・ってあんた、この間の!」
「ん?ダンナの知り合いさ?でも、ちょい待ってね。今日は商売終わるまで話は待って欲しいさ。」
「急ぎの用かもしれんぞ。おい、白いの!!さっさと行くぞ?」
これ幸いと言わんばかりにダンナは白く、蝶を象った着物を着た女性の手を取り、逃げようとする。
「いや、急ぎではない・・・馬車で待たせて貰うがいいか?」
「いや!!よくな「問題ないさ!!」っておい!!」
「待ってて貰うんだから、ちゃっちゃと品物売るさ。この量なら2人でやればすぐさ。」
ダンナは文句を言おうとしたが、逃げ場がないことを知り、諦める。
商売人は勝ち誇った顔を隠そうともせず、商売を始めた。
集まっていたお客もその姿を暖かく見守っていた。
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「で、何の用だ、白いの。」
今日持ってきたものも全て売り尽くし、待っていた白い着物の女性と話を始めた。
「ダンナ・・・名前知らないの?特徴で呼ぶのは失礼さ。ボクは費緯って言うさ。ダンナの商売手伝ってる者よ。」
「ほう?見ている限り、お主の方がこの商売の主っぽかったが?」
「元々はダンナが1人で商売やってたよ?ボクが一緒にやるようになったら、ダンナがサボりだしてボクに押し付けるようになったってだけ。」
「おい!?俺はサボってないぞ?」
「だったら次の品物売るのダンナだけでやってよ?ボク、手伝わないよ?」
「くっそ・・・おい、白いの笑ってんじゃねえよ。」
「いや、すまんな。可笑しかったのでな・・・私は『趙子龍』と言う。自分で言うのもなのだが『常山の昇竜』と言うのは聞いたことはないかな?」
「いや、ないな。」
「ゴメンナサイ・・・ボク、世情に疎くて・・・」
2人の反応にガクっとしてる趙子龍。
少し悲しそうな顔をしながら『まだまだ名は通っていないか・・・』とつぶやいていたりする。
「・・・常山と言えば、幽州の方じゃねえか。なんでまたそんな所からここまで?」
少しでも何かを知っているようなダンナの言葉から途端に元気になった趙子龍。
「よくぞ聞いてくれ申した!!情報通な知り合いから聞いたのですが・・・」
どうやら、その情報通な知り合いから商人の間で噂になっている『ダンナ』という者に興味が出てはるばる幽州からここ益州までやってきたそうだ。
「ご苦労な事で・・・でもう満足だろう?」
「おや、つれない。もう少し愛の語らいをしませぬか?」
「何言ってんだ・・・見に来た『だけ』だろう?とっとと幽州、常山に帰れ。」
自分に興味が湧いたのが気に入らなかったのか、不機嫌な表情をし始めるダンナ。
「ダンナ酷いさ・・・それにしても他に何か目的があるのさね?さっきから妙に強い闘気を感じるさ。」
費緯と言った女性は趙子龍のがさっきから纏っている『氣』について指摘する。
ダンナは最初から分かっていたのだろう。
以前に感じ取った『面倒事』。
それが現実になってしまったのだ。
「やはり分かっていましたか・・・商売人『ダンナ』だけでなく、もう一つ噂になっていることがありまして、なッ!!」
言葉を言い終えぬ内に、趙子龍は持っていた槍をダンナ目掛けて穿つ。
ダンナは後ろに跳びその一撃を綺麗に避ける。
「益州の賊を軒並み潰し回っている『暗器を仕込んだ左腕を持つ男』。情報を集めると、その男とダンナ、あなたと同一人物である、と結論が出ましてな。」
「それで手合わせしたくて、って所さね。ダンナぁ。フードもコートもやっぱり意味ないさ。」
「俺の一張羅だ。これ以外の服は認めん!!」
「私も武芸者なので、強い者といつでも相手をしたいと思っておりましてな!暗器使いとはあまり戦ったことはありませぬが、私には暗器は通用しませんぞ?」
この間、趙子龍は槍で彼を穿つ事を止めない。
連続した攻撃を紙一重で避けているダンナ。
この間の調査で彼が暗器使いと言われているのを聞いているため、趙子龍は左腕の動きに注視する。
もちろん彼はその左腕にある何か以外、得物は持っていないと見ている。
「ったくよう・・・何で、俺は暗器使いって言われんだ?」
「フードとコートで全身隠しているからさ。脱げばそんなこと言われないさ。」
「余裕ですな!!ダンナ殿!!そういえば、貴方の名前を聞いていなかったですな!」
攻防は趙子竜の一方的な攻撃が続いているが、それを紙一重でも余裕そうな姿でかわすダンナ。
『どれだけ余裕なのだ、この男は!私の攻撃などものともしていないのか?』
次第に焦りを感じ始めた趙子龍。
ダンナはその隙を逃さなかった。
焦りで槍の連撃が遅くなった瞬間があった。
その瞬間、槍を左腕で掴み趙子龍ごと投げ飛ばす。
「うわッ!!」
綺麗に宙を舞った趙子龍だったが、投げ飛ばされて終わらせるわけにはいかなかった。
彼が槍を離した瞬間に槍を払い、左腕の袖を破る。
袖は綺麗に破れ、彼の左腕が露わになる。
何とか体勢を整え、暗器の正体を確かめ、次の行動を思案しようとしたが辞めた。
「なん、だと?」
彼の左腕には『暗器』と言うものは存在しなかった。
あったのは無骨な、人間の腕とは言えない鉄の何かが露わになっている。
手甲とは違う。
肩から指先まで、完全に鉄のような何かで覆われている。
「あ~・・・一張羅が。あいつに怒られんかな?」
「それはないさ。あの子たちはそんなこと気にしないさ」
「あっそう「ダンナ殿!?その腕は!!」ん?ああ、そうか暗器って言われていたもんなか。これが何かは知らんわな。」
彼は左腕で拳を作り前に突き出しこう言った。
「これは機械腕『オートメイル』!・・・暗器って言われる物の正体だ!」
『今日はとてもあさからびっくりしました。目がさめるとゆうがたにかえってくるはずの・・・にぃにがよこで本をよんでいました。早くかえってきてくれてうれしかったけどなんでこんなに早かったかはおしえてくれませんでした。あとで父上にきいたら、・・・が寂しがっているだろうから早くかえりたいと父上にねがいでたと言っていました。父上も・・・を気にしていてくれたみたいで、すぐにりょうしょうしてくれたみたいです。・・・は父上にも・・・にぃににもあいされいるんだなぁとおもってうれしかったです。』
今日の目覚めは最悪だった。
目を覚ますと横で腐れ縁のバカ馴染が本を読んでいた。
寝顔を見られた!?
恥ずかしさもあって、そいつの顔に右ストレートをお見舞いした。
やつはドアと共に吹き飛んでいき、自分が殴られた理由がわからないという顔をしていた。
お前はデリカシーがないんだよ!!
・・・あの日記と同じような状況だったな。
結末は全く違うだろうが。




