すべては運命だった
城は大混乱になっていた。
突然現れた魔族の群れが城を蹂躙する。
魔族達はランド王子のいる王の間に殺到した。
しかし、そこにいたのは
「ガハハハハハハハハ!!! 魔族とは言え、下っ端は雑魚だな!!!」
「死にてえ奴だけ!!! 前に出ろ!!!」
ボーゲンとジャビラグランの二人が王子を守っていた。
魔族は15名いたが、その全員がたった二人に撃退される。
「あーあ。よわっちいなぁ」
アマダが呆れたように笑う。
「ローメルの叔父さん、こんちわ。つよいねー」
ノンビリと言うアマダ。
「ローメルから聞いておる。アマダ。魔族の王子。そしてローメルの子を見て発狂し世界を滅ぼす悪魔」
「そうそう。だからさ、ローメルに僕と結婚するように説得してよ。そうしたら世界なんて滅ぼさないし」
無邪気に笑うアマダ。
「子、子か」
ボーゲンは力を抜く。
「アマダ。お主は両親が生きていたころのローメルは知っているのか?」
「ああ、うん」
アマダは既に真実を知っている。
ボーゲンはまだそのことを知らない。だが
「あの娘は変わった。両親の死のあたりから少しずつ変わってはいたが、ある日を境に別人のようになった」
このおっさん気付いてたんだ、という目で見るアマダ。
「だが、その変わったローメルは領地を愛した。部下を愛した。そして叔父である儂を愛した」
涙を流すボーゲン。
「あの娘の愛情は本物だ。アマダ、儂も部下もな、あのローメルに忠誠を誓っているのだ。あのローメルは『神』と同種のものだろう? だがそれでいい。あのローメルは儂の可愛い姪であり、守る対象だ。アマダ」
ボーゲンは大筒を持ち上げる。
「ローメルは王子を望んだ。それが全てだ。ローメルの笑顔を見るために、儂らは命を懸け戦おう」
「……そこまで理解しておいて、まだ戦うの? あのローメル、『コウヅキアヤカ』って言うんだけど、現れてから半年だよ?」
ボーゲンは頷き
「お主も、僅か半年でローメルと子を為したいと思ったのだろう?」
その言葉に
「アハハハハハハ!!! 本当にそうだ! 分かったよ叔父さん! ローメルをかけて殺し合おうか!!!」
アマダは目に見えない速度で走り距離を詰める。
だが
『ドガッッッン!!!!』
「わああああ!!!!」
吹き飛ぶアマダ。
「床に爆発物を置かせてもらった」
ボーゲンは淡々と言う。
「アマダ。この大筒は最後だ。動きの素早いお主に適当に撃ったところで当たるわけもない。その動きを徹底的に止めてやる」
ボーゲンとジャビラグランが構える。
アマダは苦笑いし
「いやー、想像以上にキツいわー。あっちは大丈夫なのかね?」
笑っていた。
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《来るぞ》
エステメラルダに取り付いた『神』が言う。
「ご報告どうも。でも私は満足に動けないもので」
苦笑いするホウファイ。
まだ肌には火傷が大きく残っていた。
《奴らは面白い。特にローメル。いや、コウゲツアヤカか。あんな面白い存在を咄嗟に呼び出すなど、なかなか出来る事ではないぞ》
楽しそうに笑う『神』
「楽しそうで」
《楽しい。世界を救う事など退屈で仕方ない。それよりもな》
ホウファイの耳にも聞こえる大勢の足音。
《偉大な敵との抗争の方が価値があると思わぬか?》
ホウファイは目を瞑る。
「アマダが王子を殺すのが先か。こちらが死ぬのが先か」
『神』は薄ら笑いをして
《結果はすぐに分かる》
「そうね、お待たせしたからしら、エステメラルダ、ホウファイ」
ローメルが、神月綾香が二人の隠れ家に入る。
「全てをまとめて償ってやるわ」
神月綾香は不敵な笑顔を見せ
「潰せぇ!!!!」
戦いが始まった。
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部下たちはホウファイに殺到する。
だが、ベッドに横になったままホウファイは
「魔族を舐めるなよ」
蹴り。
それだけで
「ぐおおおおおおぉぉ!!!!」
ガイゼンが吹き飛んだ。
「ちっ!!! 囲め! 油断するな!」
部下たちがホウファイを襲ってる中、私はエステメラルダと対峙する。
≪戦いはいいものだな。コウヅキアヤカ≫
エステメラルダに取りついている『神』は楽しそうに笑う。
「世界を救うなんて楽しいの? あなた?」
私は聞きたかったことを聞く。
こいつは、本当に世界を救おうとしていた。
そのことに疑いはない。実際に私と王子が子を産めば、アマダは世界を滅ぼそうとする。
≪少し語り合いたいな、コウヅキアヤカ≫
エステメラルダは座り込む。
「そうね。なにから話す?」
≪お主は何者だ≫
「『カミサマ』と呼ばれていた、ただの人間。名前の一部とあだ名がそうであっただけ」
薄々予想はついている
≪私もそうだ。元の世界での名が『神』であっただけの予言師よ≫
予言師。
「異世界の魔法使いってことね」
≪そうだ。コウヅキアヤカ。私は一介の予言師にすぎぬ。だからこそ言おう。この戦いの結末はもう知っている≫
苦笑いする『神』
≪予言は予言だ。未来視は不安定なものだ。今日見た未来が明日には変わっている。私が見れるのは、その鍵となる出来事だ≫
【神】の話を黙って聞く。
≪コウヅキアヤカ。お主はそのカギだ。この戦いで世界は変革する。ワクワクせぬか?≫
「あなたの無責任さと、世界を救う行動が結びつかない」
『神』はあまりにも無責任だった。
ホウファイやアマダの策略も自分からぶち壊したりしていたし。
≪予言できるからこそだ≫
『神』は切なげに言う。
≪予言できるから世界を救わざるを得なくなる。下手に未来を知っていてそれを傍観できるか?≫
少し考え込む。こうすれば人は死なない。こうすれば世界は滅ぶ。それを知って黙っていられるか。
≪だが、すべての人の死を止めることなど不可能だ。そんなことはする気もない。大まかに世界崩壊などしないかぎりは別にいい≫
なるほど
「細かい死は必然。でも大量虐殺はさすがに止めると」
≪あの病もそうだ。目の前で苦しまれると止めたくなる≫
そう、『神』はあの病を一時的にだが癒した。
あれは知ってしまえば救いたくなるからか。
≪狂乱したアマダはすべてを滅ぼす。だが、いくら未来視をしてもアマダは死なぬ。お主もだがな≫
『神』は疲れたようにため息をつく。
≪だが、コウヅキアヤカ。予言は変わった。この戦いで未来は変わる。どちらに転んでも世界は救われる≫
マジか
≪狂乱前のアマダを殺し、王子と結ばれる未来か≫
アマダを殺す
≪我らに敗れ、アマダの性奴隷として生涯孕み袋として生きるか≫
まあヘビーな選択肢。
≪どちらにせよ世界は救われる。好きなほうを選べ。私にとってはどっちでもいい。だから戦おう≫
にたぁっと笑う『神』
手を突き出したその瞬間
「……がはっ!?」壁に吹き飛ばされた
「ローメル!?」ヴィルツが駆け寄る。
こいつ、何やった?
≪念動と呼ばれる力だ。この程度ならば使える≫
この程度。わたしもう死にそうなんですけどね。
「私にかまうな! ヴィルツ! いけぇぇ!!!」
ヴィルツが駆け出す。
≪私の未来視は万能ではない≫
『神』は淡々という。
≪自分のことは見えぬのだ≫
まっすぐヴィルツを見据えながら
≪ヴィルツ、恋慕するエステメラルダに突撃をして、なにを行うつもりだ?≫
挑発するような目。
よし! 殺されるわけがないと油断している! ヴィルツいけぇぇ!
「エステメラルダ! すまん!」
そのままヴィルツはエステメラルダに馬乗りになり
≪ほう、首でも締めるか?≫
楽しそうに笑う『神』
だが、そのままヴィルツは、エスメラルダのスカートを下げ……
≪……なっ!? なにをしているのだ!? お前は!?≫
慌てる『神』
だが、ヴィルツは力でエステメラルダを抑え込みながら、服を脱がせ、肌に舌を這わせる。
≪ま、まてっ!? なにをしているんだ!? 戦闘じゃないのか!?≫
慌てていると念動もできないのか、まともに抵抗もできていない。
「違うわよ。レイ〇よ」
≪やめんか!? アホ! 私は元々男だぞ!?≫
そうなんだ。
男×男
まあ素敵。
ヴィルツの動きが止まる。
「体はエステメラルダなんだから動きを止めるなヴィルツ! 知らん男に乗り移られたままとか、可哀そうすぎるでしょ!」
その言葉にヴィルツはまた行為を再開する。
≪……や、やめろぉ! ひぃっ!!!≫
『神』は悲鳴をあげる。
「あなたの追い出し方は単純よ、『神』」
私はその行為を見ながら
「子をなせば追い出される。私も体験したから間違いないわ」
≪やめろーーー!!!≫
私はホウファイに目を移す。
ベッドに横になったままのホウファイは、囲まれてはいたが無事だった。
だが、もう頭を上げる元気もないようだ。
「……なぶり殺しがお望み?」
ホウファイに問いかける。
「……へえ。ほかに選択肢が?」
ホウファイは疲れ切っていた。もう抵抗する力もない。
「ガイゼン」
「はいっ!」
ガイゼンが前に出る。
ガイゼンの声で苦笑いするホウファイ。
「なに?殺されそうになった仇討かしら? こいつに殺させるの?」
ホウファイは笑う。
そんなことはしないよ。
「ガイゼン、私の命令を復唱しなさい」
その言葉に
「『ホウファイに地獄を味合わせなさい。レ〇プでもなんでもいい、セッ〇スのことしか考えられないメス豚に作り替えなさい』」
ガイゼンは復唱し、ホウファイの顔は凍り付いた。
「媚薬でもなんでもぶち込みなさい! 命令を果たせ!」
『神』も抵抗をした。ホウファイも抵抗した。
『神』のほうは速攻だった。
≪こ、こんなもの!? 耐えられるか!?≫
ヴィルツが挿入直前、そういって意識を手放した。
「……ヴィルツ?」
首をかしげるエステメラルダ
そら、目が覚めたら半裸の自分と全裸のヴィルツじゃそういう反応になるな。
「……エステメラルダ。君は悪いものに取りつかれている。これはそれを追い出す儀式だ」
エステメラルダは困惑した顔を見せるが、隣にホウファイがいることに気づく。
「ホウファイも?」
「そう、エステメラルダ。あなたとホウファイは『神』と呼ばれる悪魔に取りつかれている」
私の言葉に少し納得した顔をする。
「……そう、それでなの?」
「私たちは出ていくわ。エステメラルダ。ヴィルツを信じて。彼は最後まであなたを守ろうとした」
「……ええ。信じるわ」
もう一つのベッド。
ホウファイは
「ひぎぃぃぃぃ!!! あああぁぁぁっっっ!!!」
絶叫していた。
媚薬も相当突っ込んでいた。
「見張るのはジーマさんだけでいいわ。ジーマさんはエステメラルダのほうは見ないでね。ヴィルツ、油断しないように」
私は外に出る。
予想ではそろそろのはずなんだよな。
叔父さんは負けない。
でもとどめもさせない。
だから
「やあ、ローメル」
黒焦げになり、片腕がちぎれた状態のアマダが目の前に現れた。
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「ボーゲン叔父貴!? 無事ですか!?」
ジャビラグランがボロボロになったボーゲンを抱きかかえる。
「……アマダは逃げたか」
「はい」
王子を背後に守り、アマダとボーゲン・ジャビラグランは戦い、ボーゲンの脚を犠牲にしてアマダの手を吹き飛ばしたのだ。
「この程度かすり傷よ。ランド様、敵は去りましたから」
その言葉に心配そうにするランド。
「ボーゲン、痛むところ申し訳ないが聞きたいことがある。『ローメルは神と同種のもの』とはどういうことだ」
アマダとボーゲンの話はランドにも聞こえていた。
「……お話しないといけません。ローメルの罪と私の罪を」
ボーゲンは喘ぎながら喋る。
「叔父貴、まずは手当てを!」
ジャビラグランが喋るのを止めようとするが
「かまわぬ。それよりもランド様にお伝えすることが先だ。ランド様。心を落ち着けお聞きください」
「……なんだ」
「我が兄夫婦を殺した流行り病を流行らせたのはホウファイという魔族。しかしローメルはそのホウファイと共謀しランド様の心を得ようとしました」
「……」信じがたい目でボーゲンを見るランド。
「……あの病の時、私はローメルに頼まれ魔術書を手に入れるため領地を離れました。そのために無事だったのです。あの館にいる部下たちもそう。殆どはローメルに頼まれ魔術書を探しに出かけた部下でした」
ボーゲンの話を聞いていたジャビラグランが、その時を思い出したのか辛そうな顔をする。
「ランド様、もし私が出かけていなければ。あの流行病は止まっていたのです。現に帰ってきたら止めました。特効薬を知っていたからです。流行病を予測出来なかった、いや。ホウファイの謀略に気付かなかったのが私の罪です」
頭を下げるボーゲン。
「そして、ローメル。あの娘は知らぬとは言え親の仇と手を組み、王子の心を無理矢理奪おうとした。これが罪です。その罰はすぐに出た。ローメルは召喚の儀式に失敗し死んだ」
ランドは口を開かない。
「あの時死んだのです。ローメルは。しかしその身体に転生した人間がいる。それが今のローメルです」
「……あのローメルは、別人なのか」
「私はすぐに気付きました。そして部下たちに見張らせました。なにかおかしい行動をしないか。ですが……」
ボーゲンは涙を流し
「あのローメルは、過去のローメルの記憶を引き継いでいました。そしてその記憶を大切にしておりました。あくまでもローメルとして生きようとした。そして慈愛を注いだのです。領地を、部下を、そして唯一生き残った肉親の私を」
「……叔父貴」
ジャビラグランが、口を開く。
「あのお嬢がなんであろうとも、お嬢はお嬢です」
「その通りだ! ジャビラグラン!」
ボーゲンは叫び
「大切な事ですから、もう一度言います。ローメルは別人であり別人ではない。記憶の継承はされています。それをコントロールする魂が変わっただけです」
「……魂」
「エステメラルダにとりついた『神』とは同種でありましょう。異界の者です。ですが『神』と違い、ローメルを受け入れ、ローメルであろうと歩む者です。あれは私の可愛い、可愛い姪なのです」
「……なるほど。ボーゲン。言いたいことは分かった」
「……ローメルをどうかお願いします。あのローメルは異界の魂のもの。ですが間違いなくローメルそのものなのです。どうか、御慈愛を」
ボーゲンは頭を下げる。
だが、そのまま
「叔父貴!?」
倒れ込んだ。
「ランド様! 叔父貴の治療に行って参ります!」
ジャビラグランはボーゲンを担いで部屋を出た。
「……そうか。別人、なるほど」
少しランドは微笑み。
「愛されてるな、ローメルは」
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(アマダ視点)
ローメルは待ち受けていた。
隠れ家からは嬌声が聞こえる。
「うわぁ。ダブルレ〇プ?」
声聞けばわかる。エステメラルダとホウファイだ。
「神の追い出し方だ。性行為で受精させる」
「ホウファイは取り付いて無いけど?」
「あれは仇だ」
問いかければ、すぐに返事が来る。
本当にローメル、いやコウヅキアヤカとの会話は楽しい。
「コウヅキアヤカ、なにか聞きたいことある?」
「……そうだ。一つある。ホウファイがビローチェを焚き付けて私に毒を食らわせた。多分あのままなら私は死んでいたはずだ。何故助けた?」
その問いに
「ああ、あれ? 『神』曰わく。ローメル死なないんだって。なにやっても。あの毒もボーゲンが来て治しちゃうらしいんだよ。だからあの毒はね、僕の好感度あげるための芝居だったんだ」
全然好感度上がらなかったけどね。
少し口元をあげるローメル。
「予言は変わったそうよ」
「へえ!?」
びっくり。どうなったの?
「二択だ。一つ目は私がアマダを殺す。そして私は王子と結ばれる」
嫌な未来ですなぁ。
「もうひとつは私は敗れ、アマダの性奴隷として生涯子を産み続ける」
「ハッピーエンドじゃん!!!」
よし! それにしようよ!
「どちらにせよ、世界は救われる。アマダ。最終決戦だ」
ローメルは腕をあげる。
「魔族と人間の差。多勢に無勢は勘弁して」
17人の男達とローメル。
「この状況で18対1かぁ」
思わず笑う。
「私が欲しければ」
ローメルは、肉食獣のような爛々とした目を輝かせ
「力でもぎ取れ!」
人間が、一斉に襲ってきた。
「ああ! もう! どんだけだよ!」
片腕が使い物にならない状況。
それなのに囲まれて戦う。
しかも相手は武器を持ってる。
「待って! 待って! ローメル! やっぱ! 明日! 明日やろーよ! これ!」
片腕じゃダメだ。しかもこいつら吹き飛んでも平然と立ち上がってくる。
「ごめんなさいね、アマダ」
戦いから少し離れた場所にいるローメル。
「明日にしたら、私性奴隷まっしぐらだもの」
「いいじゃん! 性奴隷! めっちゃ気持ちいいと思うよ!」
そうだそうだ! なにが悪いんだ!
「……っっっ!? いてぇぇっっ!!!!」
少し油断したのか、無事だった腕に棍棒が当たる。
あまりの痛みに、腕が動かない
そこからは一気だった。
「おらぁぁぁ!!!」
「しねやぁぁぁ!!!!」
「いたいっ!? いたいって!!!」
周りを完全に囲まれ片っ端から棒で叩かれる。
「ちょっ!? これ、酷くない!? こんな可愛らしい男の子を10人がかりでリンチとか!?」
ローメルは呆れた声で
「私もそう思ってたの。どう見ても私達が悪役よね。これ」
そして
「そのまま離れて」
ローメルが命令を出すと男達が離れる。
そしてローメルが僕の前に来て
「私の子になりなさい、アマダ」
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部屋はすごかった。
「……こんな形でごめんな、エステメラルダ」
「……ううん、私を助けてくれようとしているんでしょう?」
手前のベッドではいちゃつくエステメラルダとヴィルツ。
奥では
「……っっ!!! ぁぁぁあああああっっ!!! ぉぉぉおおおおおっっ!!!」
うるさい。
ホウファイがガイゼンにレ〇プされていた。
しかし
「お嬢、そろそろガイゼンも限界かと。なにしろ数時間動きっぱなしです」
そう。激しくやりすぎですよ、ガイゼン。
あんな乱暴じゃ壊れちゃうんじゃないか。
「……ジーマさん、相談なんですが」
「はい、お嬢」
ジーマさんが不思議そうに聞く
「ホウファイは生かす」
ジーマさんが驚きの目でこちらを見る。
「ただしホウファイに罰は与える。生涯償ってもらう」
「……はい」
「その処遇なんだけど……」
どうしようかな、本当に。
「ガイゼン一人でレ〇プさせた方がいい? それともみんなでやった方がいい?」
ジーマさんが凄い困った顔をする。
「……ええっと」
ホウファイを見ながらジーマさんは
「魔族との性行にビビる我々ではありませんし、ホウファイは美人ですから皆喜ぶと思いますが、流石に20人は壊れると思います」
なるほど
「館に連れ帰ってセッ〇ス漬けにしようかと思うんだけど、ガイゼン一人のものだと不満出る?」
まだ館壊れたままだけど。
要はコイツには魔族の王女という尊厳を徹底的に破壊しようと思うのだ。
私的には輪〇は如何なものかと思うので、ガイゼン一人で良いんですが
館に連れ帰る訳ですからね。
「……ガイゼン一人、というか。ガイゼンがコントロールすべき話ですから。ガイゼンに任せては如何でしょうか?」
なるほど。
「その上で不満がでるようならば私の方から色々話をしましょう。スパイス的な乱交なども良いでしょうし」
「任せるわ」
私は出来るだけエステメラルダのほうを見ないように振り向く。
「ヴィルツ。エステメラルダを幸せに出来るのは貴男よ。頼んだわね」
小声でいう。
表に戻る。
縄でグルグルのアマダ。
「で、どーすんの?」
アマダは楽しそうに笑う。
そう。どうしましょうかね。
ってもう決めてますけど。
「アマダ。魂の移植が可能な儀式がある」
「うん。転生の儀式だね」
そう。この世界には転生の儀式というものがある。
記憶を保持したまま新しい身体に乗り移る。
要は私みたいな存在だ。
「私は神月綾香であるけれども、ローメルでもある。記憶は混ざり合い、一つのものになる」
まだ本来のローメルは抵抗しているけれど。
その問題を解決する。
その為に必要なこと。
「自ら子になれば世界を滅ぼすことなど無意味よ、アマダ」
「しっかし、凄いこと考えるねローメル。本来の子の魂はいいの?」
ニコニコしながら問いかけるアマダ。
「そう。私もまだ歪だ。本来のローメルはまだ辛うじて残っている」
「うそ!? あの儀式で魂食われたんじゃないの!?」
「食われたんじゃない。私を呼び出す咄嗟の儀式で砕けたんだ。その残滓がまだ残っている。王子との性行為でその残滓が復活しつつある」
「へー」
「そのローメルも産んでやる」
「は?」
私が読んだ魔術書。
子に魂を授ける秘術。
そんでもって
「本来の魂も産んでやる。要は三つ子だ」
「……ご、ごめん。ローメル? そんなの出来るの? というか今三つ子なの?」
もちろん違う。
「それを可能にする魔術がある。一つの子を三つにする」
要は一卵性双生児。
ローメルの身体曰わくまだ孕んだばかり。
まだ時期的に可能。
「ローメルは男になるのは申し訳ないけど」
でもほら、なんか性格的には男の方が良いと思うよ、ローメル。
「なんかすごいねぇ」
ニコニコするアマダ。
「本来は一つの身体に一つの魂。それを三つに分けると魂が空っぽになる身体が出来る。そこに魂を入れ込む儀式なんだよ。今回の話にはうってつけよ。アマダ」
「そっかー。ローメルがお母さんになるのかぁ。ままー」
ニコニコして抱きつくアマダ。
「魂の移植はまだもう少し先。でも貴男は私の子になる。ママと呼ばれるのも悪くはないわね」
「なんか落ち着いた。僕それでいいや」
笑うアマダ。
「親父は怒るかな? まあでも兄貴がいるし、僕とホウファイいなくなっても気にしないか」
ニコニコしたまま。
「よろしくね、ママ」
--------------------------------------------------
《耐え難いとはこのことだ》
一通り行為が終わったあと部屋に戻ったら『神』がいた。
「ヴィルツ、まだ妊娠してないみたいだから続けて」
「……いや、もう出ない……」
おのれ、根性なしめ。
《また未来が変わったな》
「ああ、そう」
三つ子にしたからね。
《なかなか愉快な未来だ。自由にしろ》
『神』はニヤニヤしている。
なんだその顔は。
《私は予言士だが他の能力もある。病も癒せる。そして》
『神』は微笑み
《まだ埋葬もしていない。身体は丁寧に保存されている、王を蘇生させてやろう》
は?
「そんなこと出来るの!?」
《私のいた世界では誇るほどの能力ではない》
いやいやいやいや。
アマダがなんで、単なる予言士にあそこまで怯えていたのか分からなかったけど意味が分かった。すげえわ、この『神』
《ついでに病も癒してやる。世界は滅ばぬ。それならばいい》
この『神』も優しいやつだったんだなぁ。
色々無責任だと思ったけど、多分知りうることが多すぎて、なにかを切り捨てざるを得なかったのか。
「あなたも、転生の魔術でエステメラルダの子に転生すれば?」
その言葉に
《それもいいな。この世界は気に入りかけてる》
『神』は微笑み
《まあまだ先の話だ。ゆっくり考えるさ》
私は城に戻り王子とボーゲン叔父さんに、事の顛末を伝えた。
「ローメル、お主の魂が異界のものなのは気付いていた。それを王子にも伝えた」
「……気付かれていたのですか」
それなのにあんなに良くしてくれたの?
ボーゲン叔父さん。
「ローメルの記憶を大切にしてくれていたからな」
なるほど
「叔父様、ローメルの魂の欠片はまだ残っています」
「なに!? 誠か!?」
驚く叔父さん。
「この度魔術の儀式を行います。ローメルの魂、そして世界を滅ぼしかねないが、こちらからは殺すことも出来ないアマダを子にして産みます」
その言葉に
「……そ、そうか。ローメルが……」
涙を大量に流し
「ありがとう、本当にありがとう」
ボーゲン叔父さんはずっと頭を下げていた。
王子と一緒に自室に戻る。
「ローメル。いやなんと呼ぶべきか?」
「王子。ローメルで結構です」
私はもうローメルなのです。
「……そうか。色々話を聞いた。ローメル。お主の異界の話を聞いていいか」
「……はい」
それから私は日本にいた頃の話をした。
「面白い仕事だな」
保険の仕事の話を楽しそうに聞く王子。
「お主の事をよく知ろうと思ったのだ」
ちょっと嬉しい。
「その上で聞いて良いか?」
「はい」
「恐らく俺への好意は、身体の影響だ」
そう、それはそう思う。
「……率直に言って、その要素はあると思います」
「俺は、今のローメルが好きだ」
嬉しい。
「だが、お主はどうなのだ?」
「……私は」
ゆっくりと、考える
「私がこの世界に来て、混乱して発狂しました。半年前のことです」
「……ああ、憶えている。あれか」
そう、あの時
「あの時に優しく抱き止めて頂いたこと。その御恩が好意に変わっています」
「そうか」
王子は安心したように微笑み
「もしもな、好意は無いと言われたら」
そう言って抱きしめられる。
「無理矢理にでも好きになってもらおうとした」
そう言ってキス。
王子の逞しい身体に包まれて。
身体を強く抱きしめられながらのキス。
「俺はお主を離さない」
そう言ってまたキス。
舌が私の口の中で這い回る。
私もそれに応えるように舌を絡めた。
私も王子にぎゅーっと抱き付いて
「……わたくしは、ランドのものです」
『王子の子ね。悪くないわ』
心に響く声。
本来のローメル。
『私は咄嗟にあなたを呼び出した。すべては運命だったのね』
ローメルの声
『あなたの思い通りになるのは癪だけど悪くない選択肢だわ』
ローメルの声が遠ざかる。
脱力した王子の顔。
「……ランド、わたしもう孕んでいますから」
「そうか、楽しみだな」
嬉しそうな王子の顔
「きっと賢い子が産まれますわ」
私は幸せな気持ちで、王子と抱き合ったまま眠りについた。
--------------------------------------------------
あれから二年。
私はあの時本当に孕んでいた。
そして三つ子の魔術と、魂の移植の準備を整え、ローメルとアマダの魂を移植させた。
正直に言えば、魔術が本当に働くか自信はそこまでなかった。
でも魔術は成功した。
私は三つ子を産んだ。
なのだが、この子達を見て仰天した。
「一卵性双生児じゃないの!?」
なんと全員違う顔。
一人は女の子。
それは多分ローメル。
そして、生まれた直後だと言うのにニヤニヤ笑ってる男の子。
これはアマダですね、めっちゃ分かりやすいわ。
いや分かりやすいのは良かった。それは良かったのですが
「ろーめるぅ、おなかすいたからおっぱいのませてぇ。ろーめるのぼにゅうおいしくてねぇ」
「1歳児がベラベラ喋るな」
アマダは常にこんな感じ。
一方のローメルは
「ぱぱー」
ランドにべったり。
この女、まだ一歳児なのに私に反抗期である。
よく授乳時に蹴ったりしてくるし。
記憶継承の二人はこんな感じであるが、もう一人の子は
「うぅ?」
とぼけた感じの男の子。
めっちゃ可愛い。
世界一可愛い。
顔はランドに似てる。
でも目の感じは私だ。
この3人の子育てにおわれる毎日。
「ローメル」
「ランド」
ランド王子。そうまだ王子。
王は『神』の能力で蘇った。
あれは「死にかけたけど大丈夫だった」ということで処理された。
わたしは長子で男子を産んだためランドの正妻として立てられた。
「たまには家に顔を出したらどうだ? また行けなくなるだろうからな」
ランドが気を使ってくれる。
家。
ホウファイに壊されたあの家は、ボーゲン叔父さんと部下達が復興させた。
「そうですね。顔を出してきます」
館の完成の時に顔を出して以来だ。
私が近付くと
『ちゃーっっす!!!』
部下達が頭を下げる。
「久しぶりね。ボーゲン叔父さんはお元気?」
「うっす! 中にいらっしゃいます!」
皆元気そう
中に入ると
「お嬢! お帰りなさい!」
ジーマさんが満面の笑みで迎えてくれた。
「ジーマさんお元気?」
「ええ。こちらは問題ありません。それよりもお嬢。また御懐妊だそうで」
御懐妊。
そう。子供産んで間をほぼおかず二人目。
いや、四人目か。
「正妻だからね。子を為すことは喜びよ」
いや、ランド王子がですね。全然収まりがつきませんで。
私もキスされると流されてしまうもので。
そのまま館の奥に行くと
「ローメル!!!」
ボーゲン叔父さん。
叔父さんはアマダとの闘争で大怪我をした。
その怪我は『神』が癒したのだが
「わしの使命はもう終わったと思う」
と筋肉ムキムキを止め、戦闘をすることが無くなった。
今ではこの館で本を読みながら執筆活動をしている。
「ローメル、子は元気か?」
にこにこしながら聞くボーゲン叔父さん。
ボーゲン叔父さんは、転生したローメルを溺愛しており、また転生ローメルも叔父さんに懐いていた。
私には蹴りますけどね!
「ええ。皆元気です」
ボーゲン叔父さん。筋肉ムキムキとその職業柄から勘違いしがちだけど、叔父さんの知識はすごかった。
この人はこんななりで知性派だったのだ。
だからか、本を書くと言われても変な感じはしなかった。
「ローメル。新しい子も大切にしろよ」
笑顔のボーゲン叔父さん。
元々身長が高い方じゃない。
でもあの筋肉が叔父さんの大きく見せていた。
それが今。
筋肉が少なくなり、一回り小さくなった叔父さんは……
「ボーゲン叔父様、どうか身体に御自愛を」
少し不安になるぐらいにか細くみえた。
「無論だローメル。安心していてくれ。この本を書き終わるまでは死ねんよ」
その本は
『過去、現在に至る流行病の症状とその治療法』
「悪いことを沢山した儂だ。償いにもならん。だからこそこの本は必ず書き終わらせる」
叔父さんは、命を賭して本を書いていた。
「ガイゼンは?」
叔父さんのところを見終わった後にガイゼンに会いにいく。
正確には
「はい! こちらです!」
そこは豪華な部屋。
特別に作った部屋。
魔族の力でも壊せないぐらい強力に補強した部屋で
「……あっ! あああぁぁぁっっ!!! 」
今日もやっているようだ。
「ガイゼンは相変わらずね」
一緒に来てくれたジーマさんに話しかけると
「はい。 毎日かかさずやっております」
毎日。
「……あいつ妊娠したんじゃなかったっけ?」
「向こうもベタぼれですから」
そう。ガイゼンは私の命令通りに、徹底的にホウファイを陵辱した。
ただ、誰も混ぜず一人でやりまくっていたのでホウファイもガイゼンに骨抜きにされたらしい。
「以前ホウファイの父親が訪れまして、娘を返せと言われたのですが、ホウファイ本人が絶対に帰らないと」
吹き出す。
ホウファイの父親って魔族の王様じゃないの?
「かなり仲は良いようですから。ガイゼンは優しい男ですし」
まあ、部下達の中ではまともだしなぁ。
「まあ、幸せならいいわ」
館を出て領地を歩く。
「ローメル様!」
「本当だ! ローメル様!」
私が任された領地はボーゲン叔父さんが引き継いだ。
私は王子の正妻となると共に解任されたのだが
「ローメル様、お加減は?」
「ローメル様、お元気そうでなによりです」
皆が慕ってくれる。
本当に嬉しい。
「皆も変わりはない?」
僅か半年の統治でもこの領地は思い出深かった。
みんなも私を慕ってくれる。
少し皆と話しをした後、エステメラルダの領地にいく。
「ヴィルツ」
「ああ、ローメルか」
エステメラルダの領地はヴィルツの領地になった。
エステメラルダと結婚したからだ。
こっちも三つ子。
私の魔術により、魂の移植をした。
一人は本来の子
二人目は『神』
三人目はビローチェ。
そう、死んだ人間の魂の移植も出来たのだ。
転生だからね。
結構賭だったのだが
「お子様は元気」
するとよちよち歩きの子供が出てくる。
「なんだ、久しぶりだな」
一歳とは思えないほどハキハキした声。
これは『神』だ。
多く喋るけど幼児のイントネーションのアマダとは違う。
「お元気?」
「まあな。男の身体の方が馴染む」
『神』は記憶も能力も継承していた。
だから予知能力もまだあるのだが
「世界は滅ばぬ。多少の殺し合いはあるがな」
そう言ってヨチヨチ歩きで帰って行く。
「……まあ、あんな感じだ」
「後の二人は?」
「会うか?」
一緒に館に入る。
「エステメラルダもまた妊娠したのよね」
「お前もだろう? まあよくある話だ」
こっちの文化では休まず懐妊は結構ある話。
人権の概念ないし。
案内された先にいた可愛い女の子二人。
そう女の子。
「あら、ビローチェちゃんかわいい♪」
「びえええええんんっ!!!」
泣く赤ちゃん。
「はいはい、どうしたのかなぁ♪ ビローチェちゃん♪ 可愛い女の子なんだから泣いちゃあだめよ♪」
「びえええええええん!!!」
「……いじめるな、ローメル」
そう! ビローチェはなんの因果か女の子に転生したのだ。
意味は分からない。
本人もなまじ記憶継承している分、かなりショックだったらしい。
「一応名前は『ミンク』だからな。前の名前で呼ぶな……」
「ミンクちゃーん♪ 男の時の記憶を継承しているのに可愛い可愛いミンクちゃーん♪」
「びえええええええん!!!」
いや、ビローチェちゃんことミンクちゃんには殺されそうになりましたのでね。
これぐらいの復讐は許してください。
「ローメル」
エステメラルダが来る。
幸せそうな顔。
「また赤ちゃん出来たのね」
「ふふふ。ローメルもでしょ?」
『神』の件も含めエステメラルダとは色々話し合った。
今では親友と呼べるような仲だ。
ただ、今でも天然は治ってないのでイラッとするときは多数。
「ローメルの子達も元気そうね」
にこにこしているエステメラルダ。
「大変よ。一歳で反抗期に突入してる女と、セクハラしてる男がいるからね」
元のローメルさんはあんまり私には喋らないんですが、最初に喋った言葉が
「淫売」ですからね
お前に言われたくないわ。
王子に気があったはずなのにジュリウスにも気を使ってたし。
ああ、そうだ。ジュリウス。
あいつはまだ内相の部下として頑張っている。
すっかり見違えて頼もしくなった……わけもなく。
小動物キャラのまま、よく私の所に相談に来るのだ。
「まあ、みんな幸せになりました。めでたしめでたし?」
そんなわけもないだろーなー。
今隣国に不穏な動きがあるらしい。
病だって、陰謀関係無く突然広まったりする。
「もう、帰れないしなぁ」
日本の神月綾香は死んだ。
この異世界でずっと暮らしていく。
「まあ、私は細かいこと気にしないから」
悪役の令嬢に転生して、怖い人たちを率いて王子を守って。
「さて、子守に戻りますかね」
元々の悪役令嬢と、世界を滅ぼしかねない魔族の王子を子に抱えて苦労は絶えないけれども
「日々楽しいからね」
私は天を見上げ、城に戻っていった。




