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救世主症候群シリーズ解説文置き場  作者: 秋犬
【絶望ノワール2】救世主症候群・全容編【閲覧注意】
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復讐編あらすじと解説文

〇復讐編あらすじ


 代表者会議への案内としてリィアの首都へ戻ってきたティロは、シェールとセラスを宿に置いて単独行動を始めた。まずはクラドを確実に処刑に導けるようクラド宛ての燃料を買えるだけ買い、軍本部へ送りつけた。その日の深夜にトライト家を訪れると、限界を超えているリニアが婦人会で集めた多額の寄付金を借金返済にあてようとしていた。ティロはリニアに自身の出自とザミテスの凶行を語り、怯えるリニアを自殺に見せかけて殺害する。


 翌朝シェールたちと合流したティロは代表者会議に赴くが、ライラによって地下室が会場に指定されていたために階段すら降りられない事態に陥る。どうしても地下室に入れないアリバイを作ったティロはシェールとセラスを会場に置いて、トライト家に戻る。トライト家ではリニアの自殺と発覚した借金で大騒ぎになっていた。ひとりで頭を抱えるノチアを目ざとく見つけたティロは、言葉巧みに家の外におびき出すことに成功する。そして河原でノチアに最後の稽古をつけるが、ノチアは真剣を持ってもティロを追い詰めることはできなかった。ティロはリニア同様ノチアにも身の上を明かし、殺害する。


 乗ってきた馬車にノチアの遺体を隠して、ティロはシェールとセラスと共にリィアの首都を後にした。道中ティロはシェールにリィア王家の子供たちについて尋ねるが、シェールはティロに情を挟むなと釘を刺す。正論ではあるが同じ境遇である自身にも寄り添わない発言にティロは憤慨するが、その後シェールの複雑な胸中を少し明かされたことで自身と似たところがあると感じる。そしてシェールはティロに「ライラとの仲をはっきりさせろ」と詰め寄り、ティロも彼女との関係を思い直すことにする。


 反乱軍が潜伏している村へ戻ってきて、ティロは特にライラについて自分会議を開いていた。そこにライラが現れたことで、ティロは咄嗟に「君が好きだ」と告白をする。喜んだライラは即座にティロをベッドに誘うが、特に姉に対する複雑な想いが交差してティロは素直に応じることができない。ティロがいつもの自虐でこの場を乗り切ろうとすると、ライラは自分が子供を産めない体質であることを告げる。「そんなに自分を責めないで」という言葉に姉と目の前の女性に対する思慕を募らせ、ようやくティロはライラの想いに応える。


 ライラの気持ちに応えたティロは、ザミテスへの復讐の本格的な準備に取りかかる。クライオから連れてこられたレリミアの髪を切り、ライラに頼んで彼女の髪を黒く染めさせる。その後ティロはシャスタから一連の不審な行動について詰問されるが、逆に彼を責めることで疑念を全て突っぱねる。


 ザミテスがようやくティロのいる村へ帰ってきた。ティロは約束通りやってきたリオに付き添いの上級騎士を引きつけておく役割を頼み、ザミテスに取り入る演技をする。ティロに勧められて酒を飲んで酔ったザミテスは気を良くして、ティロの「いい女がいる」という場所に言われるままレリミアのいる廃屋に連れて行かれる。そして目隠しをしたレリミアを娘と知らず押し倒す。


 一通りの行為が終了したところを見計らい、ティロは二人の間に入ってザミテスを拘束し、ザミテスが慰み者にした娘がレリミアであることを明かす。その後ティロの拷問により、ザミテスは実の娘を犯してしまったという罪悪感とティロが生きていた事実に打ちひしがれ、レリミアの前で過去の所業を語っていく。そこでレリミアはティロがザミテスから受けた仕打ちの一部始終を聞かされ、絶望してティロから渡されたナイフで自害を図る。「もう誰も恨まないで」と虫の息で懇願するレリミアにティロはそっと本名を告げ、彼女に敬意を払って絶命させる。


 ティロは全てが終わって気力を無くしたザミテスを掘った穴まで運んだ。道中ゼノスの辞任に至るまでの話やクラドのためにザミテスがティロも葬ろうとしていたことを知り、ティロはザミテスに更に嫌悪感を募らせる。ティロは自身が掘った穴にノチアとレリミアを安置し、ザミテスを放り込もうとする。その前にザミテスはティロの姉の名前を尋ね、そこでティロは自身の正体を明かす。元とはいえ王族相手に威張っていたことをザミテスに知らしめたところで、ティロはザミテスを穴に突き落として念入りに埋めた。


 ザミテスを埋めた後、ライラが迎えに来た。ライラは復讐を完遂したティロが今にも死んでしまうのではないかと怯えるが、ティロはライラと想いを通じ合わせた手前すぐには死ねないとライラに告げる。しかし、ザミテスの話を聞いてやはりクラドも自身の手によって殺すべきだと考えたティロは勝手に先にリィアの首都へ戻ることにした。



○キャラ動向


ティロ


 今回ようやく本懐を果たすことができました。そして彼が読者にも頑なに「とあること」を隠し続けたのがようやく明らかになりました。そのことについては、あまり触れないであげてほしいと思います。あとはクラドを殺して放火するだけですので、もう少し見守ってあげてください。



ライラ


 復讐の伴走も今回でおしまいです。この後彼女がどうなるのかというのは、反乱編の通りです。ただあちらではかなり突き放された上に裏切られた形になっていますが、こちらでは一応好き同士というステータスを確立しました。これがどう後に繋がっていくのかは、お楽しみです。



ザミテス


 今回彼の全容が明らかになりましたが、事件編での内面描写からかけ離れずにクズに書いていくのが大変難しかったです、というか事件編でよく書けたなーと思っています。控えめに言って最悪な部類の小悪党ですが、その背景には「父に認められない」というコンプレックスがありました。幼い頃の家庭環境、大事です。



レリミア


 訳もわからず誘拐されて売り払われて「もう他人なんか信じない」と悲劇のヒロインをやっていたのですが、それ以上の爆弾を落とされて悲劇のヒロインも吹き飛んだようです。ある意味、彼の心を一番救ったのは彼女です。



リニア


 ティロのせいで転げに転げて最後は転落死に見せかけて殺害されたのですが、彼女にも本来ここまで落ちる素質はありました。見せかけにこだわっていて、中身を見ることをしなかった者の末路です。



ノチア


 ノチアの殺害理由は「ザミテスの息子だから」というのが大きいのですが、彼自身が「殺してみろよ(できないくせに)」と挑発したところも大変大きいです。どこかで零していましたが、ティロはノチアと同じ年頃でコール村に追いやられていました。やはり甘えているところが非常にティロの癪に障ったのだと思われます。



シェール&セラス


 シェールは今回、少しだけ頼りになるお兄さん。反リィア組織を一応まとめているだけあって、ティロに大人の助言をすることができます。この「助言」がティロのルートを変えるのでやはり彼は最重要人物です。セラスは元気なお嬢さんですね。ここから彼女は主に第三部で活躍してもらいます。



シャスタ&リオ


 シャスタに関しては実はここで登場させる予定はありませんでした。この後彼は反乱編でシェールの側にいることになります。そしてリオですが、何故彼女がホイホイ言うことを聞いてしまったかというとやはりティロが人たらしであったためです。特務予備隊編を読んでいれば、彼が無自覚でどれだけの予備生を救ってきたのかわかると思います。ちなみにリオはただ気を引いていただけで、上級騎士の彼と別に何もしていません。それでこそ特務の女です。


〇内容説明


《第1話》


「リィアは川沿いに工業地帯が広がっていて、首都は山間部に近い川の上流に位置していた」

→ちなみに首都には工場の営業所が集まり、いろんな注文や材料の買い取りなどが行われています。エディアの港からやって来た品物やオルドからもたらされる交易品、ビスキで採れた農作物や鉱石などもここで一度まとめられます。オフィス街って奴ですね。



「大きな橋」

→リィアの首都はロンドンのイメージなので、テムズ川くらいを想像してくれると有り難いです。オルドの首都はパリをイメージしていますが、標高が高い場所にあるのでセーヌ川は流れていません。首都の水源は近くの湖だったりします。



「オルドは雪が降るもの」

→有明編でも話題になっていましたが、オルドの首都は普通に雪が降ります。ただコール村みたいにドカ雪ではなく、アメリカのホワイトクリスマスくらいに慎ましく白く染まる程度です。そこでティロ以上のサバイバルをしたと思われるシェールが言うので、この台詞は重みがあります。



「村があるんだから仕方ないだろ、村に文句を言うな」

→そうだそうだ、村に文句を言うな。作中の重要な意味合いを乗っけるのにかなり都合が良いから設置されている村に文句を言うな……というのは冗談でも何でもなく、事件編を全部読まれている方ならコール村の重要性がよくわかると思います。何で彼がコール村に左遷されたのか、また暇というだけで麓へのタイムアタックを試みていたのかの意味が全部回収されるのです。



「何でこんな端金を出すのが勿体ないんだろう」

→これは金を払うのが勿体ないのではなく、宿泊して「快適に過ごすため」に金を使うのが勿体ないというティロのねじ曲がった自罰根性から来ています。この自罰根性はこの後もっと酷くなっていきます。



「油の缶ができるだけ多く欲しい」

→反乱編まで読んだ方なら「まさか」と思うのですが、その通りです。でも、この時点で彼の考えでは、この缶を本気で使う気はなかったんですよ……。



「フォンティーア・クルサ」

→全容編を書いていると反リィア勢力の方を忘れそうですが、今回の反乱の首謀者は公式では彼女ということになっています。発起人ライラはあくまでも補助であり、発起人でしかありません。



「てめえに名乗る名前はないんだよ」

→彼はリニアとノチアには名乗らない代わりに、父母の名前を告げます。それはこれが「家族」への復讐であるからです。本人は個人的な恨みですが、背景にはエディアとカランの一族を背負っている感覚があるようです。



「どんな寝相だよ……」

→事件編を読むと、狭いところに頭を突っ込んだり潜り込んだりするのがシェールの習性であることがわかります。これはティロが外で寝ることと同じくらい根深いものなのですが、それが何を意味するかは第三部まで待っててください。



《第2話》


「そんなところに入れって言うなら死んだ方がマシだ!」

→事件編で読むのと全容編で読むのではかなり意味合いの異なる台詞だと思われます。彼の背景を知らないと「そんなオーバーな……」という反応になるのですが、経緯を知ってしまうと、多分そうは思えない感じですね。



「こういう息子がいれば」

→ここで一連の凶行の引き金になっている「自慢の息子」問題が浮かび上がります。ザミテスは自分の息子がボンクラであることにコンプレックスがあり、そこで剣技だけなら優秀なティロに対してそういうことを言ったのでありました。つまり、ノチアが優秀であれば一連の凶行は引き起こされなかった可能性が高いのです。そうしたらそもそも「剣技の講師」にはなり得なかったので……。



「姉さんを殺された俺がどれだけ悔しかったか、想像がつくか?」

→トライト家の復讐の根本には、常にこの悔しさがありました。特に明確に殺意を抱くきっかけが「自慢の息子」発言であるので、憎悪の対象がザミテス以外に及ぶのはティロの中では必然でした。



「俺にはセイリオ・カランっていうとても優秀な父親がいた」

→リニアの時もそうでしたが、彼は自分の親の名前は告げていましたが肝心の自分の名前は二人には教えませんでした。それはリニアにはっきり「てめえに名乗る名前はない」と言っている通り、復讐の道具である彼らに名乗る価値を感じていないからです。



「どうもないぞ。当日の確認をしたまでだ」

→小さいことですが、何故ここでシェールの機嫌が悪いのかと言うと、執行編で書かれている通りロドンに母親の話をされたからです。彼にとって「母親」はティロの地下に相当する重大禁句であります。何故かというのは、この後控えているオルド編でやる予定です。



「必ず王妃を生かしておくこと」

→反乱編で存在だけちらりと登場した元オルド王妃なのですが、彼女は人質としてリィアに来ているようです。もちろん作中の超重要人物なのですが、さて彼女はいつ登場するのでしょうか?



「……でも、親のせいで子供が酷い目に合うというのは俺も好まないな」

→ここから残月回避ルートに入ります。事件編でこの後ライラを突っぱねたのは、ここでシェールに正論で見放されたと思ったからです。そういうわけで少し「身分を隠した処刑されるべき王族」として寄り添った話をすることと、ライラへの気持ちをはっきりさせろという話題が出ることでこの後の展開が変わります。



「少々革命思想が混じった考え方か?」

→話の本筋に登場しないのであんまり出てこない革命思想ですが、国家や共同体を否定して個人を優先する考え方ですのでシェールはこんな言い回しをしています。



「俺も自分の手で親を殺したかった」

→有明編でちらりと語られていますが、彼は母親を本当に殺しかけています。そして父親も本当に殺したいほど憎んでいます。ここは父を敬愛しているティロとの相反する関係です。そこで「ダメだよ、親には感謝しないと」などと言わないところがティロの経験からくる優しさでもあります。



《第3話》


「僕には姉さんというものがあるというのに」

→そんなものはありません、というツッコミは置いておいてここからとんでもないラブコメ展開になります。「死んだ最高の姉」と「姉の同じ名前で呼んでいる生きてる女」の二択という最低の選択肢で迷う主人公は多分、他にはいない。



「まずなんで俺はライラと結婚する前提になってるんだ」

→ずっと彼を見てきた方ならわかると思うのですが、彼は元々の生まれや育ちに関係なく、ただ単に恋愛に関しては「重い」性質であります。彼の虚しい妄想によると最後の方には大体「姉との幸せ家族計画」が入ります。元から家族じゃねえか、というのは言わないであげてください。



「自分会議を誰かに知られる方が嫌だった」

→亡命編くらいから忙しくてあまり開催されていなかった「自分会議」ですが、実は薬よりもティロの精神安定に不可欠なのはこちらです。彼の大事な要素ですが、この設定だけはあらすじにもキャラ紹介にも載せる気が起きないのは、本当に彼の「大事な」ところだからです。



「わざと突き放すようなことを言えば、ライラはここから離れると思った」

→事件編での一連のやりとりは、こちらの選択をしたということになります。ちなみにあっちの議題はライラとどうするか、ではなく「リィアの王子を助けるべきか」という愉快さの欠片のないものでした。



「ごみの臭いがする人とはね」

→この世界の臭い問題ですが、基本的に19世紀くらいのヨーロッパのふんわりとした衛生基準で成り立っています。特にセルフネグレクトが激しいティロは基本的にあまり身体を洗いませんが、流石に今回みたいにそういう展開になったら身体くらい石鹸で洗うと思います。



「どんな剣技の試合よりも、ティロは思考を巡らせた」

→もうくだらなすぎる思考回路なのですが、彼が何でここまでセックスひとつで怯えているのかというのもこの作品のひとつの背景であります。多分ここの時点では彼以外「ヤっちまえよ、楽になるだろ」と思うのですが、復讐編を最後まで読むと何故怯えているのか少し明確になっていることと思います。



「素面でヤったことないの!」

→正確に言えば、素面でも金や薬などを目当てに身体を売ったり一時の快楽で行きずりの女とキメセク楽しむことはあるのですが、ティロは恋人同士として心を通じ合わせる一般的なセックスをしたことが本当にありません。復讐編を最後まで読めばわかるとおり強いトラウマのある彼にとってセックス=自傷行為であるため「お互いを理解するセックス」なんて贅沢なものは自分はしてはいけないと思っています。そのためとんでもなく拗らせた面倒くさい奴になっています。



「『今のナシ』」

→書けるわけがないのですが、この時実は完遂しちゃってるのです。それでもライラはこの最低な男を見捨てず側にいるんですから、一体何がそんなにいいんだろうって思いますよね。ただ、この「ナシ」に関してはライラは「極度のツンデレの結果」だと認識しているので常人には理解できない領域に入っています。



「何だっけ、それ」

→忘れている人も多いと思いますが、「国の英雄~」はライラの初登場時の口説き文句です。残念ながら泥酔していたティロの耳には届いていなかったと思われます。



「私ね、生理が来ないの。ずっと」

→発起人ライラが隠していた、というより公言できなかった悲しみの根幹。この世界で女性は特に「娘」や「母」になることが自己形成においては非常に大事です。そのどちらも果たすことができない彼女の悲しみに寄り添えるのは、やはり家庭の中で自己を育てられなかった者だけになるようです。それを何となく理解しているからこそ、ティロは彼女に名乗ることができないのです。



「でも俺、全然普通じゃないからこんな風にただ愛し合うなんてできるって思ってなくて」

→底が抜けた低すぎる自己肯定感。ただ、これはエディアで災禍がなくそのまま大人になっていたとしても別の理由で同じことを言っていそうなのが彼の彼たるところだと思います。



《第4話》


「俺は結構本気でそう思ってる」

→これは亡霊編を経ているかそうでないかで結構読み味が変わる台詞だと思います。あまりにも可哀想なので書いていませんが、あの野良犬期間中も彼は「寝っ転がっていればいい仕事」で飯にありついています。スリや強盗よりも報酬確率が高い点がよかったのだと思います。例の「されるがままに」の台詞は主にこの期間に得た教訓です。



「少し早く来てもいいように保険をかけたつもりだったけど」

→かなり酷い話なのですが、リオの到着前にザミテスが来てしまった場合において最悪ティロは付き添いの上級騎士を殺すつもりでした。殺されないでよかったね!



「間違いなく黒幕がいるはずだ」

→ここでシャスタを登場させる予定はありませんでしたが、ちょっと枠が開いたので改めて「ライラに黒幕がいる説」を披露してもらいました。シャスタはこのタイミングでちょうど怪しい動きをしているティロが黒幕なのでは、と疑っていてティロ自身もそれは間違いのないことなので動揺しています。しかし、シャスタの主張は「彼女がこれだけの作戦をまとめあげるような人物だとは思えない」という理由であるのに対してティロが反乱の手引きをしたことが一度でもあったか、という話になると状況が変わってきます。さて、この話はまだ裏の裏の裏くらいまで続く予定です。



「背中の傷」

→特務予備隊編でもちらりと出てきたシャスタの背中の傷ですが、事件編でわかる通り彼の過去が「過激な革命思想団体出身」というところで何があったのかを何となく察してもらえることかと思います。



「俺は本当はこの隊服を着たくない」

→彼は本来であればエディアの親衛隊の隊服を着ているはずの人物なので、リィアの上級騎士の隊服を着るというのはリィアの一般兵の隊服よりもかなり屈辱的なものらしいです。



「父さんの部下だった人」

→事件編で重要人物だったサロス君がズバリそれに当たるわけです。一切書くタイミングがないので定期的に書きますが、逃げ出したキオンとスキロスを彼が見つけたときの心情は各自想像しておいてください。



《第5話》


「こいつが欲しがっているのは『命令をよく聞く忠実な部下』だ」

→ティロがこの辺りを察しているのはトリアス山でシンダー連隊長の下についていた経験からです。最終的にシンダー連隊長はティロを追い出してしまいましたが、ティロは彼について出世していくパターンもあったかもしれません。



「綺麗なだけでプライドが高い女より、少々難があっても精一杯男に尽くしてくれる女の方が僕は好きですけどね」

→余談ですが、このシーンは一応源氏物語の有名な『雨夜の品定め』のシーンのオマージュでもあります。ティロの人物像や作品の舞台などの元ネタとなっている源氏物語ですが、まさかこんな最低な形でオマージュされるとは思ってもいなかったでしょう……。



「そういうところ」

→散々に指摘されていますが、誰も彼に「そういうところ」を具体的に教えないんですよね……一体何なんでしょう、「そういうところ」って。



「お前が、俺の相手か」

→これがティロの考えた「復讐」でした。何故そんなことをしたのかはザミテスの供述で明確にわかるのですが、なるべく自然にこの状況に持って行くためには「旅の途中という非日常でザミテスの気分が大きいときを狙う」「おそらく処女のレリミアに性的なサービスが出来るよう仕込む」「その後に気兼ねなく尋問を行うことができる場所が必要」というなかなか面倒な制約がたくさんありました。それらをクリアできなかったので事件編ではああいう結末になりましたが、今回は完遂できました。



「後悔ならとっくにしているの」

→ライラがいつから後悔をしているのかは明確になりませんが、彼女の素性が明らかになってからそれは考えてもらえると考察の甲斐があると思います。



「簡易的な拷問台」

→まさかの爪剥がし実習再び、です。ちゃんと左手の小指から始めているあたり、予備隊で学んだことを生かしているわけですね。感心感心(?)。



「俺はティロ・キアンなんて名前じゃない」

→作中仕方なくずっと「ティロ」呼称ですが、彼の本当の名前は別にあって「ティロ」は亡くなっている見ず知らずの少年の名前です。この捻れが余計彼の精神をひしゃげさせているので、「ティロ」を完全に葬ることも彼にとっては大事な話になってきます。



《第6話》


「誰かがしっかり地面を踏み固めなかったおかげで」

→あまり語られてきませんでしたが、何故ティロが土から出てきたのかというのは上に土が被せられただけだったからです。そこでしっかり踏み固めるようなことがあれば、そのまま外に出られず姉と大人しくなっていたと思います。



「ザミテスは明らかに嘘をついていた」

→この期に及んで嘘をつく心理もなかなか酷いのですが、ザミテス自身も当時の記憶を忌まわしいものと思っているので娘の手前真実を告げることができなかったのだと思います。その嫌な感情も含めてティロの復讐に加味されています。



「姉貴を犯せ」

→これこそがトライト家を全滅させるに至った理由です。姉として母として女性として全てを注いで愛していた姉を全否定させた報いは、同じように妻と息子と娘でもって贖うしかない、というのがティロの根底にあります。そして、例の件の詳細を絶対に語れない所以でもあります。強制とはいえ、自分も加害に加担させられたことが彼の全ての存在意義を否定に繋がって、このような強い罪悪感を持った捻れた性格になってしまったわけです。



「お前の親父は男も抱くんだぜ?」

→この辺は生々しいのでカットされてますが、ティロがザミテスに高級娼婦を宛がわれる裏エピソードで明らかになる話です。なお「男を抱く」という行為自体に関しては軍隊ですので、そんなに珍しい話ではないみたいです。ティロ自身予備隊でいろいろありましたし、一般兵時代もそういう方面からは大人気だったみたいです。全部暴力で解決していたと思われますが。



「袋の中身」

→執行編では繋がっていた頭も切り離されてしまいました。どうしても自害に見せかけたかったのでリニアの遺体はそのままですが、できればリニアの頭部もティロは見せつけたかったことと思います。



「それは君の好きに使うといい」

→ここは多少台詞の違いはありますが、執行編と同じ流れです。最初からティロはレリミアに裁いてもらうつもりでした。それがレリミアを誘拐して売り飛ばし、家族を皆殺しにしたことの責任の取り方だと考え抜いたようです。また本当にレリミアが心の底からティロに惚れていた場合、凶行の事実を知ったレリミアがザミテスを殺す可能性も含んでいました。レリミアが自害する可能性はあまり考えていなかったようですが、この選択がザミテスにとって最大限に辛い罰になりました。



「正直触るのも汚らわしい、最低の存在だ」

→ここはティロの偽らざる本心で、自分を不幸にした男の家族が呑気に笑っていることが何よりも許せなかったのです。特にレリミアに苛立ったのは彼女の天真爛漫さではなく「ザミテスに似ている」ことが最大の理由だったのですが、流石にそれを言ってはおしまいなのでここまで黙っていました。



「それが、君の答えなんだね」

→執行編ではこの台詞はティロにナイフを向けられてのものでしたが、今度はレリミアの自害という形で終わることになります。ティロによって望まない性交をさせられたレリミアだからこそ、彼の境遇がとても辛いものだったことがレリミア自身にも降りかかってきました。それはティロを思ってのことでもあり、そんな男から生まれたのが自分という事実と向き合いたくなかったというのもレリミアの本心であります。



「お願いだから、もう誰も恨まないで」

→ティロと同じ境遇に落とされたレリミアだからこそ、彼がザミテスだけでなくその家族や世界そのもの、そして自分自身まで傷つけたいほど恨んでいることに気がついています。この「誰も」は加害者ではなくティロ自身の割合が多く含まれていて、そのメッセージをティロはしっかり受け取っています。



「思えば君だけだったよ、あの家で僕を一人の人間として見てくれていたのは……」

→リニアやノチアには父母の名前しか教えませんでしたが、ティロはレリミアには本名を教えますがフルネームは名乗りませんでした。彼女ならエディアも剣聖も関係なく、一人の人間として受け止めてくれると思ったのだと思います。



《第7話》


「こうして二人は固い友情で結ばれた」

→ザミテスとクラドはこういう関係だったのですが、この関係、どこかで見たことないでしょうか。境遇の似た二人が行き場のないところで意気投合して、固い友情で結ばれる……そう、予備隊です……。



「クラドをようやく独り占めできる」

→ザミテスの話はそれほど不可解なところもないと思うのですが、彼がクラドに対してどんな感情を抱いていたのかというのはかなり複雑なものがあります。親友以上恋人未満、庇護対象であり兄のように慕う存在でもある……そんなところでしょうか。間違いなく家族以上であります。子供かクラドか、と言えば迷ってクラドを選ぶかもしれません。リニアであれば即クラドを選ぶでしょう。



「数百年前の大規模な宗教革命」

→この設定が直接語られる機会もあまりなかったので、いい機会だとガツンと書いてみました。信仰の消えた世界でも新たな信仰が生まれるけど、それは自由や平等をいいものとして見せかける実質的なカルト宗教なのでは、という思想です。



「エディア攻略」

→こちらも災禍のことばかりでリィア軍側の話がなかったので書いておきました。ビスキは革命狩りのため、そしてエディアも革命狩りのために攻めました。それじゃあオルドは……? というと現時点で「ダイア・ラコスのために半島統一を」などという与太話がありましたが、実際のところはどうだったんでしょう。



「かつて家族揃って旅行に行く際にこのような宿場で休憩をしたこと」

→この辺りから、ザミテスもなかなかのボンボンだったことがわかります。ティロも生まれは立派なものでしたが、家族旅行とか考えられないほど立派な家業を背負っていたのでその辺で育ちが大分違うことがわかります。



「ゼノスは一人で村へ向かってしまった」

→この辺は書く余地がないと思っていましたが、ザミテスがうっすらゼノスが嫌いだったように、ゼノスもクラドと繋がったボンボンのザミテスを好いてはいませんでした。その辺はラディオとザミテスの関係を見てもらえるとわかるかと思います。もしゼノスがもっとお人好しで「そんなこと言わずに貴様も山登りだ」とか空気読めない熱血漢であれば、コール村でティロとザミテスが邂逅していた可能性もあります。その場合、ティロはここであったが百年目とザミテスを始末していた可能性が高いですが。



《第8話》


「それで任命した責任を取る形でゼノス共々消す予定だった」

→まさかのティロが上級騎士になったことそのものがゼノス抹消計画の一端だったとは誰も思ってなかったと思います。実はこの話はかなり後付けの設定で、設定というのは話から生えてくるのだなとしみじみ思います。



「ゼノスが嬉しそうにお前が前向きになってきたなんて話しているのを聞いて」

→とんでもない皮肉なのですが、ティロが真面目にリィアの親衛隊を目指そうって話をしたばかりにザミテスがゼノス失脚のからくりを発動させた次第が明らかになりました。ティロが前向きにならなかったら、ゼノスはもう少し長く筆頭として在籍していたと思われます。



「最悪事故死でもしてもらおうと考えていた」

→何故ザミテスが長い査察旅行の日程を組んだのかというところの真相は「その中でティロを何とか始末しようとしていたから」でした。思いのほか最低ですね!



「お前、俺を誰だと思ってるんだ?」

→急にグレンラガンのカミナみたいなことを言い出したのですが、一応王位継承権持ちのティロから見ればザミテスこそ成り上がりの一般ピーポーなわけで、その鬱屈とした気分は上級騎士編で散々書いた通りです。今のティロが叫ぶには不適切と考えてボツにしましたが、当初この辺で「この二流貴族が」という台詞が用いられる予定でした。



「災禍は何故起こったのか」

→災禍の発生原因や被害そのものは実際に起きた事件を準拠として書きました。では何故その発生原因が起こったのか……そこはこの作品の大きな謎のひとつですが、かなり現実的な真相があります。災禍の総括については、ここから始まるティロの残月回避ルートでの「有明編」に相当するところで行われる予定です。



「剣を持つ者として、剣聖デイノ・カランの名前を知らない者はいない」

→これ割とサラッと頻繁に登場するのですが、よく読むと作中で剣技が好きらしいのにデイノ・カランを知らない人がいるんですよね。何故彼がデイノ・カランを知らないのかというのはそこそこ奇妙な話ですので、それだけ覚えておいてもらえると嬉しいです。ちなみにこれがどれだけ奇妙かというと、将棋やってる人が羽生善治を知らないみたいな感じです。



「ザミテスは目の前の男のこれまでやそれに対する自分の振る舞いを思い出していた」

→ザミテスも一応剣技に関しては優秀ですので、ティロの剣の腕が非凡という言葉で説明できないのはわかるのです。だからこそ「実はデイノ・カランの孫だ」という言葉をすんなり受け入れられたわけです。そして「王族に対してイキっていた自分」が可視化されて、それこそ穴があったら入りたいほど恥ずかしくなったはずです。これから穴に入れられるのですけどね。



「何故、お前はあの時俺を殺さなかった!?」

→ものすごい言いがかりなのですが、実際あそこでちゃんと息の根を止めていればこの話は全部なかったことになるので「ザミテスの詰めが甘かったから桶屋が儲かってリィア王家が滅びる」ことになりました。つまり戦犯はザミテスです。



「ありがとう、ライラ。君のおかげでここまでやり遂げることができた」

→ここは執行編と同じ台詞なのですが、かなり読み味が変わる台詞だと思います。本当にやりきった人の台詞です。



「君のためのものだから」

→この台詞の真意がわかるのは、彼女の正体が明らかになってからです。それを踏まえても人によってかなり読み味の変わる台詞かなと思います。



「ねえ、そろそろ教えてよ。君の本当の名前」

→あの鬱イベントがここに繋がってきます。極限状態まで追い詰められて出た台詞の投げやりさから、彼女は彼が分け合って違う名前を名乗っているのを察します。でも、なんでそんなことを察することができたのかといえば彼女も偽名を名乗っているからです。でもなんでわざわざ彼女も偽名を名乗ってるんでしょうね? 謎は深まるばかりです。



「自分のことを知っている人間を増やしておきたい」

→この感覚は亡霊編で人知れず野垂れ死にしかけた時に強く思ったことです。誰にも気にされず死にかけたことで自分の無念が誰にも伝わらないことがよほど悔しかったのでしょう。



「君を置いて、勝手に死ぬものか」

→非常に信用のない台詞ですが、執行編はライラから同じ質問をされて自信なさそうに「頑張るよ」としか言っていないところと比べてもらえると多少の前向きさが出ていると思います。以降、彼の希死念慮はかなり薄くなります。



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