28.バタフライ効果
「桐原、聞いて!」
私はくるっと後ろを振り向いた。
「どうした、工藤」
「昨日ね、ちょっとしたことで未来って変わるんだなって思ったの」
「抽象的だな」
「だってさ、朝ちょっと寝坊して、いつもより一本遅い電車に乗ったのよ」
「それで?」
「そしたら、たまたま昔の友達に会ってね! めちゃくちゃ久しぶりで、いっぱい話しちゃったの」
思い出して、ちょっと笑う。
「もし寝坊してなかったら、会ってなかったわけでしょ?」
「確かに」
「なんかそういうのって、不思議じゃない?」
桐原は小さく頷く。
「それはバタフライ効果だな」
「ちょうちょ?」
「ごく小さな変化が、後に大きな結果の違いを生む現象だ」
「へぇ〜」
「気象学者が講演で〝ブラジルでの蝶の羽ばたきはテキサスでトルネードを引き起こすか〟というタイトルを用いたことに由来している」
ちょっとしたことで、未来が大きく変わっていくってことね!
「じゃあ、もし私が──桐原に話しかけてなかったら」
「……」
眼鏡の奥の瞳が、わずかに動いた。
「今みたいに話すようになってなかったかもしれないわよね」
「可能性はあるな」
「なんなら、今もまだ途中じゃない?」
「途中?」
「これからもっと、すっごい関係になっちゃうかもしれないってこと!」
って私、何言ってるの!?
そういう意味じゃなくって……ああ、言い訳くさいわ!
「すごい関係……それもいいかもな」
「いいの!?」
待って待って。それどういう意味!?
私と桐原……すごい関係になっちゃうの!?
「工藤といると楽しいからな。これがもっとすごくなるなら、楽しみだ」
桐原の思考、健全だった。不純なのは私だけ──!
「どうした、工藤」
「う、ううん……私も、楽しみ」
そう言うと、桐原はふっと口の端を上げた。
でも、大きくなる未来を楽しみにしてくれてるってだけで、めちゃくちゃ嬉しい。
ーーー♡あやかメモ♡ーーー
*バタフライ効果*
小さな原因が、時間を経て大きな結果につながるという考え方。
わずかな初期条件の違いが、未来を大きく変えることがあるんだって。
つまり──
今日の小さな選択も、未来を変えるかもしれない!
いつか、桐原との関係もすっごくなるかも……なんて⭐︎
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