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【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
第1.5部
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特戦、出動

 牧野萌は鋭い目つきで廊下をやや早足で歩いていた。目つきが鋭いのはいつものことではあるが今日は違う。そこには明確な懸念がある。スーツとタイトスカートをびしっと決め、肩まで届くセミロングの黒髪を揺らしつつ彼女は室長の扉を叩く。


「室長、入ります」


 ノックをすると返事を待たずに入室する。

 そこにはいつも通り机に座ってニコニコする賢条幹久がいた。


「やあ萌ちゃん、おつかれ〜」


 彼女とは対照的に気の抜けた声が広がる。


「室長、報告です」

「おっと、これは真剣だねぇ」


 真剣ではない時などないのだが名前呼びを無視するとはよほどのことだ。賢条の顔つきもそれに見合う引き締まったものになる。


「進展かい?」


 遊びを飛ばし、二人は仕事の時間に入る。

 牧野は手に持ったファイルを手渡した。


「例の時間異常の人物と魔卿騎士団のモニカが接触、戦闘しました」


 まさかの事態に一瞬の間が空いた。


「被害は?」

「亜空間戦闘のため被害なし、現在は両名移動中です」

「追跡しろ、場所の特定見逃すな」

「やっています。今のところうまく出来ています」

「それらについては了解だ。……まさか関係者だったとはな」

「読みは当たりでしたね」

「正直当たっては欲しくなかった」


 これらの事件は裏で繋がっている、そう直感していたもののいざ事実を突きつけられると戸惑うものがある。

 描いた星図は間違っていなかった、だがその形は凶悪だ。

 とはいえ事実は事実、なにより重要なのはなぜ接触したかだ。


「どうも魔卿騎士団はある儀式をしていたそうで、タイムリープはその過程で起きた模様です」

「儀式……。それを事前に把握出来なかったのは悔やまれるが相手が上手だったということか。さすがトップクラスの異常組織だな」

「はい。それとモニカに関しても新たに判明したことが」

「なんだ」


 モニカの新情報、日本に入国したこともあって彼女は警戒対象だ。その情報となれば聞き逃せない。前から気になる点もある。

 それをずばり牧野は報告してくれた。


「現在の少女の姿ですが弱体化したからのようです。それに伴い能力も劣化しています。現在確認されている能力はマネー・イズ・パワー。銃器やそれらに類するものを瞬時に出現、使用出来る点は変わらないですが、使用するにはその武器に応じた金額を支払う必要があるようです。現にモータルアント社の口座から引き落とし元不明の送金があり、個人口座、もしくは自身と紐づけされた口座ならなんでもいいようです」

「ということは」


 彼女の能力は判明した。それも弱体化したものであり元の能力は違う。


「はい。本来の能力であるウェポン・イズ・パワー、それが弱体化した能力だと思われます」

「それは朗報だな」


 その知らせに賢条の口元が小さく緩んだ。

 魔卿騎士団、モニカ・クリケットといえば裏社会では大物だ。それゆえに能力もある程度把握されている。


 その彼女の名を轟かせ強豪ひしめく魔卿騎士団の中にあって四大幹部にまで選ばれた能力こそがウェポン・イズ・パワーだった。その能力はまさに破格の性能。

 なぜならば、


「そういうことなら核兵器の無条件かつ無制限使用は実質不可能。最大の脅威はなくなったわけだ」

「そうですね、彼女一人で人類を滅ぼせるという謳い文句はこれで消えました」


 そう、なんでもありだ。


 元の能力は武器や兵器ならなんでもありありの戦略級能力、おまけに原理不明ながら戦闘機や戦車はパイロット不在でも動くという反則技だ。当然ミサイルもいける。


 その最大の攻撃が核ミサイルだった。彼女と敵対するのは国家と戦うに等しい。


 それが前払い制となればかなりの弱体化、ソシャゲで言えば環境クラスからティア外になるほどの大幅な規制に近い。


「まさかそんなことになってたとはね」

「いい気味ではあります」

「そうなのかい?」

「人類の発明にただ乗りしているようで好きではなかったので」

「君らしい感想だ。それで、その弱体化が治るということはないのか? 原因は?」

「これはまだ未確定ですがとある魔術師と時間を賭けた勝負事に負け少女になったとか」

「かつて四大災害とも呼ばれたものが不憫なものだ。もう一つの能力は?」

「そちらはまだ確認が取れていませんが弱体化している可能性は大いにあると思います」

「ふむ」


 とりあえずモニカの脅威度は下がったと見ていい。無視は出来ないがだいぶ楽にはなった。


「室長、どうされますか?」


 タイムリープの少年とモニカの合流、ここでどう動くか手腕が問われる。


「そうだな」


 賢条はしばし黙考し、鋭い視線をファイルに向けていた。

 その目が持ち上がる。

 点と点を結ぶ線、そこに自分たちも加わるために。

 物語に、入り込む。


「動くか」

「はい。準備出来ています」


 それに合わせ牧野の目も鋭さを増す。 

 特異戦力対策室。それは日本政府が誇る対異能を扱う非公開組織。


 賞賛されることのない守護者は今日も人知れず活動していた。

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