表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化決定】セブンスソード  作者: 奏 せいや
エピローグ
87/496

お前を守れたことが、俺の誇りだ

「ごめん、魔来名ッ」


 俺を守ってくれた人に、俺ができる唯一のことが謝罪しかできないなんて。


「なあ、教えてくれ。どうしてあんたは俺を守ってくれたんだ? なんで?」


 涙ながら懇願する。どうしても知りたくて。この人のことをもっと知りたい。

 魔来名はうっすらとした意識を俺から外し、夜空に向けた。つられて俺も見る。

 そこでは星が輝いていた。いくつもの星が。きらきらと。


「聖治……生きろ……」


 顔を戻す。魔来名の顔を見る。

 その顔は、微笑んでいた。


「お前を守れたことが、俺の誇りだ」


 そう言って、魔来名の瞼がゆっくりと閉じていく。


「魔来名ぁあああ!」


 俺の叫びが町に響く。静かな暗がりに俺の声だけが広がっていく。


「駄目だ、駄目だ魔来名!」


 体を揺する。けれど反応は返ってこない。


「魔来名ぁああ!」


 何度も名前を呼ぶけれど返事はこない。

 次第に体が光り出し一つの玉となって浮かび上がった。それが俺の体の中に入っていく。


「あ」


 完全に俺の中に入り、俺の魂と交わっていく。


「あ」


 そこにある、記憶と一緒に。


「そんな」


 彼の記憶が流れ込んでくる。頭の中でいくつもの光が破裂するように。眠っていた記憶を思い出していく。


「うそだ、うそだろ?」


 魔来名の顔をのぞき込む。瞳を閉じた顔をまじまじと信じられないように見る。

 でも、思い出した、思い出したんだ。

 魔来名、あんたはッ。


「兄さん!」


 俺の、たった一人の家族だったんだ。


「なんで、なんで教えてくれなかったんだよ、兄さん!」


 涙が、溢れて止まらなかった。


「あああああ!」


 今だけじゃない。あんたは、戦っていたんだ。ずっと。ずっと。たった一人で。

 俺のために!

 考えれば分かったことじゃないか。パーシヴァルは誰かが発動しなければ再始動しない。なら最初の世界で、誰がパーシヴァルを発動した?

 決まってる。俺たちを殺した、魔堂魔来名だ。

 あんたはその時俺の魂に触れた。そして思い出したんだよな?

 俺が、あんたの弟だったことを。

 その時から、あんたの旅は再開したんだ。

 何度も、何度も。たとえ世界が形を変えて、味方も仲間もいなくても。俺と交わした約束を守るためだけに。

 ずっと、一人で。


「兄さん!」


 魔来名の体を抱きしめた。ううん、本当の名前は剣島正和(まさかず)。俺の兄だった人。頑固で、決して仲がいいとは言えない人だったけど。

 俺の、たった一人の家族だったんだ。

 俺には使命がある。みんなとした未来を変えるっていう約束が。

 だから今俺がするのはここで一人悲しんで泣き叫ぶことじゃない。天黒魔と一緒にみんなと合流すること。

 それは分かってる。

 だけど。


「俺は」


 これでいいのか? ずっと戦ってきたんだぞ? ずっと守ってきたんだぞ? それがこんな終わり方でいいのかよ?

 こんな報われない終わり方でッ。


「絶対に見捨てない!」


 俺は、パーシヴァルを取り出した。


「一人だって!」


 魔来名の体を下ろし、反対の手に天黒魔を出す。俺は天黒魔を握る手に力を入れ、壊れるように念じた。

 天黒魔が砕ける。紫色の欠片となって散っていく。その力を取り込みパーシヴァルの輝きが増していく。


「仲間は、絶対に見捨てない!」


 俺は、念じた。

 たとえ次の世界がどんな形か分からなくても。それが今より困難なものだったとしても。

 俺は、すべてを知ったんだ。

 なら、諦めてたまるか。

 香織。星都。力也。此方。日向ちゃん。そして魔来名。

 俺はみんなのことを知った。みんなと出会い、みんなと同じ時を過ごした。

 そして、仲間になったんだ! 敵なんかじゃない。それぞれの胸に大事な想いを抱えてセブンスソードに挑んでいた。見捨てるなんてしない。

 みんな、俺の掛け替えのない仲間だから。

 だから、ここからまた始めるんだ。

 俺の旅を。

 俺の望む、未来に向かって!


「再始動!」


 パーシヴァルの光が世界を包む。世界を変えていく。

 新しい世界に旅立つんだ。

 パーシヴァルの光が、俺の視界を覆っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ